MISC - 上原 巌
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アメニティを享受できる森林空間とは? <特集>森林アメニティ利用の新しいかたち 招待あり
上原 巌
森林技術 951 6 - 9 2021年07月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(学術雑誌) 出版者・発行元:日本森林技術協会
”癒しの森林”または”森林の癒し”は、現在、森林・林業界ではちょっとしたブームであるが、その森林の持つ力(アメニティ)を引き出し、享受するには、どのような手法があり、そのような森林空間にはどのようなデザインが考えられるだろうか?本報では、下記の5つの事例を取り上げ、報告した。
①市民ワークショップの事例
②認知症の方の「森林回想法」
③森林での作業療法
④学校の先生の休養場所
⑤東京郊外の病院の森林
その他リンク: http://www.jafta.or.jp/contents/shinringijuts/23_month7_detail.html
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青森の若き医師との森林療法の研修会 <連載>森林と健康ー森林浴、森林療法のいまー 第25回 招待あり
上原 巌
森林レクリエーション 410 8 - 14 2021年07月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(学術雑誌) 出版者・発行元:全国森林レクリエーション協会
1999年(平成11年)に日本林学会で「森林療法」という言葉が生まれてから20年以上が経過した。1982年に提唱された「森林浴」とならんで、森林療法はいまや市民権を得たといえるだろうか?その後よく使われるようになった“セラピー”という言葉も合わせると、21世紀の現在、森林療法は市民の間にもその名がある程度は定着してきていると言えそうだ。
しかしながら、もし何か市民の心にまだしっくりしないものがあるとしたら、それは森林浴とくらべて、末尾の「療法」という言葉に何か腑に落ちないものがあるのではないだろうか。
「療法」という言葉をつける以上は、その目的があり、対象者がいて、それに伴う効果がある。けれども、森林療法について、様々な効果、効用を美麗なグラフなどを度々目にすることはあっても、また様々なビジネス、投資企画でその名をみることはあっても、実際の事例報告は数少ない。
障害者、高齢者、児童などを対象とした社会福祉の面では幾つもの事例がある。しかし、医療面においては、少しずつ事例は増えてきているとはいえ、依然として森林療法、または森林そのものの活用には高いハードルがある。
そこで、本論では2015年に青森県で担当した医師会での森林療法の研修会の事例を報告した。
現在、医療での森林活用は、森林関係者の側からの事例報告が主となっている。しかしながら、このことが当の医師の側から、つまり医学会において、森林活用の事例報告が増えていけば、森林療法の普及は加速度的に広がっていくこと、特に地域病院において、地域の森林も活用した医療実践が萌芽し、その可能性が広がることに期待したい。特に現在は、全世界がコロナ禍での生活形態となってしまっているため、コロナ対応はもちろんのこと、医療従事者ご自身の保養、休養の場として、森林には高いポテンシャルがある。 -
森林を活用した障害者・高齢者の保健休養及びレクリエーションの今後の展開方向に関する実証的調査事業 招待あり
上原 巌
令和2年度 林業振興助成事業成果報告書 3 - 109 2021年06月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:会議報告等
障害者を含むすべての人々が同等に生活し活動する社会を目指す「ノーマライゼーション」の理念に基づき、障害等の有無にかかわらず国民の誰もがその人格と個性を尊重し、支え合う「共生社会」の実現が求められている。
