講演・口頭発表等 - 田中 尚人
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乳酸菌の長寿遺伝子 Sirtuin homologue とストレス応答
新 穂高,田中 尚人,志波 優,吉川 博文,岡田 早苗,遠藤 明仁,宮地 竜郎,中川 純一
2014年度日本農芸化学会年次大会 2014年03月
開催年月日: 2014年03月
記述言語:日本語 会議種別:口頭発表(一般)
開催地:明治大学
乳酸菌の環境ストレス耐性に関わる遺伝子制御機構を解析するアプローチとして、ヒトなど真核生物で「長寿遺伝子」とされているSirtuinに着目した。Sirtuinは環境ストレスやカロリー制限などに対して応答反応を引き起こすヒストン脱アセチル化酵素である。乳酸菌にはその祖先と考えられるホモログがあるが、ヒストンを持たない原核生物における役割は不明である。そこで、Lactobacillus paracasei菌をモデルとして、本遺伝子と乳酸菌にとってストレスになる腸管での胆汁酸に対する耐性との関連を中心にSirtuin homologueタンパク質の発現制御を解析し、乳酸菌の環境ストレス応答とそれに関わる遺伝子発現制御の関係を解明した。
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Lactobacillus delbrueckii subsp. delbrueckii TUA4408L が発酵豆乳中に産生する粘性物質の解析
伊藤 千浩,塩見 直希,田中 尚人,梶川 揚申,佐藤 英一,岡田 早苗
2014年度日本農芸化学会年次大会 2014年03月
開催年月日: 2014年03月
記述言語:日本語 会議種別:口頭発表(一般)
開催地:明治大学
微生物は発酵食品において様々な物質を産生し、味・香り・形・物性等に関与することが知られている。その一例として、長野県の伝統的な発酵食品である「すんき漬け」より分離されたLactobacillus delbrueckii sub sp. delbrueckiiTUA4408Lは菌体外粘性多糖(Extracellular polysaccharide:EPS)を産生し発酵豆乳に粘性と曵糸性を付与することが報告されている。一般に乳酸菌の産生する菌体外多糖は、バイオフィルムの骨格として菌体保護の役割を果たしている。応用利用の面でEPSは、免疫調節作用や食品に程よい粘性を付与する効果や離水防止効果があると知られている。中でも粘度付与については食感特性を研究するうえで注目されている。粘性を付与する際の構造特徴としては分子量の大きさ、構成単糖、分枝の有無など様々あり、これらの要因が食品成分と網目構造を形成することで生じる。そこで、本研究はL. delbrueckiisub sp. delbrueckiiTUA4408Lの発酵豆乳中で産生するEPSの構造や諸性質ついて報告した。
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Lactobacillus plantarum の菌体構成成分がIL-10産生誘導に及ぼす影響
奥津 雄太,長井 遼太,星子 浩之,梶川 揚申,田中 尚人,佐藤 英一,岡田 早苗
2013年度日本農芸化学会年次大会 2013年03月
開催年月日: 2013年03月
記述言語:日本語 会議種別:口頭発表(一般)
開催地:東北大学
長野県の伝統発酵食品「すんき漬け」から分離されたL. plantarum 13株とヒト由来単球性白血病細胞であるTHP1細胞を用いてELISA法にてIL-10産生誘導の評価を行った。その結果、菌株間でIL-10産生誘導に差がみられた。その中からIL-10産生誘導の高い株としてL. plantarumSNK24、低い株としてL. plantarum SNK1を選抜した。選抜株の総菌体(Cell)から、細胞構造を維持した細胞壁(ICW)、ペプチドグリカン(PG)、WTA、細胞内容物(PP)の各菌体画分を調製しIL-10を測定した。その結果、各菌体画分の中でICWが最も活性が高く、活性が異なる要因として細胞壁が重要であることを示唆された。次に細胞壁成分の一つであるWTAの関与を明らかにするため、WTAを除去したICW画分(脱WTA・ICW)を調製しICWと比較した。