MISC - 上原 巌
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森林療法とはなにか 招待あり
上原 巌
こころの未来 22 30 - 33 2019年12月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(大学・研究所紀要) 出版者・発行元:京都大学こころの未来研究センター
以下の5つの観点を含めながら、森林療法のこれからの経過と現状について記述した。
1.森林浴・森林療法という言葉
2.「健康バブル」
3.森林療法の対象と目的
4.現在の森林療法の内容
5.学会における研究・調査 -
森林の癒し効果 招待あり 査読あり
上原 巌
グリーンパワー 2019年9月号 6 - 7 2019年09月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(学術雑誌) 出版者・発行元:森林文化協会
2019年6月22日(土)午後1時半より、東京農業大学・横井講堂において、日本森林保健学会、東京農業大学、森林文化協会の合同主催による、「森林と健康シンポジウム」が盛況に開催された。
シンポジュウムの趣旨は、森林の持つ多面的な機能が年々その重要性を増し、森林浴、森林療法をはじめとする市民の保健休養に対する関心、ニーズも高まっている今日、地域医療、メンタルヘルス、学術研究などの視点から、森林と人間とのかかわりの方向性、可能性について再考することを目的とした。また、日本森林保健学会創設10周年の記念開催でもあり、シンポジュウムは一般公開、参加費無料で実施された。
シンポジュウムの主な内容は、以下の通りである。
1.基調講演「森林と健康」 上原 巌
本シンポジュウムのテーマでもある、森林と人間の健康の関係について、国内外における医療、福祉、心理、教育などの実践、事例を主に報告した。特に地域病院、社会福祉施設、学校、森林公園などにおいて、それぞれ認知症、PTSD,会社員、教員などの各対象者とした森の保健休養事例を報告し、
①「森林=健康」のイメージが定着しつつあるが、森林も人間も様々であり、その差異は大きく、森林で健康になる場合もあれば、そうでない場合もあること
②健康は、森林環境の条件と個人条件がうまく合致した時にもたらされる
③万人に対する森林保養のレシピは作り難い
④森林別、個人別の事例を重ねていくことが現在は最も大切
⑤ムードに乗ったビジネス投資は危険
などのことを報告し、「森林環境の健全度と人間の健全度は比例する」という仮説の提示で総括した。
2.研究報告
次に、日本森林保健学会より、3つの研究報告が行われた。
はじめに東北医科薬科大学の住友和弘准教授より、「地域医療における森林利用」についての研究報告があった。森林散策と森林内の大気測定による揮発物質との関連性や、地域における森林散策の定期的な実施によって、地域住民の高血圧患者の割合と脳卒中死亡率が減少した事例などが報告され、また、この事例から、地域の森林資源を活用した健康増進は、今後の「人生100年時代」において有効な可能性があることも述べられた。
次に、東京大学・富士癒しの森研究所の竹内啓恵特任研究員が、「森林環境と心の健康づくり」について報告した。ご自身の経験から、森林におけるメンタルヘルス活用の重要性についてまず述べられ、その後、森林散策カウンセリングの実際の事例を報告された。森林カウンセリングの意義とカウンセラーの役割についても言及され、都市部の緑地を活用したメンタルヘルス対策の可能性についても提案された。
最後に、森林総合研究所の高山範理ダイバーシティ推進室長が、「森林浴の科学的効果」について発表され、森林浴の国内外における研究の現況や、各評価指標や手法について、また森林浴を中心とした環境づくりや幸福度の向上など、今後の社会における可能性について報告した。
第2部はパネルディスカッション。ディスカッションに先立ち、森林文化協会常任理事の沖浩様よりご挨拶をいただき、森林と健康という古くかつ新しいテーマについての大きな期待と、森林文化協会と大学、学会との連携の強化についてもお話しいただいた。
パネルディスカッションは、東京農業大学副学長、同大学稲花小学校校長の夏秋啓子教授、同大学森林総合科学科長の佐藤孝吉教授よりご挨拶をいただき、第一部での登壇者4名も加わって、おこなわれた。
テーマは、参加者全員にわかりやすく、かつ共通認識が持てるように、「幼少期の森林体験」、「自分の人生で印象に残っている森林体験」「今後の森林教育、研究に期待すること」の3つについて討議された。
登壇者からのご回答はそれぞれ百花繚乱で、ユーモアも時折織り交ぜながら、楽しくディスカッションが進行した。やがて、キーワードは、「多様性と多領域の融合」に集約され、様々な方が、様々な思い、目的で集まることにとって、より豊かな森林の保健休養機能が導き出され、その効果も高まっていくのでは?と、全員の意見が一致した。
最後に、会場からの質疑応答の時間をもうけたところ、
①森林療法が地域医療で定着するには?