このような社会背景の中、身体障害者(肢体不自由(上肢・下肢および欠損、麻痺)、脳性麻痺、視覚障害、知的障害)を対象とした世界最高峰の障害者スポーツの総合競技大会であるパラリンピックが、新型コロナウイルス感染症の影響により1年延期されたが、2021(令和3)年に開催されることとなった。1998(平成10)年の長野パラリンピック冬季大会の際と同様に、同大会が開催されることを契機に、障害者全体への理解へと繋げていくことが期待されている。
また、我が国の高齢化率は急速に上昇し、65歳以上の人口は29%弱(2020年)に達し、2040年には35.3%になると見込まれている。高齢者は身体の衰えなどの問題を抱えている場合が多く、活動が制限されることから、健康、医療、介護に対する関心が高まっている。
これらの課題に対応し、障害者及び高齢者(以下「障害者等」という。)への理解の深化と社会参加の実現のためには、様々な分野、機会を通じて必要な措置を講ずる努力をしていくことが重要である。
森林は、木材生産をはじめ、災害防止、水源涵養、生物多様性の保全など、様々な機能を有しているが、近年は森林の保健休養機能として、森林浴や森林療法など、人々の健康増進をはじめ、医療、福祉においてもその活用が広がり、高まりをみせている。また、近年では、トレイルラン、マウンテンバイクなど、郊外の森林環境を活用したアウトドア・スポーツもその人気を高めている。しかしながら、障害等の有無にかかわらず、すべての人が森林を活用し、その保健休養効果やスポーツ、レクリエーション由来の恩恵を享受できるためには、環境・施設の整備や、利用プログラム・ソフトの開発、そしてそれらをサービス・供給する体制の構築及び人材を育成が課題となっている。
さらに、新型コロナ感染症の感染防止の観点から人流の抑制や行動の制限が長期化し、日常生活においても相当のストレスを受けている現状を踏まえ、障害者等をはじめとする方々に対する森林での保健休養のストレス軽減の効果についても期待が高まっている。
本事業では、わが国における障害者等の森林利用の現状の調査分析及び障害者等の森林利用に関する調査・研究事例の収集を行うとともに、わが国におけるバリアフリー・ユニバーサルデザインに関わる法制度等の整備の流れを整理し、障害者等の森林利用の実態を明らかにすることを目的とした。また、これらの実態を踏まえ、障害者等が保健休養やスポーツ、レクリエーションの場として、森林空間の積極的な利用のために必要とする利用プログラムを開発するために必要な事項を明らかにし、その活動を支援する人材育成及び体制づくりを検討した。
これらの検討を通じて、障害者や身体に支障のある高齢者の森林を活用した保健休養及び森林レクリエーションの普及を図ることを目的としたが、コロナ禍において、障害者等の森林レクリエーションの課題や森林の保健休養機能が障害者等にもたらすストレス軽減等の効果を検証し、コロナ禍における森林の保健休養効果の障害者等への有効性についても検討をおこなった。
報告書の「Ⅱ バリアフリー、ユニバーサルデザインとは?」(3-21頁)
「Ⅳ 森林を活用した保健プログラムの立案・作成について」(59-109)を担当し、報告した。 -
放置された里山の整備と医療利用 <連載>森林と健康 ー森林浴、森林療法のいまー 第24回 招待あり
上原 巌
森林レクリエーション 409 8 - 13 2021年06月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(学術雑誌) 出版者・発行元:全国森林レクリエーション協会
森林に市民がより親しむことは健康増進だけでなく、地域の森林を見直し、その健全度を高める上でも大きな意義を持っている。実際のところ、市民からみた森林の人気、またはイメージは肯定的に高まっていると思われるが、市民からはそれぞれの地域の森林の姿はどのように映っているのだろうか?もしかしたら、森林の実態よりもイメージだけが先行し、いわゆる「癒し」のイメージを持って森林を眺め、あるいは意識、想像している市民が多いことも考えられる。
しかしながら、わが国では、各地域に適切な森林保育がなされないまま長期間の放置状態となっている「放置林」が増加している。市民の森林の癒しのイメージの高まりの一方で、放置林も増加していることは、考えてみれば奇異なことである。また、放置林の増加は、スギ、ヒノキ等の人工造林地のみならず、かつての里山や広葉樹二次林においても同様にみられている。森林の人気が高まる一方で、放置される森林も増える。このことからは、現在の森林人気が、イメージ先行によるものであることを示唆しているともいえるだろうか。