その結果、脱WTA・ICWでIL-10産生誘導が大きく低下した。また、WTA単体では活性が少ないことから、IL-10産生誘導においてWTAは細胞壁に必要な因子であることが考えられる。さらに、細胞壁がなぜ活性が異なる要因になるのかを明らかにするため、N-Acetylmulamidase(M1酵素)を用いて菌体の消化耐性について検討した。L. plantarum 13株のCellとICW を用いてM1酵素による溶菌酵素耐性試験とIL-10測定を行った。その結果、CellとICWにおいてM1酵素の消化率とIL-10産生誘導との間で負の相関を示した。そのためIL-10産生誘導において溶菌酵素耐性の強い細胞壁を持つ菌株程、高い活性を示すことが示唆された。その事から菌体の細胞壁の量及び厚さの違いによって、活性差が生まれているのではないかと考えられる。以上の結果から活性が異なる要因として、細胞壁構造の違いが関与している可能性が示唆された。
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キシラン利用菌Amphibacillus xylanusの網羅的手法を用いた代謝経路の解析
望月 大地,新井 俊晃,田中 尚人,志波 優,藤田 信之,佐藤 純一,川崎 信治,新村 洋一
2013年度日本農芸化学会年次大会 2013年03月
開催年月日: 2013年03月
記述言語:日本語 会議種別:口頭発表(一般)
開催地:東北大学
酸素の供給(好気性菌)と除去(嫌気性菌)が不要なバイオマス利用を目指して、新規キシラン資化菌を分離し、新属新種Amphibacillus xylanusと命名した1)。本菌は、呼吸鎖やheme -catalase, 各種peroxidaseを欠如するにもかかわらず、強力な酸素吸収能を有し、好気性と嫌気性の両条件下で同等の良好な生育を示した1)。このような性質は簡便な培養を可能とし、バイオマス利用の低コスト化が期待できることから、我々は本菌の代謝経路の解明を試みている。これまでに我々は代謝産物解析と酵素活性解析よりNADH oxidase(Nox)-AhpC(Prx)を酸素代謝の中心とした代謝経路を推定した 2)。本発表では、ゲノム解析データを基に基礎代謝遺伝子を同定し、同定した基礎代謝系遺伝子のノーザン解析とRNA-seq解析、更に酸素代謝のキーエンザイムと推定されるNox-Prxに着目し、本酵素系の微生物界における分布と系統分類学的な解析結果を報告した。
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Lactobacillus gasseri JCM1131T に見出された新規なリポテイコ酸の構造
白石 宗,横田 伸一,森田 直樹,吹谷 智,冨田 理,田中 尚人,岡田 早苗,横田 篤
2013年度日本農芸化学会年次大会 2013年03月
開催年月日: 2013年03月
記述言語:日本語 会議種別:口頭発表(一般)
開催地:東北大学
リポテイコ酸 (LTA) は、グラム陽性細菌の主要な表層構成因子の一つであり、一般的にグリセロールリン酸 (GroP) を繰り返し単位とするポリマーと糖脂質から成り、糖脂質の部分で細胞膜にアンカーされている。LTAの構造を明らかにすることは、宿主との相互作用を理解する上で重要であり、特にプロバイオティクスは、LTAの免疫刺激を介した免疫賦活作用が報告されているにも関わらず、これらのLTAに関する情報は不十分である。その中でもLactobacillus gasseriは、プロバイオティクスとして利用される腸管由来の乳酸菌であり、口腔や腟、尿や血液などからも分離され、ヒトとの密接な関連が推測される。しかし、本菌種のLTAは全く解析されていない。そこで我々は、L. gasseriと宿主との相互作用をより深く知るために、L. gasseri JCM1131TのLTAの構造を報告した。
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ラッカセイ種皮ポリフェノールのBacillus cereusに対する抗菌作用の検証
小澤 恵実,田村 倫子,田中 尚人,矢口 行雄,笠原 浩司,村 清司,荒井 綜一
