MISC - 上原 巌
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<連載>森林と健康 森林浴、森林療法のいま 第30回 医療法人ふらて会 社会福祉法人 ふらて福祉会(2) 招待あり
上原 巌
森林レクリエーション 442 9 - 12 2024年03月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(学術雑誌) 出版者・発行元:全国森林レクリエーション協会
北九州市の地域病院と社会福祉施設における森林療法の導入の事例を報告した。
本事例研究は、財団法人 日本森林林業振興会より「令和4年度障害者高齢者の森林の保健休養モデル事業」の研究助成を受けおこなった。 -
<連載>森林と健康 森林浴、森林療法のいま 第29回 医療法人ふらて会 社会福祉法人 ふらて福祉会(1) 招待あり
上原 巌
森林レクリエーション 441 8 - 14 2024年02月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(学術雑誌) 出版者・発行元:全国森林レクリエーション協会
高齢化社会は現在のわが国における特徴であり、高齢者の健康づくりもまた一つの課題となっている。多くの高齢者が何らかの疾患や体調不良を抱え、自らの健康に不安を感じ、また第二の人生を社会福祉施設で過ごすという高齢者も珍しくない。このような状況下で、今回は地域病院と社会福祉施設の敷地内に数haの森林を持ち、患者さん、利用者さんの保健休養に活用している事例を報告した。
なお、本事例は、財団法人 日本森林林業振興会より「令和4年度障害者高齢者の森林の保健休養モデル事業」の研究助成を受けおこなった。 -
上原 巌
現代林業 2024年2月号 1 - 6 2024年01月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(学術雑誌) 出版者・発行元:全国
海岸からはげ山に至るまで、植樹活動が全国各地で行われている。植樹は、緑化、造林目的だけでなく、いまや森林、樹木と一般の人々をつなぎ、意識を高める意義も持っている。本報では、国民的なアイドルともいえるサザエさんも参加した植樹ツアーの様子を報告した。
秋晴れの2023年10月28日(土)、埼玉県秩父市にて、住宅メーカーの伊佐ホーム主催、林野庁後援による植樹ツアーが開催された。特別ゲストは国民的なアイドルでもあるサザエさんとその一家で、ツアーの名称も「サザエさん森へ行く 植樹ツアーin秩父2023」であった。出発は、横浜の元町中華街駅、終点は、西武秩父駅である。
植樹ツアーには、修学前の幼児から80代の女性まで、スタッフを入れて百余名が参加をした。「森は海の恋人」のように表現されることがある。今回は秩父の森と横浜の海をむすんで行われた。その昔、秩父や飯能の山林から伐り出された木々、木材は荒川流域を下り、江戸に運ばれた。同時に、秩父の養蚕から生まれた生糸も横浜港に運ばれ、海外に輸出された時代もあったのだ。今回はその森と海の歴史もサザエさん一家と振り返りながらの植樹活動となった。
植樹されたのは、地元秩父の山林でみられる、ケヤキ、ミズナラ、クマシデ、ヤマグワなどの25種、計400本の苗木。一人4本ずつ、かつての森林公園跡地に植栽された。植栽後はコナラを中心とした広葉樹二次林にて、林床に横たわっての休養時間と、林床の実生を探すアクティブな時間の双方をもうけた。
現在、全国各地で様々なタイプの植樹活動が行われている。主伐後の通常の植樹のほか、津波被害地などの災害復興の植樹、記念植樹、慰霊植樹などもおこなわれている。そこでもう一歩。森林と市民をむすびつけ、さらに意識を高めていくための植樹である。今回はサザエさんという特別な存在の力を借りたが、それでも子どもたちは植樹をし、森の中で遊ぶだけでも十分に楽しい様子であった。もちろん下刈りなどの保育作業は待っており、不可欠だ。けれども、まずは「楽しめる植樹」、「遊べる植樹」「親しんでもらう植樹」も、市民の意識づけの導入段階では必要なのかも知れない。そんなことを今回の植樹ツアーに参画して考えた次第である。
