MISC - 上原 巌
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大学における受託研究の事例 査読あり
上原 巌
森林技術 993 24 - 27 2025年11月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(学術雑誌) 出版者・発行元:日本森林技術協会
「開かれた大学」、「産官学連携」など、社会と連関した大学の研究活動は以前よりさらに推進され、加速化してきている。それは地域おこし、地域振興などをはじめ、新たな技術開発や新商品開発といった、ブレークスルーを必要とされる分野において、より活発な傾向にある。
農学系の分野においては、品種改良、収量増加や省力化によるスマート農林業、農林産物のマーケティングなど、より効率的な農林産物の生産を目的に、企業や団体が大学と社会連携をむすぶケースが多い。科学研究費においても、社会からのニーズを融合した研究が数多く見られる。
それでは、森林関係での産官学の連携はいかがだろうか?SDGを基盤とした林産物の生産、山村の再生、高層の木造建築、樹木の新たな機能の開発等があげられるだろう。
本報では、そのような社会連携活動の中で、大学の中にいわば「お助け窓口」的な受け皿を作り、社会からの相談や依頼を受け、研究をおこなっている事例を報告した。 -
<連載>森林と健康 森林浴、森林療法のいま 第36回 福岡県の地域病院における森林療法の実践ワークショップ 招待あり
上原 巌
森林レクリエーション 462 ( 1 ) 8 - 15 2025年11月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(学術雑誌) 出版者・発行元:一般社団法人 全国森林レクリエーション協会
福岡県北九州市小倉の西野病院および同病院の森林における森林療法のワークショップの実践の内容を報告した。
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上原 巌
現代林業 713 1 - 6 2025年10月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:速報,短報,研究ノート等(学術雑誌) 出版者・発行元:全国林業改良普及協会
幼少期、少年少女期の自然体験の重要性はかねてから指摘されている。ボーイスカウト、ガールスカウトも、その活動の基本は自然体験にある。自然科学系のノーベル賞の歴代授賞者でも、自然の中で遊びながら育ったという例は数多い。世界的、歴史的な科学研究の源は、自然環境、自然体験にあるのだ。では、21世紀の日本のこどもたちの自然体験は今どうなっているのだろう?今回は、関東のある小学生対象のワークショップの様子を紹介した。
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<連載>森林と健康 森林浴、森林療法のいま 第35回 福井県越前町でのワークショップ 招待あり
上原 巌
森林レクリエーション 460 ( 1 ) 4 - 10 2025年09月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 出版者・発行元:一般社団法人 全国森林レクリエーション協会
福井県で2025年3月末におこなった森林療法のワークショップの様子を報告した。
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高齢化の進む山村地域の有用植物に関する新たな活用・普及方法及び森林空間利用の調査研究 令和6年度「緑と水の森林ファンド」公募事業
竹内啓恵、杉浦嘉雄、上原 巌
高齢化の進む山村地域の有用植物に関する新たな活用・普及方法及び森林空間利用の調査研究実施報告書 令和6年度「緑と水の森林ファンド」公募事業 1 1 - 32 2025年08月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:機関テクニカルレポート,技術報告書,プレプリント等 出版者・発行元:国土緑化推進機構
【1.調査研究の目的】
本事業では、現在わが国の各地でみられる高齢化の進んだ山村地域において、山林、里山の有用植物を主な対象として、その新たな活用方法と普及方法について検討することを目的ととした。
【2.調査研究の方法】
本事業でこころみた調査研究の方法は、下記の3点である。
①山村地域における森林空間環境の把握(林分調査および植生調査など)
林分調査では、標本抽出法を用いて、地域の森林内に調査区を設定し、毎木調査(樹高、胸高直径の測定)、林分密度の算出、樹冠投影図の作成、相対照度の測定などをおこない、林床における植生調査を実施した。
②山村地域における植物資源の現状と有益な活用方法の調査、研究(薬用および食用など)
地域に伝承されている、あるいは現行されている植物利用の形態とその手法の確認。
③山村地域における植物資源にまつわる文化の確認と今後における活用促進と普及方法の検討
上記の②をふまえ、地域の文化、風土について、また今後の活用のあり方について、ワークショップを開催して、検討した。
【3.調査研究の内容】