けれども、森林における保健休養や森林のもたらす風致作用の重要性と需要の高まりは、一般のニーズはもとより、疾患や障害を抱えた人々の治療やリハビリテーションの場、環境としての需要でも高まりをみせている。
そこで本報では、東京近郊の地域病院において、約30年以上放置されてきた病院所有の広葉樹二次林を保健休養のために整備した事例を報告した。 -
「自然の中の数学」展の開催 ー東京農業大学「食と農」の博物館ー
上原 巌
森林技術 949 32 - 35 2021年05月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(大学・研究所紀要) 出版者・発行元:日本森林技術協会
数学は、農学の各分野をはじめ、自然科学に携わる上であらためて言うまでもなく、欠かすことができない。得手、不得手にかかわらず、栽培面積、収穫量、経営面での収益、複利計算、そして実験実習での統計計算など、とかく農学と数学・数字には切っても切れない縁がある。森林に目を向けた場合にも数学は文字通りその森羅万象のすべてに存在していることが俯瞰できる。
そこで、身近な自然の中に存在する数学を紹介し、数学が苦手という方にとっても、トリビア的に魅かれるような博物館展示をこの度企画し、開催したので、その内容を報告した。企画では、フィボナッチ数列、フラクタル図形、対称性、コンストラクタル法則、樹形モデル、円周率、ベクトル、パターン、素数などの各数学テーマを、「スギやヒノキの枝葉には、こんなふうに自己相似形がみられる」「年輪にはこんなパターンがある」などと、それぞれ実物の素材を使って展示したことが特徴である。ちなみに、全国的にも数学を扱った企画展示そのものが珍しいとのことであった。
<展示内容の紹介>
①フィボナッチ数列
②フラクタル図形
③対称性
④コンストラクタル法則
⑤樹形モデル
⑥円周率
⑦ベクトル
⑧パターン
⑨素数
⑩自然界の様々な造形・理論
森林・林業研究では、調査データから、近似曲線を引いたり、相関係数を求めたりすることが多い。森林、林学の学生の卒論、修論などでも、研究データの締めとして、近似式、危険率などを導き出して提示する、帰納法的な手法が一般的におこなわれている。しかしながら、同じ帰納法であっても、森林における現象や事象に潜んでいる法則性、規則性を見つける、あるいはそれらを施業や管理に活かすなどの演繹法的な手法も考えられる。
森林の世界が広く豊かなように、数学の世界も広く豊かである。相互の世界の魅力をより深く知ることによって、森林、林業にも新たなフェイズを見出すことができることと思われる。
その他リンク: http://www.jafta.or.jp/contents/shinringijuts/23_month5_detail.html
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「森林療法」で広がる森林環境、地域資源の新しい可能性 招待あり
上原 巌
森林保護学の基礎 (農文協 農学基礎シリーズ) 1 22 - 22 2021年04月
記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(その他) 出版者・発行元:農山漁村文化協会(農文協)
小池孝良・中村誠宏・宮本敏澄編著「森林保護学の基礎」におけるコラム「「森林療法」で広がる森林環境、地域資源の新しい可能性」を担当執筆した。
その内容は、以下の通り。
・森林療法の定義
・森林療法の2つのタイプ
・「地森地健」で農山村の再生へ -
「自然の中の数学」展の開催 -東京農業大学「食と農」の博物館-
上原 巌
現代林業 658 1 - 6 2021年04月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(学術雑誌) 出版者・発行元:全国林業改良普及協会
東京農業大学の「食と農」の博物館(世田谷)において、「自然の中の数学展」という企画展を開催したことを報告した(開催期間は2020年10月9日~2021年4月11日まで)。