※2025年6月、秩父市では66年ぶりに天皇皇后両陛下をお招きしての全国育樹祭が開催される予定である。 -
森林の環境回復 放置された森林の新陳代謝をはかるこころみ
上原 巌
東京農大 東日本支援プロジェクト 東京農大:復興から地域創生への農林業支援プロジェクト 2023年度 成果報告書 1 7 - 8 2024年01月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 出版者・発行元:東京農業大学
1.はじめに 相馬地方の放置林における間伐実施のこころみ
東京農業大学・東日本支援プロジェクトでは、2011年より相馬地方の森林に複数の定点観測地を設け、継続的に放射性セシウムの測定を行ってきた。その定点モニタリングの結果、2018年頃より観測地の樹木の枝葉などの採集サンプルからは、セシウム134(半減期約2年)、137(半減期約30年)ともに検出されないケースが少しずつ増えてきている。自然種子散布による広葉樹、針葉樹の実生では、その双方が検出されない個体の増加もみられるようになってきた。これらの結果をふまえ、2019年からは相馬地方森林組合に作業委託をし、各地の私有林において間伐を実施してきた。2019年10月は相馬市今田地区のスギ林(36年生)、2020年12月には南相馬市原町区のヒノキ林(32年生)、2021年12月には、相馬市玉野地区のコナラ、クリ等を主林木とする広葉樹二次林においてそれぞれ間伐を実施した。いずれも50%の強度間伐を行ったところ、林床の相対照度が向上し、新生の樹木の実生が確認された。
2.ヒノキ林における間伐の実施と林床照度、植生の変化
これまでの間伐実施の結果をふまえ、2022年12月に南相馬市小高区のヒノキ若齢林(約20年生)において間伐を実施した。実施した林分の平均樹高は約8m、平均胸高直径は約12㎝であった。
間伐実施半年後の2023年6月に林床の相対照度を測定したところ、間伐前の約6%から間伐後は約37%と飛躍的に林内の明るさが改善された。
これに伴って、間伐実施半年後の2023年6月および9月の2回に分けて同林床の植生調査を行ったところ、40樹種以上の新生の樹木実生が確認され、その発生状況および成長スピードは、2020年に間伐を実施した原町区の30年生のヒノキ林よりも旺盛であった。ウルシ、コシアブラ、ホオノキ、ハリギリなどの陽樹のパイオニア樹木をはじめ、シデ類、カエデ類などの風散布樹木、そしてサクラ類、ガマズミなどの鳥散布樹木が確認された。コブシ、クロモジなどの薬用樹木も発生し、これらの樹種構成の多様性は2021年に間伐を実施した相馬市の広葉樹二次林の状況とほぼ同レベルであった。これらの実生の発生には、埋土種子の発芽のみならず、間伐による自然散布樹木の導入効果もうかがえる。福島にとって、キノコ原木としても有用なコナラ、クリの発生が数多く見られたが、ヒノキ林分の周囲に広葉樹林はなかったため、これらは、主に動物による種子散布であると思われる。また、発生した実生の中では、クリの成長が特に著しく、中には、1mを越える個体もみられた。現在、日本各地で放置されたスギ、ヒノキ林床の貧弱な植生によって、土壌流亡や土砂災害が発生しているが、今回の間伐によって発生したこれらの樹木はその災害防備の効果を持つことも期待される。
3.放射性セシウムの測定
本年度も本年度も植生調査とあわせて実生樹木枝葉や林床土壌を採取し、その放射性セシウムの測定もおこなった。森林土壌では、深さ5㎝からのサンプルからは約10万ベクレルのセシウム137が検出された。しかしながら、深さ10㎝の土壌層になると4000ベクレルと、約20分の1以下にその数値は急減した。このことから、小高区の当地の森林土壌においても、放射性セシウムはその表層に滞留していることがうかがえる。林地の落葉層は約13,000ベクレル、コシアブラの実生は約25,000ベクレルと高かったが、ヒノキやコナラの実生はいずれも1000ベクレル前後であった。
4.各研修会の実施
