講演・口頭発表等 - 田中 尚人
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保存乳酸菌株の再整理
田中 尚人、菅原 秀明、岡田 早苗
日本農芸化学会2008年度大会 2008年03月
開催年月日: 2008年03月
記述言語:日本語 会議種別:口頭発表(一般)
開催地:名城大学
東京農業大学菌株保存室では、長年にわたり発酵食品などから約 4,000 株の植物性乳酸菌株を独自に分離・保存し、さらに各株の約60項目の表現性状データにより同定してきた。これらの分離株の一部はすでに産業的に利用されているように、微生物資源として高いポテンシャルが期待される。本研究では 16S rRNA 遺伝子配列のデータを加えた解析により、乳酸菌分離株を再整理することにした。 分離株の 16S rRNA 遺伝子配列は定法により決定、blast program により相同解析した。約 2,400 株の16S rRNA 遺伝子配列解析の結果、7 割の株は表現性状に基づく同定と属レベルで一致した。配列解析をした分離株は 13属からなり、Lactobacilus 属が一番多く 5 割を占めていた。本属で最も多かった系統群は L.plantarum group であった。本発表では各属の分離株の、生育温度や pH, 炭素源の資化能などの表現性状データによる種同定と種内多様性などについても報告する。
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Weissella cibaria の過酸化水素生成機構 (第2報)
佐藤 匠,鈴木 毅人,川崎 信治,新村 洋一,遠藤 明仁,田中 尚人,佐藤 英一,内村 泰,岡田 早苗
2008年度日本農芸化学会年次大会 2008年03月
開催年月日: 2008年03月
記述言語:日本語 会議種別:口頭発表(一般)
開催地:名城大学
乳酸菌 Weissella cibaria が好気条件下かつ酢酸ナトリウム存在下で過酸化水素を産生する機構について報告した。その原因は過酸化水素発生型の NADH オキシダーゼであることを酵素学的に明らかにした。この酵素の発見は乳酸菌では初めてであり、これまでにない乳酸菌の酸素適応の機構解明の手がかりとなりうる。
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緩慢乳酸菌の選択的分離法の確立
入澤 友啓,遠藤 明仁,田中 尚人,岡田 早苗
2008年度日本農芸化学会年次大会 2008年03月
開催年月日: 2008年03月
記述言語:日本語 会議種別:口頭発表(一般)
開催地:名城大学
生育緩慢な乳酸菌を複合型から分離することは、寒天培地上での生育の早い微生物の生育領域占領すなわちコロニー形成により困難である。そのため、生育の早い微生物を抑制するため、活性の高い状態で効果の高い抗生物質を培地に添加することで、緩慢に生育する乳酸菌のみコロニーを形成しやすい状態にするための培地条件を検討し、緩慢に乳酸菌を分離する方法を確立した。
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乳酸菌株の変異原物質吸着の定量的解析による吸着能の評価
畠山 誉史,田中 尚人,佐藤 英一,内村 泰,岡田 早苗
2008年度日本農芸化学会年次大会 2008年03月
開催年月日: 2008年03月
記述言語:日本語 会議種別:口頭発表(一般)
開催地:名城大学
植物質発酵食品から分離された乳酸菌(Lactobacillus plantarum SNJ81, Lb。 fermentum SNA41, Lb。 parabuchneri SNC91, Lb。 delbrueckii SNK64, and Leuconostoc mesenteroides sub sp. mesenteroides 10D-2)の食品由来の変異原物質における吸着能を検証した。食品由来の変異原物質は肉や魚のこげなどから検出されるヘテロサイクリックアミン(2-amino-1-methyl-6-phenylimidazo [4,5-b] pyridine (PhIP), 2-amino-3,8-dimethylimidazo [4,5-f] quinoxaline (MeIQx), 2-amino-9H-pyrydo [2,3-b] indole (AαC),3-amino-1,4-dimethyl-5H-pyrido [4,3-b] indole (Trp-P-1) and 2-amino-3,4-dimethylimidazo [4,5-f] quinoline(MeIQ))を用いた。乳酸菌のヘテロサイクリックアミン吸着能は様々であった。使用したヘテロサイクリックアミンの中で、Trp-P-1 が最も高く吸着された。そして死菌体に同等の吸着能を有しており、さらには人工消化液存在下でも吸着能を有していた。乳酸菌の変異原物質吸着に関する研究のほとんどは乳由来の乳酸菌を用いた報告である。本研究では、新規分離原として植物質発酵食品であるすんきに着目し、これまで検証されて来なかった植物質由来の乳酸菌を用いて高い変異原物質吸着能を有することが明らかとなった。