2013年度日本農芸化学会年次大会 2013年03月
開催年月日: 2013年03月
記述言語:日本語 会議種別:口頭発表(一般)
開催地:東北大学
DNAマイクロアレイ解析の結果、カセイ種皮より単離した三量体プロシアニジンのエピカテキン・エピカテキン・カテキン(EEC)が細胞壁の生合成や細胞膜の物質輸送に影響を与えている可能性が示唆された。そこで、細胞壁生合成に関与するペニシリン結合蛋白質(PBP)の遺伝子発現をリアルタイムRT-PCRで解析したところ、EEC添加においてその遺伝子発現が上昇し、10分後よりも30分後の方がより発現量が増加した。さらにB。subtilisで知られている細胞表層ストレスに応答するLiaRS 二成分制御系に依存するLiaIHに相同な遺伝子の発現についても、PBP遺伝子と同様にEEC添加により発現の上昇が認められた。以上の結果から、EECは細胞膜に存在するタンパク質と結合し、細胞壁の生合成を阻害することでB。cereusの生育を抑制することが推察される。また、EECは細胞膜に存在するトランスポーターと結合し、物質の取込を阻害している可能性が考えられた。
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Stenotrophomonas maltophiliaのシデロフォアに関する研究
泉 裕己,伊藤 千浩,梶川 揚申,田中 尚人,佐藤 英一,岡田 早苗
2013年度日本農芸化学会年次大会 2013年03月
開催年月日: 2013年03月
記述言語:日本語 会議種別:口頭発表(一般)
開催地:東北大学
臨床、海洋、植物由来の異なる環境から分離されたS. maltophilia 7株を用いてシデロフォア産生を確認した。その結果、すべての株でシデロフォアの産生を確認した。次にシデロフォアの構造タイプを決定した。構造タイプの決定には、S. maltophiliaゲノム公開株からcatecholate typeのシデロフォア合成系が確認されたため、その判別に用いられるArnow assay法を用いた。その結果、臨床由来の株であるS. maltophilia IAM 12423T以外のすべてにおいてcatecholate typeであることが明らかとなった。また、S. maltophilia IAM 12423Tは実験の結果、上記のcarboxylate、hydroxamate typeのどちらかに属すると推測された。加えて、他の臨床株がcatecholate typeに属することから分離源によるシデロフォアタイプに相関性はみられないことが分かった。以上より多くの株がcatecholate typeのシデロフォアを産生する事から、その中でも安定的に生育するS. maltophilia KMM 349を選抜し、シデロフォアの単離精製を行った。単離精製では、catecholate typeシデロフォアが持つcis-diol構造に着目し、catecholamineの分離精製に用いられるboronate affinity gelとreverse phase-HPLCにより精製した。
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乳酸菌のサーチュインホモログとコール酸耐性および飢餓応答の関係
新 穂高,吉田 裕哉,田中 了慈,藤村 朱喜,田中 尚人,岡田 早苗,中川 純一
2013年度日本農芸化学会年次大会 2013年03月
開催年月日: 2013年03月
記述言語:日本語 会議種別:口頭発表(一般)
開催地:東北大学
コール酸存在下の生育では、Lactobacillus casei 1917株、1981株、0644株の順にコール酸耐性が高い事が明らかになった。更にレスベラトロール処理した菌株はコール酸耐性能が上昇し、スラミン処理した菌株はコール酸耐性能が減少することが示された。全ゲノム解析から、3株全てがサーチュインを保有しており、1981株においてはLactobacillus rhamnosus型のサーチュイン配列も見出され、2つのサーチュインを保有していることが示された。精製された組換えL. casei型サーチュインタンパク質は脱アセチル化活性を有し、レスベラトロールで賦活化されスラミンで阻害された。この酵素反応の至適温度はヒトのSIRT1が37°Cであるのに対し、45~50°Cであった。また、コール酸ストレスを受けた乳酸菌のサーチュインホモログの発現量は直後に一旦低下するが、3時間後には急増した。さらに、培地の炭素源濃度を減少させた飢餓ストレス下においても発現量が増加した。これらの事は,コール酸及び飢餓ストレスに対し、サーチュインが何らかのストレス応答に関与していることを示唆した。