2023年度は、5月に福島県県立相馬高校にて学校訪問型の農学サマースクールを実施し、6月には同高校にて相双地区の高校の理科の先生方対象の研修会を、9月には、小高区の間伐実施のヒノキ林にて、相馬地方森林組合の若手職員職員対象の研修会を実施した。相馬高校では、近隣の相馬神社、馬稜公園にみられる樹木の解説や採集、また樹形の観察などをおこない、理科の先生方にも教材研究の一環として同様の研修会を実施した。相馬地方森林組合の皆様方には、連年の間伐実施の御礼とともに、各森林調査の手法や、林床植物の解説と若齢ヒノキ林における間伐実施の効果について説明をおこなった。研修会では、山林所有者の方のお話を拝聴することもでき、有意義であった。
5.今後の相馬地方の山林における展望
今後の相馬地方における森林再生の施業方策としては、林内の放射性セシウムのモニタリングを継続して行いつつ、間伐による高木の伐採とその萌芽更新による若返り、新陳代謝をはかり、開空度と林床照度を高めることによって樹木の天然更新(風散布、動物散布等)を促進し、針広混交林を形成していく手法が考えられる。
これからも継続して相馬地方の森林保育、森林保全作業に携わっていきたい。 -
熊本県、福岡県の山間部での森林療法の研修会 <連載>森林と健康 -森林浴、森林療法のいま- 第28回 招待あり
上原 巌
森林レクリエーション 437 4 - 10 2023年10月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(学術雑誌) 出版者・発行元:全国森林レクリエーション協会
2022年は、「森林浴」という言葉が提唱されてから、ちょうど40年の節目の年にあたる。ちなみに森林浴という言葉を1982年に提唱されたのは、時の林野庁長官の秋山智英さんであった。当時、私は長野県の高校3年生で、森林浴という言葉がつくられた時のことも覚えている。この頃、森林散策をはじめとした森林関係の番組やニュースが多かったと記憶している。何らかのブームが起きる時にはマスコミも連動するものなのだ。これは現在でも同様である。
森林浴という言葉が提唱された7年後の1999年、今度は私が日本森林学会で「森林療法」という言葉を提唱した。この森林療法という言葉が生まれてからも20余年の年月が流れたが、その後、「森林セラピーⓇ」という登録商標や各地での保養ビジネスも派生した。
森林浴と森林療法は今日では同列で扱われることが多い。実際、両者には重なる部分も多い。では、森林浴と森林療法の違いとは何だろう?それは端的にいえば、森林浴は、単純に各地の森林を楽しむことである。それに対し森林療法は、あくまでも「療法」の一つである。対象者があり、何がしらの目的があり、その目的に応じての然るべき森林があって、対象者別の適切なプログラムが準備され、効果がはかられる、という違いがある。
数年間続いているコロナ禍の影響もあり、現在、各地でその森林療法が見直され、導入をはかる地域が増えている。けれども、「どのように森林療法を始めればいいのかわからない」「自分たちの山林でも森林療法は可能なのだろうか」などの基本的な疑問を抱く地域もいまなお数多い。
そこで本報では、2022年3月に、九州は熊本県上益城郡甲佐町、福岡県八女市黒木町の里山を活用した森林療法の研修会の事例を紹介した。なお、この研修会にあたっては、日本森林林業振興会の研究助成を受けた。 -
上原 巌
現代林業 687 ( 1 ) 1 - 6 2023年08月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(学術雑誌) 出版者・発行元:全国林業改良普及協会
全国各地で、地域の森林を活用した保健休養、森林療法のこころみが始まっている。特に高齢化社会は現在のわが国における特徴であり、高齢者の健康づくりもまた一つの課題となっている。多くの高齢者は何らかの疾患や体調不良を抱え、自らの健康に不安を感じ、また第二の人生を社会福祉施設で過ごす高齢者も珍しくない。このような状況下で、今回は地域病院と社会福祉施設の敷地内に数haの森林を有し、患者、利用者の保健休養に活用している事例を報告した。
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福島の高校生とのサマースクール <連載 第27回>森林と健康 -森林浴、森林療法のいま- 招待あり