同展では、身近な自然の中に存在する数学を実物と共に展示し、数学が苦手という方にとっても、トリビア的に魅かれるような展示を心掛けた。ちなみに、全国的にも数学を扱った博物館展示は珍しいとのことである。
本展示では、様々な数学のテーマを、自然の素材を使って紹介したことが特徴である。たとえば、落葉広葉樹の樹形をはじめ、スギ、ヒノキなどの枝葉、シダ植物、海岸線、霜の形、植物の根系、血管・神経系、菌の形態に至るまで、自然界の様々な形には、自己相似の形のくりかえしがみられる。このくりかえしによる造形のことを「フラクタル」と呼ぶ。
また、対称性(シンメトリー)は子どもでもわかるカテゴリーであるが、林業上では、あまりにも左右非対称な樹形や、樹冠の偏平が見られる場合、その立地や密度の環境状態を示していることが多い。つまり対称形、非対称形は、林木の一つの環境指標ともなっている。
また、コンストラクタル法則とは、自然界の様々なところで見られる枝分かれの法則、流れの法則のことである。樹木の枝条、葉の葉脈、植物の根系などに、この流れの法則がみられる。
そのほか、素数、円周率、ベクトル、パターンなど、また、雪や塩の結晶、流線形や渦巻き、らせん状の構造など、自然界における様々な事象を数学的に紹介した。
森林、自然の中には様々な理論があり、また未発見の数多くの理論も同時に存在している。 -
コロナ禍における生活から森林レクリエーションを考える 連載:森林と健康 -森林浴と森林療法のいまー 第23回 招待あり
上原 巌
森林レクリエーション 405 8 - 13 2021年02月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(学術雑誌) 出版者・発行元:全国森林レクリエーション協会
以下のような内容で、コロナ禍の生活における森林レクリエーションのあり方や可能性、特徴について報告した。
1.新型コロナウイルスの全世界的流行
2.森林、緑地の活用ニーズの高まり
3.公園緑地や寺社林のメリット
4.ヒトとサルの違い
コロナ禍における森林、緑地での人々の過ごし方 -
森林の環境回復 放置された森林の新陳代謝をはかるこころみ
上原 巌
東京農大東日本支援プロジェクト 浜通り地方の復興から地域創生への農林業支援プロジェクト 2020年度 成果報告書 5 - 6 2021年01月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(大学・研究所紀要) 出版者・発行元:東京農業大学
1.森林における放射性物質濃度のモニタリングから間伐の実施へ
福島県の相馬地域の森林では、2011年3月の福島第一原発の事故以来、放射性物質濃度が高い場所があることが報告されている。しかしながら、その実情はいまだに明らかにされていないことが多く、地元、近隣住民からの精査の要望がいまなお高い。
そこで、東京農業大学では、2011年より相馬地方の森林に複数の定点観測地を設け、継続的に放射線量の測定を行ってきた。観測地の広葉樹の萌芽枝などからは、セシウム134(半減期約2年),137(半減期約30年)ともに検出されないケースが少しずつ増え、また、自然散布による広葉樹、針葉樹の実生では、その双方が検出されない個体も徐々に増加してきている。そこで、それらのモニタリング結果をふまえつつ、適切な森林保育がなされないまま放置されている相馬地方の私有林を対象として、その森林の新陳代謝をはかり、かつ林床照度を高め、自然散布樹木の導入をはかることを目的に、3段階(15%、30%、50%)の間伐を相馬地方森林組合に委託し、2019年10月に相馬市今田地区のスギ林において間伐が実施された。対象は、1983年(昭和58年)に植栽されて以来、森林保育が行われていなかったスギ林である。
2.間伐実施後のスギ林の変化
間伐を実施した結果、間伐率の段階ごとに林床照度の回復がみられ、その相対照度は間伐前の7%前後から、50%間伐区では約27%にまで回復しした。間伐1年後の2020年11月に、林床土壌の放射性物質濃度の測定をおこなったところ、林床の深さ5㎝の土壌からは約3250 Bq/kgのセシウム137が検出されたが、同じ場所の土壌でも深さ10㎝となると、300bq/kgと約1/10以下にその濃度が減少することが示された。この結果から、山林内においては、依然として土壌の表層部に放射性降下物質が滞留していることがうかがえた。