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G-InforBIO: An integrated suite for genomics (統合ゲノム解析ツール G-InforBIO) 国際会議
Naoto Tanaka, Talkashi Abe, Satoru Miyazaki, Hideaki Sugawara
20th IUBMB International Congress of Biochemistry and Molecular Biology and 11th FAOBMB Congress 2006年06月
開催年月日: 2006年06月
記述言語:英語 会議種別:ポスター発表
開催地:京都
数多くの原核生物および真核生物のゲノム情報は国際塩基配列データベース (INSD, DDBJ/EMBL/GenBank) から公開され簡単に入手できる。このゲノム情報を手がかりに生物学的研究を進めていくためには、容易にゲノム情報を扱える環境を整えることが必要である。我々が開発した G-InforBIO は INSD から公開されているゲノム情報を中心に端末のパソコン上で効率的に統合・解析できるツールであり、フリーソフトウェアとして提供されている (http://www。wdcm。org/)。本ツールの主な機能は、アノテーション情報の編集、配列データの相同性解析とクラスタ解析である。解析プログラムは現在 9 種類搭載されている。これらの機能を利用することで、近縁種間の比較ゲノム解析やゲノムを対象とした遺伝子単位などの配列断片の網羅的解析など、ゲノム情報を活用することが可能である。昨年度の本大会ではG-InforBIO を利用した原核生物ゲノムの比較解析について発表した
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比較ゲノム解析ツール「G-InforBIO」
田中 尚人,阿部 貴志,宮崎 智,菅原 秀明
第8回ワークショップ「微生物ゲノム研究のフロンティア」 2006年03月
開催年月日: 2006年03月
記述言語:日本語 会議種別:ポスター発表
開催地:かずさアカデミアホール
数多くの原核生物および真核生物のゲノム情報は国際塩基配列データベース (INSD, DDBJ/EMBL/GenBank) から公開され簡単に入手できる。このゲノム情報を手がかりに生物学的研究を進めていくためには、容易にゲノム情報を扱える環境を整えることが必要である。我々が開発した G-InforBIO は INSD から公開されているゲノム情報を中心に端末のパソコン上で効率的に統合・解析できるツールであり、フリーソフトウェアとして提供されている (http://www。wdcm。org/)。本ツールの主な機能は、アノテーション情報の編集、配列データの相同性解析とクラスタ解析である。解析プログラムは現在 9 種類搭載されている。これらの機能を利用することで、近縁種間の比較ゲノム解析やゲノムを対象とした遺伝子単位などの配列断片の網羅的解析など、ゲノム情報を活用することが可能である。昨年度の本大会ではG-InforBIO を利用した原核生物と真核生物ゲノムの比較解析について発表した
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ゲノム情報活用ツール「G-InforBIO」
田中 尚人、阿部 貴志、宮崎 智、菅原 秀明
第28階日本分子生物学会 2005年12月
開催年月日: 2005年12月
記述言語:日本語 会議種別:ポスター発表
開催地:ヤフードーム
数多くの原核生物および真核生物のゲノム情報は国際塩基配列データベース (INSD, DDBJ/EMBL/GenBank) から公開され簡単に入手できる。このゲノム情報を手がかりに生物学的研究を進めていくためには、容易にゲノム情報を扱える環境を整えることが必要である。我々が開発した G-InforBIO は INSD から公開されているゲノム情報を中心に端末のパソコン上で効率的に統合・解析できるツールであり、フリーソフトウェアとして提供されている (http://www。wdcm。org/)。本ツールの主な機能は、アノテーション情報の編集、配列データの相同性解析とクラスタ解析である。解析プログラムは現在 9 種類搭載されている。これらの機能を利用することで、近縁種間の比較ゲノム解析やゲノムを対象とした遺伝子単位などの配列断片の網羅的解析など、ゲノム情報を活用することが可能である。昨年度の本大会ではG-InforBIO を利用した原核生物ゲノムの比較解析について発表した
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G-InforBIO: Integrated system for comparative genome analysis (比較ゲノム解析ツール G-InforBIO) 国際会議