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乳酸菌のペニシリン結合タンパク質と胆汁酸耐性
服部 正寛,黒瀬 猛,新 穂高,藤村 朱喜,田中 尚人,岡田 早苗,中川 純一
2013年度日本農芸化学会年次大会 2013年03月
開催年月日: 2013年03月
記述言語:日本語 会議種別:口頭発表(一般)
開催地:東北大学
Lactobacillus casei菌3株のPBPsバンドパターンは、高分子PBPである105 kDa、93 kDa、83kDa、74 kDa、69 kDa、58 kDaについては同じであった。一方、低分子PBPを比較すると24 kDaは3株とも同じであったが、加えて0644株では更に21.5 kDaのバンドが確認され、1981株、及び1917株においては19.5 kDaのバンドが確認された。また、コール酸含有培地で生育させると、58 kDa、24 kDa、21.5 kDa及び19.5 kDaのPBPが経時的に変動する事を見出した。これらの結果は動物由来の株と植物由来の株で細胞壁合成に差があるという可能性、また、PBPsの発現が胆汁酸ストレスに誘導されて変動する可能性を示した。
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Stenotrophomonas maltophilia が産生するシデロフォアのタイプについて
泉 裕己,田中 尚人,佐藤 英一,岡田 早苗
日本微生物資源学会第19回大会 2012年06月
開催年月日: 2012年06月
記述言語:日本語 会議種別:口頭発表(一般)
開催地:かずさアカデミアホール
臨床、海洋、植物由来の異なる環境から分離されたS. maltophilia 7株を用いてシデロフォア産生を確認した。その結果、すべての株でシデロフォアの産生を確認した。次にシデロフォアの構造タイプを決定した。構造タイプの決定には、S. maltophiliaゲノム公開株からcatecholate typeのシデロフォア合成系が確認されたため、その判別に用いられるArnow assay法を用いた。その結果、臨床由来の株であるS. maltophilia IAM 12423T以外のすべてにおいてcatecholate typeであることが明らかとなった。また、S. maltophilia IAM 12423Tは実験の結果、上記のcarboxylate、hydroxamate typeのどちらかに属すると推測された。
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対馬のせんだんご製造工程における微生物叢
熊谷 浩一,田中 尚人,佐藤 英一,岡田 早苗
日本微生物資源学会第19回大会 2012年06月
開催年月日: 2012年06月
記述言語:日本語 会議種別:口頭発表(一般)
開催地:かずさアカデミアホール
「せんだんご」はサツマイモを原料とした長崎県対馬地方固有の伝統発酵食品である。せんだんごはスライスまたは破砕したサツマイモを数ヶ月間発酵させた後、多量の水で洗浄して浮遊物や着色物質が除かれた白色沈殿物を丸め団子状とし、ヒトの鼻形に成型し、乾燥させたものである。せんだんごを基に作られる「ろくべえ麺」は、原料であるサツマイモからは想像し得ないコンニャクに似た独特な食感を有し、この食感は原料サツマイモ粉からは得られないとされている。せんだんご製造工程中には糸状菌などの繁殖が見られ、これらの微生物はデンプンや繊維質を部分的に分解することでろくべえ麺の食感形成に関与していると考えられる。しかし、せんだんご製造に関わる微生物について、研究報告がこれまでに無いのが現状である。そこで、本研究では4年間にわたり現地を調査し、培養法によりせんだんご製造工程中の微生物叢を調べた。その結果、せんだんご製造工程から多くの微生物が分離され、主要微生物群は、糸状菌ではMucor属、Penicillium属、酵母ではCandida属、一般細菌ではBacillus属、Paenibacillus属であった。