本事業では、主に下記の2つの地域を調査対象とし、そのほか、九州・大分県国東地域の事例など も参考にした。
3-1.福井県丹生郡越前町における事例
(1)同町における森林空間の把握と有用植物の現状調査
(2)植物の有効活用の方法と今後の普及方法の検討
3-2.福島県南会津郡南会津町熨斗戸における事例
(1)同町における森林空間の把握と有用植物の現状調査
(2)植物の有効活用の方法と今後の普及方法の検討 -
<連載>森林と健康 森林浴、森林療法のいま 第34回 森林療法ボランティアの皆さんとの研修会 招待あり
上原 巌
森林レクリエーション 459 ( 1 ) 9 - 13 2025年08月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 出版者・発行元:一般社団法人 全国森林レクリエーション協会
2025年3月2日(日)、3日(月)と、福岡県八女市の山林にて、地元のNPO法人「山村塾」と全国森林レクリエーション協会のみなさまと、森林療法の研修会を実施した。これまで回を重ねる度に様々な研修会をおこなってきたが、今回は、参加者の対象を、「森林療法のボランティア」にしぼって実施した。当日の参加者は、地元の特別支援学校の先生方や社会福祉施設の職員の方々、また自然教育団体の方々などであった。
研修会の内容は、常日頃、地元の社会福祉施設(知的、発達、身体障害を抱えたみなさま)が取り組んでいる森林療法のプログラムを、先生方、職員のみなさんが体験することから始めた。まずは、スギ、ヒノキの林間に繁茂したタブノキ、ヒサカキ、アオキ、アセビなどの常緑広葉樹の低木、小径木を伐採し、それらを運搬することである。「伐る」「玉切る」「運ぶ」「束ねる」など、森林での作業は、森林療法として、対象者の能力や嗜好、適性により細分化されている。次は、森林療法を実施するにあたって、それぞれの参加者のクライエント(対象者)を連れてきたい風景、場所を探し、森林療法に用いる要素を見つけることをおこなった。最後に、各地における森林療法の事例を紹介し、散策で採集した樹木の枝葉から、芳香水の製作をおこなった。
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上原 巌
現代林業 710 1 - 6 2025年07月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:速報,短報,研究ノート等(学術雑誌) 出版者・発行元:全国林業改良普及協会
東京農業大学(農大)には総合研究所(総研)という研究の総括組織がある。この総研では、科学研究費、競争的獲得資金による研究をはじめ、様々な研究活動の統括をおこなっており、さらに市町村や企業からも、調査研究の相談を幅広く受けている。たとえば、「私どもの村の山林の材積量を調べ、今後の造林計画も立ててもらいたい」「山林の植生調査をおこなって、どのような有用広葉樹があるのかを教えてほしい」などといった要望の相談がある。農大では伝統的にこのような要望を様々な方面から受けてきたが、2024年度からはこれらの要望に応えることを「受託研究制度」として学内に位置づけ、実施をしている。
筆者のその受託研究の初年度は、静岡県富士市と埼玉県飯能市の一企業より調査研究の依頼があった。本報ではその事例を報告した。 -
上原 巌
現代林業 710 54 - 61 2025年07月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(学術雑誌) 出版者・発行元:全国林業改良普及協会
2011年3月11日に東日本大震災が発生してから12年。わが国未曽有の震災も、安倍首相の事件やジャニーズの事件などの陰になり、いまや忘却されつつあるようにもうかがえる。21世紀に発生したこの未曽有の大震災の特記事項は、その震災被害もさることながら、数日後に発生した福島第一原発の事故による放射能汚染による二重被害であった。原発事故は発生当初はレベル4と発表され、のちにレベル7、最悪の重大事故であったことが報告された。セシウム134、137などの目に見えない放射性降下物による汚染が東日本の各地に広がり、中でも事故発生時の風向きにもよって、福島県浜通り地方でその汚染度が高いことが報告された。2023年の現在であっても、山菜・きのこの採集ができない地域もあり、農家、林家のみならず、住民の不安もそのままである。
そこで、筆者の勤務する東京農業大学では、2011年当年より、「東日本支援プロジェクト」に取り組み、森林担当の筆者は、とりわけ森林の放射性物質の濃度が高いとされている南相馬市の山林を中心に、その汚染状況を調べ、森林再生の方策を探ってきたところである。
本論では、その取り組みの様子を報告した。 -
身近な森でおこなう森林療法 ~森と人の健康を取り戻す~ 招待あり 査読あり
上原 巌
身近な森でおこなう森林療法 ~森と人の健康を取り戻す~ 1 ( 1 ) 2 - 106 2025年06月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:機関テクニカルレポート,技術報告書,プレプリント等 出版者・発行元:一般社団法人 全国森林レクリエーション協会
第一章 地域の森林環境を活用した保健休養事業が低迷・停滞するのはなぜか?