上原 巌
森林レクリエーション 434 4 - 10 2023年07月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(学術雑誌) 出版者・発行元:全国森林レクリエーション協会
東京農大の東日本支援プロジェクトでは、2019年より、「農学サマースクール」と題して、地元の高校生を対象に、夏休みの期間を利用して体験型の出前講座をおこなっている。身近なにいるイノシシやサル、タヌキなどの野生生物を赤外線カメラで調べたり、農地で昆虫を捕まえたり、その土壌を調べるなどのいくつかのプログラムを準備し、その中でも筆者は、「森林も人間も健康に」という講座を担当している。内容は、南相馬市内の身近な樹林地を散策し、その林床の自然散布の樹木を見つけたり、その枝葉からアロマウォーターを作成するなどの体験学習である。
本報では、その福島での高校生サマースクールの様子を紹介した。
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地域の森林におけるアメニティ ー田中林業(東京都檜原村)- 招待あり
上原 巌
山村の地域資源としての森林空間と有用植物の活用の事例 1 33 - 35 2023年06月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:速報,短報,研究ノート等(大学,研究機関紀要) 出版者・発行元:全国森林レクリエーション協会
東京都檜原村の田中林業における森林アメニティの取り組みについて報告した。
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上原 巌
現代林業 2023年4月号 1 - 6 2023年03月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(学術雑誌) 出版者・発行元:全国林業改良普及協会
現在、様々な大学間で教育研究のコラボレーションがおこなわれている。森林関係では、環境系、土木系、野外生物系の分野との共同研究が盛んだ。今回は建築学科の学生が大学演習林を訪れた。森林での体験実習をおこなうことにより、建築素材としてだけではない、樹木の魅力を学んだ事例として紹介した。
森林から産出される木材は、古来より建築材として主に利用されてきた。建築を学ぶ学生は、日頃からその木材に親しんでいる。しかしながら、その産地である森林には意外に出かけたことがないという学生が大半のようである。
そこで、今回は、東京農業大学の奥多摩演習林に建築学科の学生さんをお招きし、森林での学びを体験していただく機会を持った。
演習林に来訪されたのは、早稲田大学創造理工学部建築学科の古谷誠章教授の大学院生のみなさんである。みなさん森林の中の様々なことに関心を持ち、とても能動的であった。サンショウの葉の香りや、林床のスギ、ヒノキの稚樹などにも逐一みなさん関心を持たれていたことが印象的である。スギ林に入ったとたん、その梢を見上げ、「いいなあ、好きだなあ」と林内の風致を楽しんでいる学生さんもおり、こちらが嬉しくなるほどであった。
体験実習は、調査プロットを張り、毎木調査から始めた。みなさん、直径巻尺にも「ほお、便利ですね」と感心される。作業の飲み込みも早く、各自が効率よく動く。続いて、樹冠投影図の作成をおこない、森林土壌の断面の作り方なども説明したが、いずれも熱心に取り組まれていた。最後に50年生のヒノキを一本伐倒し、枝払い、玉切り作業をおこなっていただいたが、伐るたびに発散されるその芳香に、「いい香りー」と歓声をあげられていた。みなさんにはそれぞれ輪切りのコースターを持ち帰っていただいた。
今後も建築学との協働を続け、森林、樹木、木材の魅力と可能性はさらに広げていきたい。 -
都市近郊林における林業と森林アメニティ 招待あり 査読あり
上原 巌
森林科学 97 12 - 16 2023年02月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(学術雑誌) 出版者・発行元:日本森林学会