②野外に出たがらない対象者を森に連れ出すには?
③森林での良い就職口はあるか?
④森林を活用したコーチングの可能性
などの質問が参加者から出された。
①については、まずは地域での実効数値、事例を重ねていくことが大切であること
②については、いきなり屋外に連れ出さず、室内でも緑のイメージを持つなどのステップから始めること
③については、就職することを考えるのも一案だが、自分で起業してみるのも一案
④については、心身を鍛える場としても森林は好適な環境である
などの回答が登壇者から回答された。
1980年代の初頭、「森林浴」という言葉が生まれ、その後、20世紀のおわりに「森林療法」という言葉が生まれた(上原:日本森林学会大会 1999)。これらの言葉は、現在の健康増進ブームと一緒に、さらに「科学的根拠」をキャッチフレーズにもして、再び脚光を浴びている。また、地方創生、地方再生の幟のもと、過疎化、高齢化がすすんだ地域においては、新たなビジネス、起業としての森林活用も声高に叫ばれている。今回の記念シンポジウムでは、各地の森林を活用した健康増進の様々な事例を紹介し、「森林と健康」について、幅広く考えた。その結果、森林は私たちの健康を増進する場所ともなりうるし、そうでない場所ともなりうる、その森林環境と保健休養を望む人の諸条件がうまく合致した時に健康増進、保健休養の効果が得られる、したがって、現在はその合致条件を考究する、個々の事例研究の段階にあることなどが話し合われた。
自らの健康づくりをはじめ、起業家、学生など、様々な方々がそれぞれの思いを持ってこのシンポジウムにご参加された。ご参加された皆様をはじめ、森林と健康に思いを馳せる一人一人の思いが、それぞれ近い将来、結実していくことを願っている。 -
森林の保健休養効果・森林療法についての研究を再考する 招待あり 査読あり
上原 巌
生物資源 13 ( 2 ) 10 - 24 2019年09月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(大学・研究所紀要) 出版者・発行元:農学生命科学研究支援機構
以下の内容で、現在の森林の保健休養効果、および森林療法に関する研究について論考、報告した。
1.はじめに -森林は本当に人を癒すのか?-
2.保健休養環境としての森林の特徴
3.「森林療法」の登場
4.森林療法の発祥・経緯と現況
5.森林療法の対象と目的
6.現在の森林療法の内容
7.森林療法の現在の課題
8.森林療法の研究
9.森林療法を考える上での大きな課題:多様性、複層性、個人差
10.効果の測定における課題
11.森林の保健休養効果の測定の今後
12・今後の研究の方向性 -
フィンランドでの森林療法の研修会 招待あり
上原 巌
森林レクリエーション 387 4 - 8 2019年08月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(学術雑誌) 出版者・発行元:全国森林レクリエーション協会
現在、森林浴(Shinrin-yoku)、森林療法(Shinrin-ryoho)は、国際的にも広がりを見せ、これらの言葉は、アジアだけでなく、いまやヨーロッパや南北アメリカ、オセアニアにまで拡大している。
それぞれの地域においては、国際シンポジュウム、セミナーなども活発に行われるようになってきたが、本報では、北欧の国フィンランドで初めて開催された森林療法の国際研修会を報告した。
国際研修会 International Forest Therapy Days 2018には、地元フィンランドをはじめ、ノルウェー、スウェーデンなどの北法諸国、そしてベルギー、イギリス、アイルランド、ドイツ、ポルトガルなどのヨーロッパの国々だけでなく、アメリカ、カナダ、シンガポール、インドなどからの参加者もみられ、参加は全員、インターネットを通しての申し込みであった。
研修会の講師は、スウェーデン、インド、アメリカ、シンガポール、そして日本(上原)など、海外からの人員がほとんどであり、研修会の参加者には、看護師、薬剤師などの専門職が多いことも特徴的であった。
講義内容は、筆者の基調講演に始まり、その後、ヨーロッパにおける薬用植物と伝統的民間療法、フィンランドにおけるサウナの文化、そして流行のマインドフルネスなどであった。筆者は連日、森林におけるワークショップも担当したが、筆者以外のプログラムでも、内観、瞑想、グループ・コミュニケーションなど、精神的で静かなプログラムのものが主体であったことが特徴である。