第二章 森と健康
第三章 身近な森を活用した森林療法
第四章 地域における森林療法の導入事例
第五章 対象者別の実施事例 -
森林と健康 招待あり
上原 巌
杣径 77 10 - 19 2025年06月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(学術雑誌) 出版者・発行元:日本林業経営者協会
私たち人間が自らの健康に不安を抱く一方で、日本の森林もまた、病んでいる林地が各地にみられる。松枯れやナラ枯れなどをはじめ、全国各地で増える一方の放置林と、そこで発生する土砂災害や山火事など、森林そのものも多くの問題や病いを抱えている。かつて里山として存在していた地域の森林にも人が入らなくなり、身近な存在だったはずの森林は遠くなり、森林の健康などに注意を払わなくなっている。当の森林にとっては、「これまで何十年も放っておいて、今度はまた何事だ?癒し?セラピー?まったく何を言っているんだか」と感じているかも知れない。
本論では、私たち人間も、また私たちのまわりの森林も、健やかな生命のあり方を共にめざしていくという方向性、可能性を考察した。 -
<連載>森林と健康 森林浴、森林療法のいま 第33回 九州の山林での森福連携ワークショップ 招待あり
上原 巌
森林レクリエーション 457 ( 1 ) 8 - 12 2025年06月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 出版者・発行元:一般社団法人 全国森林レクリエーション協会
森林の再生のこころみは市民レベルで始まることが多い。本事例は、福岡県八女市の山林でおこなったワークショップである。2024年2月下旬に引き続き、5月下旬にも再度おこなったワークショップであり、今回も柳川市の社会福祉法人「宝箱」の利用者、職員と、八女市のNPO法人「山村塾」の職員およびボランティアの方々のご参加によって開催された。
※日本森林林業振興会の研究助成を受けた。 -
書評 井上真理子,杉浦克明編「自然とともに生きる 森林教育学」 査読あり
上原 巌
日本森林学会誌 107 ( 5 ) 134 - 134 2025年05月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:書評論文,書評,文献紹介等 出版者・発行元:日本森林学会
本書は森林教育を体系化し、初の森林教育学の教科書として編まれた一冊である。森林教育の内容として、本書では地域文化、自然環境、森林資源、ふれあいの四つの要素があげられ、それぞれの要素について、幅広い視点、領域からのアプローチ、様々な事例、様々なプログラムが紹介されている。
構成は2部からなっており、第Ⅰ部は森林教育の広がりについて。森林教育の定義、概要に始まり、その種類、そして専門教育や技術者、指導者の育成や実践事例について報告がされている。「環境教育」「野外教育」などの言葉とも対置、比較をしながら、論が進められ、小学校などの義務教育から高校教育、大学教育など、それぞれにおける森林教育が丁寧に整理されている。その中でも、ドイツにおける森林教育に関する認証制度や、特別支援教育における森林教育は興味深い。森林教育はもはや一つの媒体、体系であるがゆえに、国や対象が変わっても、その形を柔軟に変容していく様子がうかがえる。
第Ⅱ部は森林教育の実践。今度は森林教育の実践そのものに目を向け、実態調査や参加者の意識などについて調査をおこなうことによって、森林教育のもたらす効果と課題を提示している。 -
上原 巌
現代林業 704 1 - 6 2025年01月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:速報,短報,研究ノート等(学術雑誌) 出版者・発行元:全国林業改良普及協会
森林の再生のこころみは市民レベルで始まることも多い。本報では、九州の山林でおこなった森福連携のワークショップの様子を報告した。ワークショップの内容は、ヒノキ林で間伐された丸太の搬出作業である。ごくありふれた山林での作業が福祉と融合すると作業療法やリハビリテーションになり、さらには福祉サービスにもつながる事例といえる。