都市近郊林には、アクセスが容易である地の利から木材生産も含め、様々なメリットと可能性がある。本報では、その都市近郊林における現在の林業の状況とそこから創り出される森林アメニティ(森林の快適性、森林の恵み)について、
①田中林業(東京都檜原市)
②東京チェンソーズ(東京都檜原市)
③有限会社創林(埼玉県飯能市)
④中島林業(東京都青梅市)
の4つの林業体を報告した。 -
学術情報課程40周年記念「農大の殿堂」
上原 巌
東京農業大学 学術情報課程 1982~2022年における40年の歩み 1 ( 1 ) 16 - 18 2023年02月
記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(大学・研究所紀要) 出版者・発行元:東京農業大学
東京農業大学の学術情報課程(学芸員・司書養成課程)の40周年記念にあたり、所感を記した。
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上原 巌
森林技術 969 32 - 35 2023年01月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(学術雑誌) 出版者・発行元:日本森林技術協会
カラマツは、わが国に自生する唯一の落葉針葉樹である。極陽樹であり、乾燥地にも生育し、成長がはやいため、建築材のほか、かつては坑木や電柱などにも利用された。根は浅根性で、凹地の少ない平坦地を好み、弱酸性の土壌で林分が成立することが多いことなども知られている。信州の亜高山などでは、あちこちにカラマツの実生を見かけることが多い。しかしながら、東京農業大学の奥多摩演習林においては、カラマツ植林地はあっても、その実生を見ることは極めてまれである。
そこで面積約120haの演習林内のごく一部でみられるカラマツの実生に着目し、その分布状況の特徴を調べた。
調査の結果、奥多摩演習林内でのカラマツ実生は、相対照度が高い林道脇の裸地に生育する個体が大半であった。実生がみられたのは、石礫が多く、しかし生育点の土壌硬度は1kg/c㎡未満の柔らかな箇所である。土壌pHは弱酸性(平均6.4±0.3)であった。樹形は匍匐型が多く、根系は発達し、T/R率は低く、斜面に適応した屈曲の樹形が過半数であった。また、カラマツ実生と同時にみられた植生は、リョウブ、ウリハダカエデ、シデ類、クマイチゴ、ケヤマハンノキ、オオバヤシャブシなどであった。 -
森林の環境回復 放置された森林の新陳代謝をはかるこころみ
上原 巌
東京農大 東日本支援プロジェクト 2022年度 成果報告書 1 ( 1 ) 8 - 9 2023年01月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:速報,短報,研究ノート等(大学,研究機関紀要) 出版者・発行元:東京農業大学
1.放置林の間伐実施のこころみ
東京農業大学では、2011年より相馬地方の森林に複数の定点観測地を設け、継続的に放射性セシウムの測定を行ってきた。その結果、2018年ころより観測地の樹木の枝葉などの採集サンプルからは、セシウム134(半減期約2年)、137(半減期約30年)ともに検出されないケースが少しずつ増え、自然種子散布による広葉樹、針葉樹の実生では、その双方が検出されない個体の増加もみられるようになった。これらの結果をふまえ、2019年からは相馬地方森林組合に作業委託をして、各地の私有林において間伐を実施してきた。2019年10月は相馬市今田地区のスギ林(36年生)、2020年12月には南相馬市原町区のヒノキ林(32年生)において間伐を実施した。いずれも50%の強度間伐の実施後は、林床の相対照度が20~30%前後に向上し、林床では20~30種前後の新生の樹木の実生が確認された。
2.広葉樹林における間伐の実施と間伐による林床植生の変化
上記のスギ林(2019年)、ヒノキ林(2020年)の間伐実施の結果をふまえ、2021年12月には、相馬市玉野地区のコナラ、クリ等を主林木とする広葉樹二次林において間伐を実施した。間伐率は50%である。ブナ科樹木を主体とした広葉樹林では、キノコの原木、薪炭材として福島県にとって極めて重要な樹種であり、その再生が強く望まれる。また、これまで実施したスギ、ヒノキなどの常緑針葉樹の人工林とは異なり、落葉広葉樹の二次林であるため、森林内および樹体内の新陳代謝の機構も異なるため、その結果が注目された。