また、林床には30樹種以上の新生の実生が確認された。特にアカマツ、ウルシなどの陽樹のパイオニア樹木や、シデ類、カエデ類などの風散布樹木、そしてガマズミ、ムラサキシキブなどの鳥散布樹木が確認され、間伐による自然散布樹木導入の効果がうかがえた。確認された樹木は下記の通りである。
≪間伐1年後にスギ林床で確認された樹種一覧 2020年11月現在>
(落葉広葉樹)キブシ、ウリカエデ、ツクバネ、ハリギリ、ウルシ、アオハダ、クロモジ、マルバアオダモ、ヤブムラサキ、ムラサキシキブ、ナガバノコウヤボウキ、サワフタギ、アカシデ、コハウチワカエデ、ヤマモミジ、イロハモミジ、バイカウツギ、マンサク、ガマズミ、オトコヨウゾメ、コナラ、リョウブ、ヤマフジ、ヤマツツジ、コゴメウツギ、クリ、コナラ
(常緑広葉樹)イヌツゲ、シャリンバイ
(常緑針葉樹)アカマツ、ヒノキ、スギ、モミ
これらの結果をふまえ、今後の相馬地方における森林再生の施業方策としては、間伐、除伐によって林内空間を開け、林床照度を高めることによって樹木の天然更新(風散布、動物散布等)を促進し、従来の針葉樹人工林との天然広葉樹との「針・広混交林」化をすすめることが現実的であると考えられる。
3.ヒノキ放置林における間伐の期待
2020年には、前年の相馬市のスギ林における間伐実施と同様に、南相馬市原町区のヒノキ放置林において間伐を計画した(※本報告書作成時は、未実施)。同林分も相馬市のスギ林同様に約30年生の林分であり、植栽後の間伐、枝打ちなどの保育作業が現在まで行われていない。林内は暗く、その相対照度は平均1%未満であり、林床植生もほとんどみられない。ちなみに、この林分の横を流れる小川の放射性物質濃度の測定をおこなったところ、セシウム134、137ともに非検出であった。この放置林分が間伐によってどのように変化をしていくか、その結果が期待される。
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原発災害後の福島の山林の再生を目指して 間伐・針広混交林化のこころみ 招待あり
上原 巌
現代林業 2021年1月号 1 - 6 2021年01月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(学術雑誌) 出版者・発行元:全国林業改良普及協会
福島県の相馬地域の森林では、2011年3月の福島第一原発の事故以来、放射性物質濃度が高い場所があることが報告されている。しかしながら、その実情はいまだに明らかにされていないことが多く、地元、近隣住民からの精査の要望がいまなお高い。そこで、東京農業大学では、2011年より特にその放射線量が高いといわれる同地方を中心とした森林に複数の定点観測地を設け、継続的に放射線量の測定を行ってきた。
2019年9月現在、観測地の広葉樹の萌芽枝などからは、セシウム134(半減期約2年),137(半減期約30年)ともに検出されないケースが増え、また、自然散布による広葉樹、針葉樹の実生では、共にその双方が検出されない個体も増加してきた。そこで、それらのモニタリング結果をふまえつつ、適切な森林保育がなされないまま放置されている相馬地方の私有林を対象とし、その森林の新陳代謝をはかり、林床照度を高めることを目的にして、3段階(15%、30%、50%)の間伐を相馬地方森林組合に委託し、2019年10月に実施した。対象は、1983年(昭和58年)に植栽されたスギ林で、コナラも混交している林分である。立木密度は2000本~2400本前後であり、樹高はスギ、コナラともに8~14m、胸高直径(DBH)は、双方とも15~25㎝であった。
間伐を実施した結果、間伐率の段階ごとに林床照度の回復がみられ、その相対照度は間伐前の7%前後から、50%間伐区では約27%にまで回復した。また、放射性物質濃度の測定では、林床の深さ5㎝の土壌から、2020年11月現在、約3250 Bq/kgのセシウム137が検出されたが、同じ場所の土壌でも深さ10㎝となると、300bq/kgと約1/10以下に放射性物質濃度が減少することが示された。この結果から、山林内においては、依然として土壌の表層部に放射性降下物質が滞留していることがうかがえる。