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「森林と健康」を再考する 招待あり
上原 巌
日本森林インストラクター協会会報 145 1 - 1 2019年07月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(その他) 出版者・発行元:日本森林インストラクター協会
現在、森林と関連付けた健康増進、健康づくりがちょっとしたブームとなっている。過疎化や高齢化で悩む地域の山村の振興策としても、森林を活用した健康ビジネスが模索されている。その森林健康ビジネスの基盤、キーワードには、「科学的」という言葉が垣間見られることも特徴である。科学的な手法によって、森林の保健休養効果を明らかにし、それによって、地域の森林はお墨付きや認証を受け、観光客、保養客が地域に来るようになり、地域にお金が落ち、若者の新たな仕事、働き場所としても森林が活用できるという構想であろう。でも、本当にそうなるのだろうか?
最も私が危惧していることは、その物事の核となっている「科学的手法」が、実は科学的ではなかったとしたら、一体どうだろう?ということである。例えば、地域の方々は、「科学的」という言葉を聞いてもその「科学」はいわばブラックボックスであり、核心のところを知ることがない。地域の方としては、「森林というものは、人が癒される場所であるということが証明されたのだ」と純真に思っているかも知れない。しかし、実際には、それは科学的な手法だったのではなく、「癒さ
れる場所」ということをいわば導き出すための舞台仕掛けを「科学的」と呼んでいたのだったとしたら、どうなるだろう?
いま、様々な代替療法、セラピーも一種の流行にある。けれども、その多くは、信頼性よりも利益を優先しているものが数多い。大きな流行を見せ、一見うまくいっているように見えても、やがてその実態から当事者、対象者双方の信頼性を傷つける結果となるかも知れない。また、その流行の立役者には、産業振興企画者、研究者、インターネット、マスコミの宣伝などが絡むことが多いこともこの種のビジネスの特徴である。
小生の経験もふまえ、森林と健康について総合的にまとめると、
①森林を活用して健康になる場合もあれば、そうでない場合もある
②森林も人も様々であり、その差異はいずれも大きい。
③森林環境と個人条件がうまく合致した時に、健康が増進される
④万人に良いレシピは作りにくい
⑤個人別の事例を重ねていくことが大切
⑥ムードに乗ったビジネス投資は危険
などのことが上げられる。 -
海外における森林療法の現況(2) 査読あり
上原 巌
森林科学 86 49 - 53 2019年06月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(学術雑誌) 出版者・発行元:日本森林学会
現在、森林浴(Shinrin-yoku)、森林療法(Shinrin-ryoho)は、国際的にも拡大し、それぞれの地域と国々において、国際シンポジュウム、国際セミナーなども活発に行われるようになってきた。本報では、前報のアジア編に続き、ヨーロッパにおける現況を、主にドイツ、フィンランドの事例から報告した。
ヨーロッパでの森林療法の国際会議、研修会の様子を簡単に報告したが、そのほかの世界の数多くの国々においても、森林を活用した健康増進は現在、国際的な共通テーマになりつつある。
今後の展望としては、ステレオタイプでねずみ講のような形態やプログラム、企画のビジネスが広がっていくのではなく、各国の歴史、風土、文化、森林、そしてそれぞれの国民性、民俗性の特徴が生かされた、森林での健康増進のこころみが、各国、各地域のペース、スタイル、方法で広がっていくことを期待している。 -
長野県伊那市のカラマツ林での冬季の森林散策 <連載>森林と健康-森林浴、森林療法のいま- 第15回 招待あり
上原 巌
森林レクリエーション 385 8 - 11 2019年06月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(学術雑誌) 出版者・発行元:全国森林レクリエーション協会
本報告では、長野県伊那市において、冬季の森林散策の効果に着目し、伊那市職員を対象に森林散策を行い、その結果を報告した。
森林散策時の野外気温は0℃、また室内気温は20℃で、散策距離は500m、森林散策時間は30分であった。
このような条件下において、被験者のストレス値(唾液アミラーゼ)は、森林散策後に低下し、その標準偏差も減少した。
また、5名の森林散策であっても、散策後には、林床の土壌硬度が増加した。