間伐実施から半年後の2022年6月および11月の2回に分けて同林床の植生調査を行ったところ、40樹種以上の新生の樹木実生が確認され、その発生状況および成長スピードは、前年までのスギ、ヒノキ林の間伐後よりもさらにダイナミックであった。特にウルシ、コシアブラなどの陽樹のパイオニア樹木をはじめ、シデ類、カエデ類などの風散布樹木、そしてサクラ類、ミズキ類、ムラサキシキブなどの鳥散布樹木が確認されこと、コブシ、クロモジなどの薬用樹木も芽生え、過去2回の間伐では認められなかった樹種構成の多様性がうかがえたことなどが特徴的である。これらの実生の発生には、埋土種子の発芽のみならず、間伐による自然散布樹木の導入効果がうかがえた。
3.放射性セシウムの測定
植生調査とあわせて実生樹木枝葉や林床土壌を採取し、その放射性セシウムの測定もおこなった。マユミ、ムラサキシキブなどの鳥散布樹種や、アカシデ、イロハモミジなどの風散布樹木では非検出のものがみられ、またセシウム137が検出されたサンプルでも、数値は2000ベクレル以下であった。森林土壌では、落葉層では約700 Bq/kg、その下の腐植層では約5,000 Bq/kg、深さ5㎝の土壌層では約7200 Bq/kg、深さ10㎝層では2150 Bq/kgのセシウム137が検出された。
これらの結果から、当地の広葉樹林においても、落ち葉の腐植層から土壌の表層部に放射性セシウムが滞留していることがうかがえた。
4.今後の相馬地方の広葉樹二次林における展望
これらの結果をふまえ、今後の相馬地方における広葉樹二次林再生の施業方策としては、高木の伐採とその萌芽更新による若返り、新陳代謝をはかるとともに、間伐、除伐によって林内空間を開け、林床照度を高めることによって樹木の天然更新(風散布、動物散布等)を促進する手法が考えられる。 -
上原 巌
現代林業 2023年1月号 1 - 6 2022年12月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(学術雑誌) 出版者・発行元:全国林業改良普及協会
森林、樹木の大切さや魅力を知ってもらうためにと全国各地で「木育」をはじめ、様々な野外活動や体験がおこなわれている。けれども、遠足や林間学校等での活動体験もあるものの、自分の暮らす身近な森林に入る体験は意外に少ない。また、現在は「香り」「アロマ」が一つのキーワードにもなっている。そこで、本報では、身近な森林の散策と樹木の香りをセットにした体験学習の事例を紹介した。
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多様化する森林アクティビティの最前線 ー森林療法のプログラムー (リレー連載:森林アメニティの新たな動向) 招待あり
上原 巌
森林レクリエーション 427 4 - 10 2022年12月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(学術雑誌) 出版者・発行元:全国森林レクリエーション協会
森林療法のプログラムとして、
①森林の中で、「自分に居心地の良い場所」を見つける
②よい感触のものをさがす
③よい香りのものをさがす
④よい音のものをさがす
⑤森林の中で、おはなしをする
⑥森林の中で、「何かを見つける」
⑦森林で何かをつくる
⑧森林の中で作業を行う(作業療法)
⑨クライエントが提供する森林体験プログラム
の9つを代表例として紹介し、森林療法のプログラムを実施する上での基本的な心こころがまえ、留意点についても付記した。 -
コロナ禍の東京農業大学における代替実習 査読あり
上原 巌、根元 唯、佐藤孝吉
森林科学 96 28 - 31 2022年10月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(学術雑誌) 出版者・発行元:日本森林学会