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ラッカセイ種皮ポリフェノールの抗菌作用の検証と関与する遺伝子発現のDNAマイクロアレイ解析
小澤 恵実,田村 倫子,田中 尚人,矢口 行雄,村 清司,荒井 綜一
2012年度日本農芸化学会年次大会 2012年03月
開催年月日: 2012年03月
記述言語:日本語 会議種別:口頭発表(一般)
開催地:京都大学
ラッカセイポリフェノールPSE はグラム陽性細菌5株に対して抗菌作用を示したが、グラム陰性細菌に対しては抗菌作用は見られなかった。特にグラム陽性細菌のB。cereusに対して強い抗菌作用を示した。さらに、PSE より単離した主要ポリフェノールの二量体および三量体プロシアニジンについて、B。cereusに対する抗菌活性試験を行ったところ、両者に抗菌作用が認められたが、IC50は二量体プロシアニジンが 0.2 mg/ml、三量体プロシアニジンが 0.02 mg/ml であり、三量体プロシアニジンの方が強い抗菌作用を示した。B。cereus での抗菌作用発現時の DNA マイクロアレイ解析では、三量体プロシアニジン添加後 10 分でトリプトファン、ヒスチジンなどのアミノ酸代謝に関与する遺伝子の発現が大きく上昇し、添加後 30 分ではさらにグリコーゲン代謝、脂肪酸代謝に関与する遺伝子の発現が上昇した。一方、添加後 10 分では糖代謝に関与する遺伝子の発現が減少し、30 分ではさらに ATP 合成、プリン、ピリミジン代謝に関与する遺伝子の発現が減少し、菌の生命過程への致死的影響の実態が示唆された。
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せんだんご製造工程中におけるデンプン分解微生物の解析
熊谷 浩一,岡 大貴,田中 尚人,佐藤 英一,岡田 早苗
2012年度日本農芸化学会年次大会 2012年03月
開催年月日: 2012年03月
記述言語:日本語 会議種別:口頭発表(一般)
開催地:京都大学
供試菌株としてカビは過去に分離・選抜されたPenicillium sp. 38-1及び40-6の2株を用いた。細菌は、過去に分離した164株を用い、サツマイモデンプン含有寒天培地・15°Cにて培養後、ヨウ素添加によるハロ形成の確認によりデンプン分解細菌を選抜した。デンプン分解細菌を同液体培地・15°Cにて培養後、培養上清を回収し、薄層クロマトグラフィー(TLC)によりデンプン分解産物の検出パターン解析を行い、各パターンから細菌の代表株を1株ずつ選抜し供試菌株とした。各代表株により発酵させたデンプンの分子量分布を検討するため、同液体培地・15°Cにて培養後、分解によって生じるデンプンを回収し、ゲルろ過法にて解析した。デンプン分解細菌を15株選抜し、TLCにより3パターンのデンプンの分解が確認された。各パターンからBacillus sp.4-1、Paenibacillus sp.37-2及び10-10を代表株として選抜した。せんだんごデンプンの分子量分布は、サツマイモデンプンと比較して、高分子量のアミロペクチン(F1,F2画分)の割合が減少し、低分子量(F3画分)の割合が増加していることから、アミロペクチンが分解されていることがわかった2)。供試菌株により発酵させたデンプンの分子量分布では、Penicillium sp. 38-1はF1画分の割合が、Penicillium sp. 40-6ではF2画分の割合が減少した。また、Bacillus sp.4-1、Paenibacillus sp.37-2及び10-10は、F1,F2画分の割合が減少し、F3画分の割合が増加した。以上の結果より、選抜した菌株は、アミロペクチンを分解し、せんだんごデンプンの分子量分布に類似する分解パターンを示すことが示唆された。
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Lactobacillus plantarumの免疫調節作用に関わる因子の探索