今後の相馬地方における森林再生の施業方策としては、間伐、除伐によって林内空間をあけ、林床照度を高めることによって樹木の天然更新(風散布、動物散布等)を促進し、従来の針葉樹人工林との天然広葉樹との「針・広混交林」化をすすめることが現実的であると考えられる。今回の間伐から1年後の2020年11月には、林床には約30種の新生実生が確認された。
今後は、スギ林に混交するコナラを残存しつつ、林床に芽生え、生育しているクロモジ、ハリギリ、アオダモ、カエデ類などの有用広葉樹のモニタリングと、分布密度を調べ、それらの育成も同時に行っていく予定である。 -
森林アメニティのすすめ -私たちの健康と森林ー 連載第11回 保健休養の傾向 招待あり
上原 巌
グリーンパワー 2020年12月号 8 - 9 2020年12月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(学術雑誌) 出版者・発行元:森林文化協会
連載「森林アメニティのすすめ -私たちの健康と森林-」の最終回として、
・現在の森林のアメニティの様相と傾向
・事例研究の積み重ねの大切さ
・森林の保健休養機能の今後の方向性
の3点について報告、記述した。 -
海外の森林療法の事例 ベルギー(2) <連載>森林と健康 -森林浴、森林療法のいま- 第22回 招待あり
上原 巌
森林レクリエーション 403 8 - 13 2020年12月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(学術雑誌) 出版者・発行元:全国森林レクリエーション協会
ベルギーにおける森林療法の現地事例として、
①ソワーニュの森
②ゲント大学演習林
③NGO団体による実践事例
の3つについてを中心に報告した。 -
海外の森林療法の事例 ベルギー(1) <連載>森林と健康 -森林浴、森林療法のいまー 第21回 招待あり
上原 巌
森林レクリエーション 402 4 - 8 2020年11月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(学術雑誌) 出版者・発行元:全国森林レクリエーション協会
ベルギーにおける森林療法の事例について、下記のとおり報告した。
1.市民の森と保健休養(Gent市)
2.自然の要素を取り入れた地域病院(Antwarp市)
3.王室樹木園とブナとオークの森林公園(ブリュッセル市) -
森林公園の「バリアフリー」と「ユニバーサルデザイン」(2) <連載>森林と健康 -森林浴、森林療法のいま-第20回 招待あり
上原 巌
森林レクリエーション 399 8 - 12 2020年08月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(学術雑誌) 出版者・発行元:全国森林レクリエーション協会
各地の森林公園におけるバリアフリー、ユニバーサルデザインの事例として、
①神戸市立森林植物園
②愛知県立森林公園
の二つの事例を紹介した。 -
身近な自然観察 世田谷区の公園、緑地 招待あり
上原 巌
令和2年度 東京農業大学 教員免許状講習 1 1 - 10 2020年08月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:講演資料等(セミナー,チュートリアル,講習,講義他) 出版者・発行元:東京農業大学 教職課程
令和2年度の東京農業大学・教職課程主催の教員免許状更新講習会における「身近な自然観察 世田谷区の公園、緑地」のテキストである。
内容は、
1.森林の定義
2.森林の種類
3.身近な樹木の観察
4.農大構内での観察
5.世田谷区の緑地、森林
6.森林の意義
などである。 -
上原 巌
森林技術 939 26 - 29 2020年07月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(学術雑誌) 出版者・発行元:日本森林技術協会