Naoto Tanaka, Satoru Miyazaki, Hideaki Sugawara
The 13th International conference, The International Society for Computational Biology 2005年06月
開催年月日: 2005年06月
記述言語:英語 会議種別:ポスター発表
開催地:デトロイト
近年、細菌ゲノムを中心とした配列データおよびアノテーション情報が国際塩基配列データベース (INSD) を介して大量に公開されるようになってきた。ゲノム情報が蓄積されるにつれ、近縁種との比較解析がゲノム研究の主力となることは間違いないが、現在はそのための支援ツールの開発があまり進んでいない。そこで我々は、INSD に公開されているゲノム情報を利用した比較解析を可能としたツール「G-InforBIO」を開発した。このツールは以下の機能が備わっている。1, Feature View:ゲノム上の遺伝子配列情報(シンテニー)をグラフィカルに表示2, Alignment View: Megablast による 2 ゲノム間の相同性検索およびその結果をグラフィカルに表示3, VS Genome:ゲノムを subject とした核酸およびアミノ酸配列の blast 相同性検索4, Blastclust: Blastclust (blast score-based single-linkage clustering) による核酸およびアミノ酸配列のクラスタリング解析5, ClustalW:核酸およびアミノ酸配列の系統解析6, ゲノム情報の管理・編集G-InforBIO ではタブ区切りのテキストファイルからもデータが読み込めるのでオリジナルのゲノムデータを公開データと比較して解析することも可能である。ポスターセッションでは実データによる解析とその考察について議論したい。G-InforBIO は WFCC-MIRCEN World Data Centre for Microorganisms のサイト (http://www/wdcm。org/) からダウンロードできる。
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Effects of zinc accumulation on antibiotic resistance of Stenotrophomonas maltophilia (亜鉛による Stenotrophomonas maltophilia の薬剤耐性への影響) 国際会議
Naoto Tanaka, Satoru Miyazaki, Hideaki Sugawara
105th General Meeting, American Society of Microbiology 2005年06月
開催年月日: 2005年06月
記述言語:英語 会議種別:ポスター発表
開催地:アトランタ
Stenotrophomonas maltophilia は自然環境や臨床に幅広く生息している。 臨床株では幅広いスペクトラムの β-lactam 系抗生物質の耐性細菌として報告があり, 本細菌特有の β-lactamase (L1:亜鉛型, L2:セリン型) がその耐性に関与している。 また, 我々は以前に S. maltophilia が細胞内に亜鉛を顆粒状に吸蔵することを見出した。そこで, 環境および臨床由来の S. maltophilia 株の, 特に亜鉛依存性 L1 型 β-lactamase に注目し, 薬剤耐性と亜鉛吸蔵との関連について検討した。 供試菌株には環境由来 3 株,臨床由来 3 株を使用した。 環境株 1 株 (IAM 12672) を除き, 5 株は 5 mM 以上の亜鉛に対して耐性を示し, 定常期には乾燥菌体 1 mg あたり約 10 μg の亜鉛を顆粒状に吸蔵することを ICP 発光分光分析および EDS 付透過型電子顕微鏡で確認した。 次に, ディスク拡散法により供試菌株の 6 種類の抗生物質に対する耐性を検討した。 その結果, 臨床株は多くの薬剤に強い耐性を示し, 逆に環境株は多くに感受性を示した。 しかし環境株のうち 2 株は, 亜鉛を吸蔵させると L1 型 β-lactamase の好適基質であるカルバペネム系に対して耐性を示すようになった。 そこで, 環境株の本酵素の活性をカルバペネム系のメロペネムの分解測定により検討したところ, 3 株とも本酵素の活性があり, IAM 12672 株は反応液に亜鉛を加えることで大幅に活性が上昇した。 したがって, 亜鉛の蓄積能を持つ 2 株は細胞内亜鉛濃度が L1 型 β-lactamase 活性に十分となり耐性を示すが, 蓄積能のない IAM 12672 株は潜在的に耐性機能がありながら, 細胞内亜鉛濃度が不十分であるため感受性を示すと考えられた。 よって, S. maltophilia の亜鉛の吸蔵は L1 型 β-lactamase 活性に効果的であると考えられた。