杉浦 雅彦,奥津 雄太,信田 幸大,田中 尚人,佐藤 英一,保井 久子,岡田 早苗
2012年度日本農芸化学会年次大会 2012年03月
開催年月日: 2012年03月
記述言語:日本語 会議種別:口頭発表(一般)
開催地:京都大学
マウスマクロファージ様細胞 J774.1 を用いて、新たに長野県の伝統発酵食品「すんき漬け」から分離した Lactobacillus plantarum の菌株間において菌体による IL-12 (p40) 誘導能の違いが認められた。その中から IL-12 (p40) 誘導能が高い株の SNK1、低い株の SNK47 を供試菌株として選抜した。次に、選抜株の ICW と pp をそれぞれ調製し、各々の画分の IL-12 (p40) 誘導能を測定した。その結果、両株とも ICW では活性に差はなく、pp では活性もなかった。しかし、ICW に pp を混合した場合は活性が高くなることが確認された。そしてさらにいずれの株の ICW も菌体での活性が高かった SNK1 の pp を含む混合物で活性が高く、一方の SNK47 の pp を含む混合物と比べ IL-12 (p40) 誘導能に差が認められた。以上のことから、菌株間の活性差がpp 由来であることが示唆された。
pp は主に DNA、RNA、タンパク質を含有している。そこで、以下の方法で pp の中の活性要因の探索を行った。まず、SNK1、SNK47 から調製した pp に対して DNase、RNase、protease の各酵素処理を行い、それぞれを DNase-pp、RNase-pp、Protease-pp として作製し、これらを前述と同様に ICW と混合試験した。また、SNK1、SNK47 の菌体から DNA、RNA、タンパク質の疎精製物を抽出し、同じく ICWとの混合試験を行った。その結果、両株共に RNase-pp において IL-12 (p40) 誘導能が最も低下し、さらに抽出物においては RNA 画分において最も IL-12 (p40) 誘導能が上昇した。以上の2つの結果から、菌株間の活性差は RNA に起因する可能性が考えられた。 -
Lactobacillus delbrueckii subsp. delbrueckii TUA4408Lによる発酵豆乳中の粘性物質について
吉田 早希,江草 信太郎,田中 尚人,佐藤 英一,都築 公子,本多 芳孝,岡田 早苗
2012年度日本農芸化学会年次大会 2012年03月
開催年月日: 2012年03月
記述言語:日本語 会議種別:口頭発表(一般)
開催地:京都大学
伝統発酵食品‘すんき漬け’から分離された乳酸菌Lactobacillus delbrueckiisub sp.delbrueckiiTUA4408Lで豆乳を発酵させると独特な粘性と曵糸性を持つ発酵豆乳ができる。乳酸菌が産生する粘性物質としては菌体外多糖(EPS)がある。EPSは、抗腫瘍や免疫調節等の生理作用、また食品のテクスチャー改善や離水防止作用が注目され、食品への利用が試みられている。TUA4408L 株による発酵豆乳においてもEPSが独特な物性に影響を及ぼしていると考えられるが、豆乳に粘性を付与する乳酸菌由来の物質の報告はこれまでにない。そこで本研究ではTUA4408L 株が豆乳中に産生する粘性物質の特性を明らかに
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Stenotrophomonas maltophilia の Biovar II 群の分類学的研究
黒川 祐菜,田中 尚人,飯野 隆夫,小迫 芳正,大熊 盛也,佐藤 英一,岡田 早苗
2012年度日本農芸化学会年次大会 2012年03月
開催年月日: 2012年03月
記述言語:日本語 会議種別:口頭発表(一般)
開催地:京都大学