新型コロナウイルス(COVID-19)は、中国・武漢市などで報告されて以来、2020年には全世界に拡大し、私たちの日常生活に様々な制限をもたらすパンデミックとなった。各学校現場においてもその影響を受け、インターネットを介在した配信教材による在宅学習への切り替え等の対応が行われた。
われわれ大学の森林関係の学科においてもそれは例外ではなく、教育の主幹である野外実習、フィールドワークについてもその代替措置が各大学で検討、講じられることとなった。
本報では、東京農業大学の森林総合科学科において、通常の演習林実習を大学構内での実習に代替した事例(2020年)と、演習林の代替地で実習をおこなった事例(2021年)の二つをご紹介し、それぞれの実習効果について検討、考察した結果を報告した。 -
森林と人との新しい関係 森林と人間が共に健やかに 招待あり
上原 巌
地域文化 142 10 - 15 2022年10月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(その他) 出版者・発行元:八十二文化財団
私たちの身近なみどりを活かした健康づくりは、実はさほど特別なことではない。私たちの日常生活の中でほとんど意識をせずにすでに行われていることである。例えば、家のプランターで花を育てたり、自宅の庭で野菜を育てたりすることは、植物の美や、作物の収穫の喜び、生きものを育てる達成感といった精神面だけでなく、手指をはじめとした身体のリハビリテーションにもなる。身近なみどりには、公園や緑地、寺社林のみどりなども含まれる。そのようなみどりの場所に出かけ、過ごすことが心身のリフレッシュや、日常生活のリセットの効用をもたらすのである。
森林における保健、休養の対象者は、観光客、保養客のようにお金を支払うことができる人ばかりではない。長期の経済低迷と今回のコロナ禍の影響により、仕事を失い、かつ自分の望む仕事に就くことができない方々が数多い。このような時であるからこそ、ガイド料のような特別なお金を払わなくても、また特別な場所に出かけずとも日常的にできる森林での保健休養、健康づくりが望まれる。もともと森林と人類との健康づくりは貨幣価値などのない先史時代から行われてきている。
かねてより「地域の時代」と云われてきた。様々な価値観が大きく見直される今だからこそ、従来のように中央からの働きかけを待つのではなく、自分の暮らす地域の自然、歴史、風土を生かした暮らしが再考される流れがある。今後は日常の生活や自己の生き方を、地域における自分の居場所、暮らしを大切にする時代になることも予想される。信州には、その基盤となる森林が各地域にある。
信州の森林の魅力とはなんだろう。それは端的に言って、多様性である。北は多雪地帯のブナ林から、南は暖帯のお茶畑まで、標高ではクヌギ、コナラなどの里山林から、高山のハイマツ群落まで、実に多様な森林の姿が信州ではみられる。また、中には、遺伝子的に貴重な植物種、動物種も数多い。
本報では、そのような自分たちの手による、自分たちの足元からの地域での健康づくりのこころみの可能性について、特に森林を活用した健康づくりを中心に考えた。 -
九州の里山での森林療法の研修会
上原 巌
現代林業 2022年5月号 1 - 6 2022年09月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(学術雑誌) 出版者・発行元:全国林業改良普及協会
新型コロナウイルスの世界的なまん延とともに、森林における保健休養の意義も各地で高まっている。この状況下において、日本森林学会で1999年に提唱された「森林療法」もまた、その導入をはかる地域が増えている。
けれども、「一体どのように森林療法を地域に取り入れたらよいのか?」「うちの山林で、その森林療法はできるのか?」「特別な森林、特別な人材が必要なのか?」などの基本的な疑問を抱く地域も数多い。
そこで本報では、福岡県八女市の里山を活用した森林療法の研修会の事例を以下の通り紹介した。
森林療法の研修会をおこなったのは、福岡県八女市の黒木町。八女茶の産地でも有名な山間部である。地元のNPO法人山村塾(小森耕太理事長)の皆様とご一緒させていただいた。