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Stenotrophomonas maltophilia のβ-ラクタマーゼ活性について
田中 尚人,宮崎 智,菅原 秀明
日本微生物資源学会第12回大会 2005年06月
開催年月日: 2005年06月
記述言語:日本語 会議種別:ポスター発表
開催地:かずさアーク
Stenotrophomonas maltophilia は自然環境や臨床に幅広く生息している。 臨床株では幅広いスペクトラムの β-lactam 系抗生物質の耐性細菌として報告があり, 本細菌特有の β-lactamase (L1:亜鉛型, L2:セリン型) がその耐性に関与している。 また, 我々は以前に S. maltophilia が細胞内に亜鉛を顆粒状に吸蔵することを見出した。そこで, 環境および臨床由来の S. maltophilia 株の, 特に亜鉛依存性 L1 型 β-lactamase に注目し, 薬剤耐性と亜鉛吸蔵との関連について検討した。 供試菌株には環境由来 3 株,臨床由来 3 株を使用した。 環境株 1 株 (IAM 12672) を除き, 5 株は 5 mM 以上の亜鉛に対して耐性を示し, 定常期には乾燥菌体 1 mg あたり約 10 μg の亜鉛を顆粒状に吸蔵することを ICP 発光分光分析および EDS 付透過型電子顕微鏡で確認した。 次に, ディスク拡散法により供試菌株の 6 種類の抗生物質に対する耐性を検討した。 その結果, 臨床株は多くの薬剤に強い耐性を示し, 逆に環境株は多くに感受性を示した。 しかし環境株のうち 2 株は, 亜鉛を吸蔵させると L1 型 β-lactamase の好適基質であるカルバペネム系に対して耐性を示すようになった。 そこで, 環境株の本酵素の活性をカルバペネム系のメロペネムの分解測定により検討したところ, 3 株とも本酵素の活性があり, IAM 12672 株は反応液に亜鉛を加えることで大幅に活性が上昇した。 したがって, 亜鉛の蓄積能を持つ 2 株は細胞内亜鉛濃度が L1 型 β-lactamase 活性に十分となり耐性を示すが, 蓄積能のない IAM 12672 株は潜在的に耐性機能がありながら, 細胞内亜鉛濃度が不十分であるため感受性を示すと考えられた。 よって, S. maltophilia の亜鉛の吸蔵は L1 型 β-lactamase 活性に効果的であると考えられた。
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国際塩基配列データベース登録微生物 ORF の統一的再評価
田中 尚人,宮崎 智,菅原 秀明
第24回日本微生物系統分類研究会 2004年11月
開催年月日: 2004年11月
記述言語:日本語 会議種別:口頭発表(一般)
開催地:ヤクルト研修センター
国際塩基配列データベース INSD に登録されているゲノム情報の評価とアノテーション手法の開発について報告した。Glimmer2と RBSfinder により予測された全 CDS (例外的 CDS 2017 件含む) は 858,653 件 であり、登録データの 367,218 件 の約 2.3 倍であった。予測 CDS のうち、アミノ酸配列の相同性解析の結果、既知の配列とモチーフに対して相同性の高いたんぱく質をコードしていると考えられる CDS は 299,433 件で、うち 291,217 件 が登録データと一致し、本解析で新規 CDS と推定されたのは 8,216 件あった。一方、既知の配列と比較しても検出されにくい種特異 CDS の可能性がある予測 CDS は 80,280 件であった。予測 CDS のうち、残り 478,940 件はオーバーラップなどの解析結果から疑わしい CDS と判断し棄却した。したがって、上記の 299,433 件と 80,280 件を合わせた 379,713 件を確定 CDS とした。確定 CDS の中で新規 CDS に着目し、比較解析による検証を行い、ホモロジーやシンテニーの面からも十分存在が認められる結果を得た。以上の結果から、本研究のプロトコルはゲノム解析に適したものであると考えられ、ゲノムデータについては統一した条件下での再アノテーションにより、新たな結果が得られる可能性が十分あり、ゲノム研究には必要なことであると考えられる。
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Stenotrophomonas maltophilia の亜鉛吸蔵の特徴 国際会議
田中 尚人,宮崎 智,菅原 秀明
第10 回国際微生物株保存会議 2003年10月
開催年月日: 2003年10月
記述言語:日本語 会議種別:ポスター発表
開催地:つくば研究交流センター