森林療法(forest therapy)はアジア,ヨーロッパ,アメリカ,オセアニアに至るまで,いまや世界的な広がりを見せている。また,同時に,森林をはじめとした自然やそれらを活用した「セラピー」に関わりたい
という人は世界各地に見られる。これは現在の都市化社会を主体とした生活様式が抱える問題と,自然回帰志向,またそれらによる新規ビジネスの勃興の3 要素が融合した,現代社会に見られる一つの特徴であろう。
その中で本報では,ヨーロッパのベルギーにおける事例を報告した。
内容は、以下の通りである。
①ベルギーの森林と保健休養での活用
②自然の要素を取り入れた地域病院
③王立樹木園と、ブナとオークの森林公園
④大学演習林と市民の森
⑤市民による園芸療法、森林療法の実践 -
森林公園の「バリアフリー」と「ユニバーサルデザイン」(1) 招待あり
上原 巌
森林レクリエーション 398 4 - 9 2020年07月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(学術雑誌) 出版者・発行元:全国森林レクリエーション協会
はじめに、バリアフリー、およびユニバーサルデザインの定義にふれたあと、東京都立砧公園、神戸市立森林植物園の2つの事例をとりあげ、そっれぞれの森林公園における現地調査の概要を報告した。
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森林林業振興助成事業 令和元年度 成果報告書 森林を活用した障害者・高齢者の保健休養及びレクリエーションの今後の展開方向に関する実証的調査事業
上原 巌
森林林業振興助成事業 令和元年度 成果報告書 (日本森林林業振興会・全国森林レクリエーション協会・日本森林保健学会 共同) 1 1 - 57 2020年06月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:会議報告等 出版者・発行元:日本森林林業振興会
2020年度 事業報告 要旨
21世紀を迎えた今日、障害者を含むすべての人々が同等に生活し活動する社会を目指す「ノーマライゼーション:normalization」の理念に基づき、障害等の有無にかかわらず、誰もがその人格と個性を尊重し、支え合う「共生社会」の実現が求められている。
このような社会背景の中、2020年(令和2年)に身体障害者(肢体不自由(上肢・下肢および欠損、麻痺)、脳性麻痺、視覚障害、知的障害)を対象とした世界最高峰の障害者スポーツの総合競技大会であるパラリンピックが東京で開催されることとなった。1998年(平成10年)の長野パラリンピック冬季大会の際にも同様の現象がみられたが、同大会の開催を契機に一般の障害者スポーツへの関心が再び急速に高まっている。この機運を障害者全体への理解へと繋げ、さらにノーマライゼーションの普及、定着をはかっていくことも、今回の東京パラリンピックの開催趣旨、ミッションとしても重要な意義を持っている。 そして、障害者への理解がより深化したノーマライゼーション社会の実現のためには、様々な分野、機会を通じて必要な措置を講ずる努力をしていくことが重要である。
森林は、木材生産をはじめ、災害防止、水源涵養、生物多様性の保全など、様々な機能を有し、近年はその保健休養機能として、森林浴や森林療法など、人々の健康増進をはじめ、医療、福祉においてもその活用が広がり、人々の関心、ニーズも高まっている。また、近年では、トレイルラン、マウンテンバイクなど、郊外の森林環境を活用したアウトドア・スポーツも同時に人気を高めてきている。
しかしながら、前述したノーマライゼーション社会の実現のためには、障害等の有無にかかわらず、すべての人が森林を活用し、その保健休養効果やスポーツ、レクリエーションを享受できる環境・施設整備や、利用プログラム・ソフトの開発、そしてそれらをサービス・供給する体制の構築および人材面を育成することが課題である。
そこで、本事業では、わが国における障害者の森林活用の現状を調査分析するとともに、諸外国における状況と比較検討も行い、わが国における課題を抽出して、今後の展開方向をまず検討する。次に、森林の活用が障害者に及ぼす影響等を調査し、障害者が保健休養やスポーツ、レクリエーションの場として、その積極的な利用のために必要とする施設の整備や、効果的な利用プログラムを開発するとともに、その活動を支援する人材育成および体制づくりを検討する。これらの検討を通じて、障害者の森林を活用した保健休養および森林レクリエーション、スポーツの普及を図ることを目的とした。