ワークショップがおこなわれたのは、福岡県八女市の70年生のヒノキ林である。地元の森林を管理するNPOの山村塾と柳川市の社会福祉NPO法人「宝箱」との協働でおこなわれた。同地における協働活動はすでに数年間にわたって行われている。間伐作業や除伐作業をおこない、用材として使われない劣勢木などは玉切りし、軽トラックに積み込む。これらの一連の流れが、発達障害を抱えている各施設利用者の作業療法やリハビリテーションになる。また、搬出された丸太や枝葉は、福祉施設の薪ボイラーに供され、施設の給湯や暖房、入浴介助サービスなどにいる。いわば森林の福祉利用が、地域の森林と複業種の人材によっておこなわれている。
ワークショップの翌日は、八女市の同じ林地にて、山村塾、宝箱の両職員を対象としてのワークショップをおこなった。内容は、森林カウンセリングと森林整備についてである。森林カウンセリングでは、「心地よい場所」「好きなもの」を探したり、最近の良かったこと、悪かったことなどを自己開示しあったりした。森林作業では、放置され、雑然とした林地の整備手法について、実地にプロットを設けての研修をおこなった。両方のワークショップを行ううちにいつしか参加者には共感性が生まれた。
「森林の癒し」は、特別な森でなくとも、どこでも可能である。大上段に振りかぶらず、ごく小面積の等身大の大きさからすすめ、体感されていくことが肝要である。 -
上原 巌
東京農大 東日本支援プロジェクト 2024年度 成果報告書 1 ( 1 ) 8 - 9 2025年01月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:速報,短報,研究ノート等(大学,研究機関紀要) 出版者・発行元:東京農業大学
1.はじめに 相馬地方の放置林での間伐による植生再生
東京農業大学・東日本支援プロジェクトでは、2019年から相馬地方森林組合に作業委託をし、各地の私有林において間伐を実施してきた。2019年10月は相馬市今田地区のスギ林(36年生:立木密度3000本/ha、平均樹高11m、平均DBH 20㎝)、2020年12月には南相馬市原町区のヒノキ林(32年生:立木密度3500本/ha、平均樹高12m、平均DBH 15㎝)、2021年12月には相馬市玉野地区のコナラ、クリ等を主林木とする広葉樹二次林(立木密度3500本/ha、平均樹高17m、平均DBH 25㎝)、2022年12月には南相馬市小高区のヒノキ若齢林(約20年生:立木密度2000本/ha、平均樹高8m、平均DBH 14cm)において、それぞれ50%の強度間伐を行った。それらの間伐の結果、各林分の相対照度が向上し、新生の樹木の実生が確認された。そこで、本年度は、そのすべての間伐地における植生調査をおこなった。
2.方法
各林分において、間伐半年後に再度相対照度の測定をおこない、間伐前後の比較をおこなった。ただし、相馬市玉野地区の広葉樹二次林においては相対照度の測定は実施しなかった。2024年6~10月に、それぞれの林分において、10m×10m(1a)の調査区を4か所ずつ設け、林床の植生調査を実施し、実生の樹種、樹高、林床被覆度を調べた。
3.結果と考察
①間伐前後の相対照度の変化
いずれの調査区においても本数間伐率で50%の間伐を実施したが、各林分で相対照度の向上にはばらつきがみられた。32年生のヒノキ林では間伐後の相対照度は20%未満にとどまり、20年生のヒノキ林では、大きな向上が認められた。
これらのことから、やはり早期における間伐の実施が望まれることが示された。
②林床植生の変化
36年生のスギ林では31樹種の実生が確認され、32年生のヒノキ林では47樹種、20年生のヒノキ林では41樹種、広葉樹二次林では52樹種の実生がそれぞれ確認された。いずれの林分においても、コシアブラ、ヤマウルシなどのパイオニア種、陽樹が共通して多かった。このことから、間伐後の各林地においては遷移の初期段階にあることがうかがえる。また、各林分とも、鳥散布または風散布の樹種が多いことが特徴的であった。バラ科やカエデ類、つる性木本植物の実生も数多く確認された。林床の植生被覆度としては、スギ、ヒノキ林では低く、広葉樹二次林では高かった。しかしながら、いずれの林分においても実生の上長成長は1m以下のものがほとんどであった。