Biovar II 群 7 株とその近縁種および S. maltophilia 基準株を用いて表現型・化学分類学的試験を行った。その結果、Biovar II 群は表現型においては D-sucrose や inulin など 11 種の糖類発酵性および α-glucosidase 活性がないこと、菌体脂肪酸においてはiso-C16:0 や iso-C15:0、iso-C12:0 3-OH が存在することなど、S. maltophilia 基準株と異なる性質であることが明らかになった。そして、表現型は Simple matching 法、化学分類学的試験は Euclid 法にてクラスター解析したところ、Biovar II 株は両試験とも 16S rRNA 遺伝子系統解析と同様に他種とクラスターを形成することが確認された。 次に、Biovar II 株と S. maltophilia 基準株および近縁種との DNA-DNA hybridization を行った。その結果、JCM 1981 は近縁種である S. terrae DSM 18941T と、現在同種の指標とされる 70 %を超える相同性を示した。さらに IAM 12672 は試験を行ったすべての株との相同性が 30 ~ 59 %と低かったことから、新種の可能性が高いことが確認された。これにより、Biovar II 内には複数種が混在することが示唆された。
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Lactobacills delbrueckii の伸長細胞の構造解析
石塚 和子,稲葉 達也,田中 尚人,佐藤 英一,岡田 早苗
2012年度日本農芸化学会年次大会 2012年03月
開催年月日: 2012年03月
記述言語:日本語 会議種別:口頭発表(一般)
開催地:京都大学
V.B12の欠乏により伸長した細胞を、V.B12添加の培地に移すことで細胞の増殖が確認されたことから、伸長細胞は死滅していないということが確認された。電子顕微鏡観察では、伸長細胞の表層構造などが明確になったのとともに、細胞壁の厚さが不均一であり、内部構造についても変化が認められた。蛍光顕微鏡観察では、細胞膜単位での分裂が起きていないことが示唆され、また、核様体の複製及び分配も起きていないことが確認された。一方で細胞伸長点は通常と同様に中 心 の ま ま合 成 自 体 は 行 わ れて お り 、 細 胞 の 伸長 は 進 行 し て い たこ と か ら、L. delbrueckiiのこの細胞伸長は、分裂の機能は停止しているが、細胞壁合成機構は停止しないという、分裂調節系がアンバランスな状態にあることに起因する現象であることが考えられた。そこで分裂関連遺伝子として知られるftsZ, mreB,divIVAの発現解析を行なったが、通常細胞、伸長細胞ともに発現が確認された。このことから、これら遺伝子の転写ではなく、コードしているタンパク質や、その他の調節因子の変化が細胞伸長に影響していると考えられた。
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Lactobacillus delbrueckii のTMP合成に与えるビタミンB12 の影響
林 徳彦,西前 七緒,田中 尚人,佐藤 英一,岡田 早苗
2012年度日本農芸化学会年次大会 2012年03月
開催年月日: 2012年03月
記述言語:日本語 会議種別:口頭発表(一般)
開催地:京都大学
V.B12 定量用合成培地を基礎培地とし、V.B12 添加(V.B12+)、無添加 (V.B12-)を作成した。さらに KEGG を参考に V.B12 が関わると考えられた TMP 合成の中間体としてthymidine, thymine, 5-methylcytosine を選抜しそれぞれの培地に添加した。培養後の生育を吸光度 (O。D。660nm) にて測定した結果、 V.B12+ ではすべて 0.8 以上となり、 V.B12- においては thymidine 添加培地でのみ 1.3 と V.B12+ と同等以上の生育を示した。一方 V.B12- のthymine, 5-methylcytosine 添加においては生育が見られなかった。また細胞長においてもV.B12+ のすべては平均が 10㎛ 未満、 V.B12- の thymidine 添加では一部伸長した細胞が見られるが平均は同じく 10㎛ 未満であるのに対し、他の V.B12- では 20㎛ となった。この事からV.B12 は TMP 合成経路において特に thymine から thymidine を合成する反応に影響している事が考えられた。