<初年度 2020年度の内容>
1.わが国における障害者の森林活用の現状調査
わが国における障害者の森林活用の現状調査として、特に森林林公園等における障害者対応の状況の把握を行った。障害者が保健休養やレクリエーションとして森林公園等を利用するに当たっては、健常者とは異なったニーズや視点に立った施設整備や利用プログラムが必要となるため、まずはその障害者の森林活用の実態を把握することを目的に、全国の主要な31か所の森林公園(レクリエーションの森を含む)の管理者等に対してアンケート調査を実施し、障害者の利用状況、障害者に対応した施設の整備状況、障害者が利用できるプログラムの有無と内容を調査し、そのアンケート結果をふまえ、先進的な事例・モデル等を持つと思われる東京都立砧公園、神戸市立森林植物園、愛知県森林公園の3か所を選択し、現地調査を行った。
2.森林における障害者への対応の諸外国の現状調査
障害者が森林での保健休養やレクリエーション活動を行うために必要な施設整備のガイドライン等について諸外国での整備状況の文献調査を行い、その結果から、ベルギーにおける障害者の森林利用についての先進的な優良事例を収集した。
3.シンポジウムの開催
上記の1,2の調査結果を報告するシンポジウムを2020年6月2日に東京都内で開催 予定であったが、新型コロナウイルス(COVID-19)の発生・流行とその対策による緊急事態宣言発令のため、開催は中止となった。
次年度2021年度以降に開催を期したい。 -
上原 巌
森林技術 938 46 - 49 2020年06月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(学術雑誌) 出版者・発行元:日本森林技術協会
「森林療法」という言葉が,日本森林学会で1999年に提唱されてから20 年が経過した。この間,いくつもの派生語が生まれ,地域おこしビジネスへも分化し,さまざまな変遷が見られている。
森林療法のオリジナルの定義は,「森林療法とは,森林環境を利用したリハビリテーション,カウンセリング,療育,作業療法,代替療法など,森林を総合的に活用した健康増進および福祉医療のこころみ」であった(上原1999)。しかしながら,その森林療法を具体的にはどのように導入し,実践したらよいのかわからないというのが,20 年経っても各地における実情なのではないだろうか?特に,地域福祉の重要性がさらに高まっている今日,森林療法の意義と需要も高まっている。しかし,その森林療法の導入には,「特別な森林環境が必要とされるのか?」「何らかの認定が必要なのか?」と,その実施に向けて二の足を踏んでいる福祉団体,関係者が多いことが推察される。
そこで、本報告では,埼玉と福岡における「地域の山林と福祉」が融合した二つの事例を紹介した。いずれも,地域の何の変哲もない山林の活用事例である。ここであえて強調しておきたいのは,「森林療法は万人のた
めのもの」ということだ。たとえば,インドのヨガなども今や地球規模で世界中に広がったが,それは老若男女を問わず,万人が親しみ,取り組むことができたからである。もしヨガが特別のお金を必要とし,特定の権利や登録商標であったなら,かくも広がらなかったことだろう。森林療法も同様である。
現在の社会における貧富の格差をはじめ,障害,人種,性別などに左右されず,すべての人に広がり,親しまれていくことを願っている。本報の地域の山林と地域福祉が結び付いた事例は,その一端である。 -
福岡県八女市の山林での活動 <連載>森林と健康 -森林浴、森林療法のいま- 第18回
上原 巌
森林レクリエーション 397 4 - 7 2020年06月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(その他) 出版者・発行元:全国森林レクリエーション協会
福岡県八女市の山林を活用した、地域の森林関係NPOと社会福祉NPOによる協働の森林療法(作業療法)の事例について報告した。