これらの結果から、スギ、ヒノキ林では、今なお林冠欝閉による低照度の影響が考えられ、さらなる追加間伐が必要であると思われる。とりわけヒノキ林の場合は、日光を遮る独特の樹冠が形成されるため、単純な本数による間伐率よりも、実際の林冠、樹冠の適正な配置による密度コントロールの方が重要である。当面は、この間伐の実施によって、林冠および林間の空間を開け、風散布、鳥散布などを、また埋土種子の発芽を同時に促していくことが得策であると考える。
植生的には、クリ、コナラ、ミズナラなどのブナ科をはじめ、ホオノキ、コブシ、カエデ類などの有用広葉樹が数多くみられた。また、貴重種のメグスリノキやクロモジなどの薬木もみられ、珍しい樹種では、おそらくタヌキによる種子散布と思われるゴールデンキウイも確認された。
今後は林床に発現したこれらの実生の育成をおこない、針広混交林の造成とともに、林床植生の有効活用をはかることが当面の課題である。
※本年度は、これまでの4回の間伐の実施後、林地に放置されている間伐丸太を、地元福島の小学校での木工作の教材に有効活用する企画を予定していた。しかしながら、あらためてそれらの放置丸太(n=20)の放射性セシウムを分析したところ、1500ベクレル前後の数値が検出され(2024年9月)、本企画は断念することとなった。数年後には、これらの間伐丸太の有効活用もぜひ実現をしていきたい。 -
「森福連携」の萌芽 査読あり
上原 巌
森林技術 991 24 - 28 2024年11月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(学術雑誌) 出版者・発行元:日本森林技術協会
農業と福祉の連携、協働を指す言葉として、「農福連携」という言葉がある。高齢者施設や障害者施設の方々が農地に出かけて、野菜や草花を育てる。そんな風景がその代表例である。農福連携は、就労支援や収益にも寄与している。農業と福祉は親和性が高く、その歴史も長い。その基盤には、植物と人間の親和性、相性の良さがある。
それでは、林業と福祉の「林福連携」はどうだろうか?あらためて言うまでもなく、林業は極めて危険度の高い作業をともない、高度な技術体系を要する営みである。その技術には一生をかけて練度を高めていく必要があり、福祉関係者のみならず、一般の方にとってもハードルが高い世界である。しかしながら、部分的には関与できるレベルのものもある。例えば、丸太の剥皮や種子採集、シイタケづくりなどの作業は幼児から高齢者まで取り組むことができる。また、森林にはもとより保健休養や風致の効果、作用がある。その景観をはじめ、芳香や山菜など様々なアメニティも有する。林業と福祉の連携では敷居が高いものの、森林と福祉の連携、「森福連携」であれば、意外に実行可能なことは多い。
そこで、本報では、この森林と福祉の融合、地域の森林を活用した福祉との協働についての各地における事例を報告し、今後の可能性を論じた。 -
上原 巌
現代林業 700 1 - 6 2024年09月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:速報,短報,研究ノート等(学術雑誌) 出版者・発行元:全国林業改良普及協会
全国各地でナラ枯れ(カシノナガキクイムシによる糸状菌の伝播)の被害拡大が報告されている。被害木の対策としては、伐倒して林外へ搬出、焼却することが現在でも最善策であるとされている。しかし、その材の利用法についてはまだ報告例が少ない。そこで今回は、その被害木の有効活用として、チップ化、堆肥利用をしている横浜市の取り組みの事例を報告した。
全国でナラ枯れが広がり、コナラをはじめ、シラカシやマテバシイ、スダジイなど、ブナ科の樹木の枯死被害が各地でみられている。過去にもナラ枯れが発生した例はみられていたものの、その際には薪として利用していたことでその拡大が防げていたのではと推察される。被害木の利用としては、健全な部位のカスケード利用などもすでに着手されている。しかしながら、カスケード利用されない被害木や端材などにはどのような利用方法があるだろうか?