これらのことから、冬季においても森林散策の効果は期待できる場合があり、また少人数であっても、その踏圧によって簡易散策路の設定が可能であることの双方の結果が示された。 -
森林の保健休養の「効果」をはかるには? <連載>森林と健康-森林浴、森林療法のいま- 第14回 招待あり 査読あり
上原 巌
森林レクリエーション 384 8 - 11 2019年05月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(学術雑誌) 出版者・発行元:全国森林レクリエーション協会
森林における保健休養の効果の測定について、以下の4つの観点から考察し、記述した。
1.森林の保健休養の「効果」について
2.森林の保健休養を考える上での大きな課題:個人差と森林の多様性&複層性
3.線形代数:行列について
4.森林と人間の多様な要素と組み合わせ -
各地の森林での研修会・ワークショップ <連載>森林と健康-森林浴、森林療法のいまー 第13回 招待あり 査読あり
上原 巌
森林レクリエーション 383 8 - 11 2019年04月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(その他) 出版者・発行元:全国森林レクリエーション協会
現在の国民の森林での過ごし方と、森林に対する国民のイメージについて、内閣府・林野庁が行った意識調査の結果から紹介したのち、保健休養のための森づくりの実践について、各地の放置林(針葉樹人工林、広葉樹二次林の2例)を活用したワークショップを紹介した。
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台湾の大学演習林と森林療法
上原 巌
森林技術 924 28 - 31 2019年03月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(学術雑誌) 出版者・発行元:日本森林技術協会
2013年に台湾で森林療法の著書が2冊発刊され、同年より、台湾での森林療法の研修会を定期的に担当するようになった。研修会は、台北のような都市部と地域の山村の、大きく分けて2か所の会場で行うことが多く、その参加者の傾向にも明らかな差異がある。都市部では、都市住民のメンタルヘルスや健康増進、生活習慣病の予防、健康増進など、みどりの環境を健康増進のために渇望している方が多く、山村部では、地域振興を目的とした参加者が圧倒的に多い。しかし、これは、台湾だけではなく、日本においても同じ傾向がうかがえるところである。
台湾においては、国家的な森林政策の一環としても森林での保健休養の推進に力を入れており、それは各地の大学および演習林においても同様の傾向がみられている。
本報では、2013年、2018年に訪問した、国立中興大学、国立台湾大学の二つの大学演習林と当地での森林療法の研修会の様子を紹介した。 -
都内での市民講座 <連載>森林と健康ー森林浴、森林療法のいまー 招待あり
上原 巌
森林レクリエーション 382 4 - 7 2019年03月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(学術雑誌) 出版者・発行元:全国森林レクリエーション協会
東京都内における森林療法の市民講座の事例として、
①青梅市における市民講座
②世田谷区における区民講座
の2つの事例を紹介した。いずれも、住宅街に隣接する「身近な森林」を活用したこころみである。
森林浴、森林療法というと、そのための何か特別な森林環境が必要であるかのような印象が一般にあるが、その実態はイメージの世界である部分も大きい。青梅の森、成城三丁目緑地はその点において、特別な森林に出かけずとも、森林浴、森林療法の場となりうる典型例のような場であるといえる。より生態系的に優れ、多様性が高く、自然度の高い森林で過ごすこととは次元もその効用も異なる。しかしながら、都市の生活から可及的に訪れることができる森林として、また非日常の空間として、青梅の森や、成城三丁目緑地の森林は価値がある。都市部においても、そのような樹林地、緑地は点在している。
欧米には「Urban Forestry」という一分野があり、そうした都市部の緑の造成、活用、効能についての研究が進んでいる。今後、日本の都市部においてもその流れは広がっていくことと思われる。 -
フィンランドでの森林療法の研修会
上原 巌