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Lactobacillus plantarumにおける細胞壁テイコ酸糖修飾遺伝子の解析
磯貝 夏海,田中 尚人,佐藤 英一,岡田 早苗
2012年度日本農芸化学会年次大会 2012年03月
開催年月日: 2012年03月
記述言語:日本語 会議種別:口頭発表(一般)
開催地:京都大学
L.plantarumWCFS1の公開ゲノム上から、既知のテイコ酸糖修飾遺伝子であるtagEやtarMと相同性の高い遺伝子を探索した結果、L.plantarumには糖修飾遺伝子として、他菌種とに見られない多数のホモログ(tagE1~tagE6)が存在することが確認された。各遺伝子のアミノ酸配列より機能ドメインを予測したところ、6遺伝子全てに糖転移活性ドメインと機能未知のDFU1975ドメインの存在が認められた。この特徴は、tagEやtarMと非常に類似していることから、tagE1~tagE6はテイコ酸に対する糖修飾遺伝子である事が強く示唆された。そこで、tagE1~tagE6の発現量をqRT-PCRにより定量し、菌株間での比較を行った。その結果、全ての菌株で発現の低い遺伝子や、テイコ酸の構造タイプ間で発現量の大きく異なる遺伝子が複数確認された。このような発現量に差が認められた遺伝子がテイコ酸の糖修飾に違いをもたらしていると考え、発現ベクターへのクローニングの後、遺伝子の高発現系を構築した。取得した各遺伝子の高発現株よりテイコ酸を抽出・精製し、核磁気共鳴法(NMR法)を用いた構造解析を行ったところ、細胞壁テイコ酸の糖修飾の位置への変化は認められなかった。よって、L.plantarumにおけるテイコ酸は、6つの糖修飾遺伝子の発現量の制御ではなく、他の因子の影響によりその構造が決定されていると考えられた。
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乳酸菌のコール酸耐性へのResveratrolの効果及びサーチュインホモログの解析
新 穂高,藤村 朱喜,田中 尚人,岡田 早苗,中川 純一
2012年度日本農芸化学会年次大会 2012年03月
開催年月日: 2012年03月
記述言語:日本語 会議種別:口頭発表(一般)
開催地:京都大学
検討対象として3株のLactobacillus casei株、即ち、チーズ由来NRIC 0644株、サトウキビワイン由来NRIC 1917株、コンポスト由来NRIC 1981株(以下NRIC省略)を用い、MRS培地に終濃度0.2~5.0 mMのコール酸を添加し、生育への影響を検討した。その結果、5.0 mMのコール酸濃度では1917株、1981株、0644株の順にコール酸耐性が高い事が明らかになった。一方、これら3株の全ゲノム配列を解析したところ、3株全てがサーチュインホモログを保有することが明らかになった。L. casei3株に存在するサーチュインホモログ配列の相同性は非常に高く、更に1981株においてはLactobacillus rhamnosus型のサーチュインホモログ配列についてもその存在が見出され、1981株が0644株、1917株とは異なり、2つのサーチュインホモログを保有していることが示された。次に、コール酸耐性能獲得にエピジェネティック制御が関与するかを検討するため、サーチュインの賦活剤として報告されている、Resveratrolを乳酸菌に作用させ、コール酸添加MRS培地中での生育を観察した。その結果、Resveratrol未処理のものと比較し、良好な生育が観察され、コール酸耐性能が向上したことが示された。これらの結果は、乳酸菌でも真核生物のエピジェネティック制御に類似の環境応答機構が存在する可能性を示唆していると考えられる。そこで、それぞれのサーチュインホモログ遺伝子をクローニングし、大腸菌発現系を用いて組換えタンパク質を生産し、アフィニティ―カラムで精製した。その結果、L. casei 3株のサーチュインホモログはSDSPAGEによって29kDaの単一バンドとして検出された。また、1981株のL. rhamnosusサーチュインホモログは34kDaの単一バンドとして検出された。