本事例は、横浜市内の街路樹の被害木や剪定枝が集まる、同市緑区にある「緑のリサイクルプラント」(横浜市グリーン事業協同組合)のこころみである。横浜市では、市内の街路樹、公園樹などの枯死木、風倒木、被害木、剪定枝、伐根などを集め、チップ化、堆肥化するこころみを20年以上前よりおこなってきた。そこで、このプラントにおいては、従来の手法を継承し、2020年度より、市内のナラ枯れ被害木も有効活用して、チップ化、堆肥化を進めている。
コナラ、シラカシなどのブナ科のナラ枯れ被害木は搬入ののち、その小割り作業から始まり、細断・チップ化、発酵という工程が踏まれ、60~70℃の温度で4か月間かけて発酵し、堆肥にされている。費用対効果としては、1トンのナラ枯れ被害木から、処理費用を差し引き、生チップにした場合は17,450円の収益、堆肥にした場合は18,780円の収益が試算されている。
ナラ枯れ被害木においては、カスケード利用できることが好ましいが、チップ化、堆肥化も資源の循環上、有効な一つの選択肢であり、活用方法である。さらにチップは一定量があれば、パーティクルボードなどにも利用できる。
ナラ枯れは現在においてもパンデミック的な流行を見せているが、基本的な対処は、常日頃から適切に立木を伐り、利用することだ。そんな基本的なこともナラ枯れ被害木の利用をしていて再認識するところである。 -
<連載>森林と健康 森林浴、森林療法のいま 第32回 福祉団体および小学生との森林療法のワークショップ 招待あり
上原 巌
森林レクリエーション 448 4 - 11 2024年09月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(学術雑誌) 出版者・発行元:全国森林レクリエーション協会
コロナ禍も落ち着きを見せ、日常の生活も元通りのローテーションで動くようになってきた。森林においても以前のように人々の姿が見られるようになり、森林浴、森林療法もまた通常運転に戻ってきている。「いまはコロナだから」と言って避けられてきたワークショップや研修会なども再開されている。
本報では、関東地方の私有林にて、森林作業を中心としたワークショップを東京都内の社会福祉の団体(就労支援)がおこなった事例(本誌2020年5月号 No.396の続編である)と、小学校の特別支援学級の生徒さんが近隣の森林公園に出かけた事例を報告した。 -
<連載>森林と健康 森林浴、森林療法のいま 第31回 九州の山林での「森福連携」 招待あり
上原 巌
森林レクリエーション 447 4 - 9 2024年08月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:記事・総説・解説・論説等(学術雑誌) 出版者・発行元:全国森林レクリエーション協会
森林環境には保健休養や風致の効果、作用があり、林内には景観をはじめ、芳香や山菜など様々なアメニティがある。
森林・林業と福祉の連携、協働、融合は敷居が高い印象があるけれども、案外身近でできることなのではないだろうか。
本報では、福岡県八女市の山林における「森福連携」の事例を紹介した。 -
障がい者・高齢者の保健休養活動及びレクリエーションによる 森林空間利用促進事業 令和5年度 森林林業振興助成事業成果報告書
木下喜博、古賀和子、高山範理、上原 巌
障がい者・高齢者の保健休養活動及びレクリエーションによる 森林空間利用促進事業 令和5年度 森林林業振興助成事業成果報告書 1 37 - 64 2024年06月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:機関テクニカルレポート,技術報告書,プレプリント等 出版者・発行元:一般社団法人 全国森林レクリエーション協会
障がい者や身体的機能の低下がみられる高齢者が森林空間において保健休養活動やレクリエーションを実施する場合、プログラム実行の担い手となる人材が不可欠である。そこで本年度の事業では、障がい者や高齢者についての理解のあるプログラム実行の担い手を養成することも目的とした。対象は、医療、福祉、介護、学校教育関係者のように、日常的に介助等で障がい者や高齢者に接している専門家およびボランティアである。高齢者、障がい者の森林空間を利用した保健休養活動を実施するワークショップを、西日本と東日本の双方で5回開催し、人材育成を行った。