現代林業 2019年3月号 1 - 6 2019年03月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(学術雑誌) 出版者・発行元:全国林業改良普及協会
現在、森林浴、森林療法は、国際的にも広がりを見せている。日本から発信されたこれらの言葉は、アジアだけでなく、ヨーロッパや南北アメリカ、オセアニアにまで伝わっている。本報では、その広がりの中でも、北欧のフィンランドにおける森林療法の研修会の様子を紹介した。
「Forest Therapy Days in Finland 2018」
2018年8月に、フィンランドでは初めてとなる、森林療法の国際研修会「Forest Therapy Days in Finland 2018」が、ファンランド南部のエロントゥーリ村で開催された。ヨーロッパでは、2017年9月にドイツ・ウスダムで開催された国際大会に次いで2回目となる森林療法の集会である。ちなみに、今回の研修会の発起人は、地元フィンランドの主婦2名である。
今回の国際研修会の参加者は、地元フィンランドのほか、ノルウェー、スウェーデン、ベルギー、イギリス、アイルランド、ドイツ、ポルトガルなどのヨーロッパ諸国から、またアメリカ、カナダ、シンガポール、インドなどの国々からもみられた。全員インターネットを通しての申し込みである。
研修会の講師は、スウェーデン、インド、アメリカ、シンガポール、そして日本(わたし)など、海外からの人員がほとんどであった。様々な専門家や実践者から、森林療法に関する様々なことを学び、手作りでフィンランドの森林療法を構築し、普及啓蒙していこう、という心構えの研修会であった。講師、一般参加者には、看護師、薬剤師が多いことも特徴であった。
研修会の内容は、「森林療法とは何か? フィンランドにおける可能性」という小生の基調講演と日本における事例紹介、ワークショップに始まり、各講師からヨーロッパにおける研究報告、薬用植物の講義、マインドフルネス、コーチング、そしてフィンランドにおける伝統的な民間療法、サウナ(薪、木の香り)の歴史と効用などであり、個性的なカリキュラムが並んだ。また、座学のあとは、それらを聞き流すだけではなく、復習を兼ねての実習も行われた。実習は、森林散策をはじめ、林内でのお茶や、静かな内観の時間など、「静」のプログラムが多く、昨年のドイツでのノルディックウォーキングをはじめとした「動」のプログラムとは対照的であった。
フィンランドは「森と湖の国」と称され、各地に森林と湖がある。同時に、その自然環境には、「ムーミン」を生んだ国であることからもわかるように、「森には精霊が棲んでいる」「樹木には魂が宿る」という日本と類似したアニミズムの文化もみられた。
今回の研修会で最も良かったことは、連日静かな森の中で、心静かに過ごすことができたことである。自然も人の心根も美しい。忘れがたいフィンランドでの一週間となった。 -
海外における森林療法の概況(1)-アジア諸国編- 査読あり
上原 巌
森林科学 85 40 - 44 2019年02月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(学術雑誌) 出版者・発行元:日本森林学会
現在、森林浴(Shinrin-yoku)、森林療法(Shinrin-ryoho)は、国際的にも広がりを見せ、これらの言葉は、アジアだけでなく、いまやヨーロッパや南北アメリカ、オセアニアにまで拡大し、それぞれの地域において、国際シンポジュウム、セミナーなども活発に行われるようになってきた。
本報では、各国で最近開催された森林と人間の健康を考える国際会議、シンポジュウムを中心に、森林浴、森林療法の現在の国際的な趨勢についてアジアとヨーロッパの2回に分けて報告し、前半である本論ではアジア諸国(韓国、中国:台湾)における現況を報告した。 -
森林と人間の健康を考える国際会議(ドイツ、韓国、台湾)連載 森林と健康 -森林浴、森林療法のいま- 第11回 招待あり
上原 巌
森林レクリエーション 376 4 - 7 2018年09月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(学術雑誌) 出版者・発行元:全国森林レクリエーション協会
2017年にヨーロッパ、アジアで開催された、森林と人間の健康を考える国際会議について報告した。
1.ヨーロッパ:ドイツ
2017年9月13日、14日に、ドイツ:Usedamで開催された「1st International Congress The Forest and its Potential for Health」について報告した。