研修会の場所は、コナラを主とした落葉広葉樹林である。林床には、ヒサカキ、ソヨゴ、イヌツゲ、チャノキなどの常緑低木や、コシアブラやハゼノキなどもみられ、コナラ、アラカシなどの落葉が豊富にある。当地で「自分の居場所」を林内でつくるプログラムをおこなった。手順は次のとおりである。
①4畳半程度の面積の林床の手入れをおこなう。ヒサカキ、イヌツゲ、ハゼなどを手鋸で除伐し、コシアブラやタラノキなどは残す。
②林床の落葉(乾燥したもの)を集める。
③間伐したコナラ、アラカシなどの幹や大枝の丸太をリレー運搬する。
④運搬したその丸太を井桁状に組む。
⑤そこに落葉を入れ、「落ち葉のこたつ」を作る
⑥林床に横臥し、落ち葉の布団をかける。
⑦日頃の生活をふりかえる自己カウンセリングをおこなう
なお、プログラムを行う上では、一番障害の重い方にあわせて行うことが肝要である。
コロナ禍をはじめ、現在の日常生活で様々なストレスを私たちは抱えている。また、職場などでも、心地よい場所が見つからないという方もいる。そこで、本事例のように自分の居場所を森の中に作り、そこで過ごすというシンプルなことも森林療法の一つになりうるのである。また、この事例でもわかるように、場所はどこにでもあるような森林であった。今回は広葉樹林でおこなったが、針葉樹林でももちろん行うことができ、特別なルールはない。
森林に語りかけ、あるいは働きかけ、一緒に心身の健やかさを取り戻していく。これが森林療法の基本である。
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日本の北限ブナ林と日本最古のブナ人工林を訪ねて ~ブナ林讃頌~ 招待あり
上原 巌
森林空間を利用した健康活動と森のアクティビティ 1 17 - 35 2022年09月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(大学・研究所紀要) 出版者・発行元:全国森林レクリエーション協会
ブナは日本の落葉広葉樹を代表する樹木である。極相(climax)の樹種であり、ブナ林の風景は、荘重さと華麗さの双方を兼ね備えている。また、ブナには生態学的にも利用学的にも、そして地域社会学的にもまだまだ様々な可能性がある。特に地域形成、地域文化としてのブナの力は大きい。
そこで、本報では、日本の北限のブナ林である、北海道寿都郡黒松内町、島牧郡島牧村のそれぞれの天然のブナ林と、亀田郡七飯町における人工ブナ林をそれぞれ調査し、その特徴とブナ林の今後の可能性を考察、報告した。 -
高齢者・障がい者のための森林のレクリエーション利用のてびき 招待あり
上原 巌
高齢者・障がい者のための森林のレクリエーション利用のてびき 2022年06月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(学術雑誌) 出版者・発行元:全国森林レクリエーション協会
森林を楽しむことは広くすべての人に開かれている。うららかな陽射しでの春の散策。灼熱の都会から別天地の涼しい林間で憩える夏。虫の声や紅葉を楽しむ秋。そして、動物たちの足跡を見つける冬。四季を通して、森林は常に私たちをいざなっている。
では、年を追うごとに足腰が弱り、体力に自信を失いかけている高齢者、また心身に障害を抱えた方々は、いかがだろうか?森林に出かけることができているだろうか?また、高齢者、障害者がより楽しく森林を楽しむためにはどのようにしたらよいのだろう?
現在は、ヴァーチャル・リアリティ(VR)の技術も格段に進歩しています。都市部のオフィスや、病院、福祉施設の室内であっても、森林の風景や音をいつでも楽しむことができる。生活に制限があり、屋内で過ごさざるを得ない方々にとって、VRは一つの清涼剤にもなることだろう
しかしながら、VRの環境はいつも同じである。何回再生しても、同じ風景や音が繰り返される。けれども、本当の自然の森林は常に変化している。一日、一時も同じ森林の姿、森林の世界はない。森林を楽しむためには、やはりその森林に実際に出かけて過ごすことが必要である。
このてびきは、そうした高齢者、障害者のみなさまが森林を楽しむためにつくられた。すべての人にとって、森林の世界がさらに広がることを願っている。