(1)福岡県八女市黒木町でのワークショップ①(令和6年2月実施)
地元のNPO法人山村塾が柳川市の社会福祉法人宝箱からの依頼を受け森林療法の実践に取り組んでいる。ヒノキ林における作業療法として、林床の整備活動を実施した。除伐作業後、刈り取られた常緑の案木は80㎝の長さに切りそろえ束ね、軽トラックの荷台に積み込まれ、福祉施設の薪ボイラーで燃焼され、暖房等に利用される。森林療法を含め、森林の福祉サービスの一環であるともいえ、「森福連携」ともいえる。
(2)福岡県八女市黒木町のワークショップ②(令和6年5月実施)
再度、福岡県八女市の山林において、柳川市の社会福祉法人宝箱の利用者及び職員、山村塾の職員、ボランティアが参加してワークショップを実施した。70年生のヒノキ林において、間伐された丸太の搬出作業を実施した。
(3)福岡県八女市黒木町のワークショップ③(令和6年5月実施)
翌日、山村塾及び宝箱の両職員を対象として森林カウンセリングと森林作業のワークショップを開催した。
(4)埼玉県飯能市での福祉団体との森林療法ワークショップ
都区内の社会福祉法人の利用者を森林療法の対象者として、NPO法人MORI MORIネットワークの皆様とワークショップを実施した。ワークショップでは被害木の間伐を行った。伐り出したスギ丸太からはコースター作りを行った。また、枝葉からは芳香水を制作した。今回は、ミカン科のコクサギの葉から抽出したアロマウォーターが最も好評であった。森林で一日過ごした参加者は普段の施設では見られないほど穏やかな表情をされた方が多く見られた。
(5)小学校の児童との森林療法ワークショップ
特別支援学級に通い、発達障害などを抱えている子どもたちと、小学校の近くにある森林のある公園でワークショップを開催した。樹皮を触って樹種ごとの違いを感じてみる、ドングリの実を探す、大地に寝そべって樹冠を眺める、木陰でお茶を飲むんどの体験した。担任の先生方からの話を事後に聴くと、普段見られない姿が見られ、驚いたとのことであった。 -
上原 巌
現代林業 697 1 - 6 2024年06月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:速報,短報,研究ノート等(学術雑誌) 出版者・発行元:全国林業改良普及協会
「里山」「雑木林」というと、地域林、田舎のイメージがある。しかしながら、都市部の住宅街の中でもその名残りは見られるところがある。本報では人口92万人を抱える世田谷区の住宅街に残る里山、御料林での市民体験会の様子を報告した
成城三丁目緑地
東京は閑静な住宅街の成城の地に、かつての里山の名残りがある。「成城三丁目緑地」の名称で、現在は地元の世田谷トラストが管理をしている樹林がその例である。30㎞以上に連なる国分寺崖線の一角に位置し、古代の多摩川が削った段丘地形となっている。段丘からはところどころに湧水も見られ、石器時代、縄文時代の遺跡も発掘されている。瀟洒な成城の地は、有史以前より、人々が暮らす場であったのだ。
その成城三丁目緑地で、世田谷区主催の里山散策&森林療法の体験会が開催された。定員は30名。抽選でほぼ同数の方が落選した。里山は都市部の方々に人気があることがうかがえる。この地は、かつては皇室の御料林であり、戦後は林野庁が管理する林地でもあった。コナラ、クヌギ、クリなどの高木とヒノキ、アカマツ、そしてテーダマツなどの高木がそれを物語っている。また、当地は、世田谷区内では2番目の湧水量があり、サワガニ、オケラをはじめ、豊かな生物相がみられる。
しかしながら、その参加者のほとんどが、今回初めてこの緑地に入ったとのことであった。「いつも眺めてはいても、入ったことがない」との意見が大半を占め、この言葉は、そのまま今の私たち日本人の言葉そのものであるのかも知れない。森林は身近にあっても遠い存在になってしまっているのである。けれどもまた、その初体験の方々も、「こんなにいい場所が身近にあったことを全く知らなかった」「初めてなのに、懐かしい」などの感想を口にする。つまり、いまどきの市民と森林の関係には、相互を近づける何らかのきっかけが必要なのである。そして、このことは林業についても同様である。これからも森林と市民がより良い形で近づいていく方策も模索していきたい。