金属は生物にとって欠かせない物質であり、生物は細胞内のこの濃度の微妙なバランスを保つために様々な輸送機構を有している。さらに、有害な重金属耐性機構に関わる排出についても知られており、金属応答のひとつである輸送機構は分子レベルまで解明されてきている。 生物の金属応答については他にも、表層の吸着 (メタロチオネイン)や金属含有顆粒形成なども知られているが、いまだ輸送機構のように詳細は明らかにされていない。 そこで、亜鉛を顆粒状で吸蔵すると報告a) のあった Stenotrophomonas maltophilia の金属吸蔵について検討することで、金属応答について新たな知見を得ることを目的とした。 供試菌株として、IAM 1566, IAM 12423, IAM 12672, JCM 1976 を使用した。これらのうち、JCM 1976 (水田由来) と IAM 12423 (口腔ガン組織由来) が 10 mM ZnCl2 に対して耐性を示した。そこで、亜鉛存在下で培養した両株の顆粒形成およびその顆粒成分をEDS 付き透過型電子顕微鏡により調べた結果、亜鉛を含む電子密度の高い顆粒 (直径最大約 100 nm) の存在が認められた。この顆粒はポリリン酸顆粒のようにストレス解放による分解はされない傾向にあった。 亜鉛顆粒形成が他の細菌でも行われるか調べるため亜鉛耐性細菌をスクリーニングし、上述と同様に観察したが、分離した 4 株とも細胞内に亜鉛を蓄積しなかった。 以上のことから、亜鉛耐性機構のある S. maltophilia 株には、分離源に関係なく亜鉛を蓄積する能力があり、一般の耐性細菌には見られないこの亜鉛蓄積の現象は興味深い。
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分類同定を目的とした電子的ワークベンチ InforBIO の応用
田中 尚人,宮崎 智,菅原 秀明
第55回日本生物工学会 2003年09月
開催年月日: 2003年09月
記述言語:英語 会議種別:口頭発表(一般)
開催地:熊本大学
乳酸菌は自然界のあらゆる所に生息し、糖から乳酸を産生するのを基本として多様な性質をもった細菌である。乳酸菌の研究には長い歴史があり、データは蓄積されていながらも、大量の多面的な性状データを活用した簡便な同定手法がまだ十分確立されていない。そこで InforBIO を利用してデータベースおよび乳酸菌同定システムを構築し、発酵食品などから分離された乳酸菌と推定された株を同定して、InforBIO の分類学的なツールとしての有用性を検証することにした。(方法および結果)乳酸菌データベースの項目として形態的、生理的、および化学分類学的性状を含む 75 項目を InforBIO に設定した。乳酸菌は属または一部の種において同定のためのキーとなる性状が存在するので、これまでに確立された分類体系にしたがい、乳酸菌同定 Binary Tree (二分木) を構築した。構築した二分木により 405 の分離株を解析した結果、Lactobacillus 属、Streptococcus 属、Pediococcus 属、Leuconostoc 属などと同定され、一部は種レベルの同定もしくは複数の候補への絞り込みも出来た。同定の結果をマニュアルによって確認したところ信頼性の高い結果であった。本手法は一度に大量の株を同定できる点でも極めて有用であるといえる。また、データ不十分で同定出来ない場合には、どのデータが必要か提示することも可能である。 InforBIO における乳酸菌のデータベースは項目の追加および二分木の編集が容易で、将来的な分類体系の変化に対しても同定システムとして十分対応しううるツールである。
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InforBIO による乳酸菌の分類と同定
田中 尚人,宮崎 智,菅原 秀明
日本乳酸菌学会2003年度大会 2003年07月
開催年月日: 2003年07月
記述言語:日本語 会議種別:口頭発表(一般)
開催地:麻布大学
構築した二分木により 403 の分離株を解析した結果、種レベルの同定もしくは複数の候補への絞り込みが可能であった。同定の結果をマニュアルによって確認したところ信頼性の高い結果であった。今回の分離株の中には性状による分別の困難な Lactobacillus plantarum または L. pentosus に絞り込まれた株が多かった。これらをデンドロ解析した結果、2 つの大きなクラスタを形成した。そこで、両クラスタを形成する株間の分別性状を InforBIO により検討したところ、二分木の項目には含まれていないリトマスミルクの酸性化能および脱色能が有為な分別性状であることが明らかとなった。以上のように、InforBIO は同定だけではなく分類学的情報を提供する有効な乳酸菌分類同定システムであると評価できた。 InforBIO における乳酸菌のデータベースは項目の追加および二分木の編集が容易で、将来的な分類体系の変化に対しても分類同定システムとして十分対応しうるツールである。