2.アジア:韓国
2017年10月25日~26日に韓国・榮州市で開催された森林療法の国際シンポジウムについて報告した。
3.アジア:台湾
台北市の台湾林務局:国際会議場で開催された、森林と人間の健康を考える国際会議「森林療癒 國際検討會 2017 International Conference of Forest Human Health and Well-being 2017」について報告した。 -
ミシガン州立大学森林科での森林療法の講義・実習 連載「森林と健康-森林浴、森林療法のいま-” 第10回 招待あり
上原 巌
森林レクリエーション 375 4 - 8 2018年08月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(学術雑誌) 出版者・発行元:全国森林レクリエーション協会
2017年8月21日~10月21日の2か月間、アメリカ・ミシガン州立大学農学部林学科において行った講義、実習について、報告した。
報告内容は、主に、ミシガン州立大学と林学科(Department of Forestry)の歴史、現在の概要、自分の担当した授業・実習「Forest Amenities and forest therapy」の概要、大学演習林などについてである。 -
森林のアメニティ <連載>森林と健康 -森林浴、森林療法のいま- 第9回 招待あり
上原 巌
森林レクリエーション 374 4 - 10 2018年07月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(大学・研究所紀要) 出版者・発行元:全国森林レクリエーション協会
以下の6つのトピックスについて、各地の事例をふまえながら、記述・報告した。
1.アメニティとは
2.現代のストレス社会とアメニティ
3.健康と森林
4.ヒーリング
5.森林のアメニティ
6.森林アメニティの今後の展望”地森地健:ちしんちけん” -
森林・樹木と数学 行列(マトリックス) 連載:サイエンス講座
上原 巌
現代林業 2018年6月号 56 - 63 2018年06月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(大学・研究所紀要) 出版者・発行元:全国林業改良普及協会
数学の行列(マトリックス)を利用した森林・林業の施業のあり方を基本的に紹介し、さらに多次元的な活用の可能性について記述した。
また、基本的なデータの処理方法として、差の検定(t検定)と相関係数の2つを紹介し、林学と数学とのコラボレーションについて解説した。 -
ドイツにおける森林での保健休養 -森林と健康の国際会議- 査読あり
上原 巌
森林技術 915 26 - 29 2018年06月
記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(学術雑誌) 出版者・発行元:日本森林技術協会
ドイツにおける森林を活用した保健休養について、
①ドイツの保養地の環境条件
②保健休養と木材生産の両立
の2点について記述し、あわせて、
③森林と健康に関する国際会議(1st International Congress The forest and its Potential for Health)の様子をいずれも写真を交えて、報告した。 -
中国・台湾における森林療法の研修会 <連載>森林と健康 -森林浴、森林療法のいまー 第8回 招待あり
上原 巌
森林レクリエーション 373 4 - 7 2018年06月
記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(大学・研究所紀要) 出版者・発行元:全国森林レクリエーション協会
2013年から行っている、台湾、中国での森林療法の研修会について報告した。
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森林調査の数学的アプローチ 連載:サイエンス講座
上原 巌
現代林業 2018年5月号 54 - 62 2018年05月
記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(学術雑誌) 出版者・発行元:全国林業改良普及協会
林分の毎木調査、林分密度管理図(樹高、DBH,密度、収量など)、立木材積表、丸太の材積計算、樹幹解析などを取り上げながら、対数やロジスティック理論などを解説した。また、ベクトルを利用した樹木、林分生長の予想についても報告した。