論文 - 岩槻 健
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Sense of taste in the gastrointestinal tract
Iwatsuki K, Uneyama H
J Pharmacol Sci, Vol. 118 2012年01月
担当区分:筆頭著者 記述言語:英語 掲載種別:研究論文(学術雑誌)
これまでの分子細胞生物学的解析から、味覚受容体は口腔内だけでなく、生体内の様々な場所に存在する事が分かってきた。特に、消化管には味細胞と性質が似ている細胞が少なくとも2種類存在する。一つは口腔内の甘味受容細胞に似た細胞であり、PLCbeta2やGLP-1などを発現する。もう一つは、gustducinやTRPM5を発現するブラッシュ細胞である。前者は栄養を感知し様々な物質を分泌する内分泌細胞であるが、後者の機能は未だ分かっていない。
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Separate and distinctive roles for Wnt5a in tongue, lingual tissue and taste papilla development
Liu H-X, Grosse SA, Iwatsuki K, Mishina Y, Gumucio DL, Mistretta CH
Developmental Biology, Vol. 361 2012年01月
記述言語:英語 掲載種別:研究論文(学術雑誌)
これまで著者達はカノニカルWntシグナルが味乳頭の発生に必須であることを示してきた。今回、Wnt5aの欠損マウスも味乳頭の形成に異常をきたすことを見出した。詳細な解析の結果、非カノニカルWntシグナルも味乳頭の形成に寄与していることが明らかとなった。
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T1R2-LacZマウスを用いた消化管甘味受容体発現細胞の性質決定
岩槻健、市川玲子、野村政壽、柴田篤志、中村英志、畝山寿之、鳥居邦夫
日本味と匂学会誌 Vol. 18 2011年12月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:研究論文(学術雑誌)
甘味受容体T1R2の発現および機能を解析するため、我々はT1R2-LacZノックイン・ノックアウトマウスを作製した。同マウスの最大の特徴は、LacZの発現を指標にT1R2の発現を高感度で検出できるマウスという点である。今回、同マウスを用いて消化管におけるLacZ陽性細胞を見出し、種々の細胞マーカーと共発現するかを調べた結果、これまでの報告通りT1R2陽性細胞は内分泌細胞である事が確認された。一方、同細胞はbrush細胞とは異なる細胞である事も判明した。
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甘味刺激による摂食調節機構の解析
市川玲子、岩槻健、中村英志、鳥居邦夫
日本味と匂学会誌 Vol. 18 2011年12月
担当区分:責任著者 記述言語:日本語 掲載種別:研究論文(学術雑誌)
食品の中で、エネルギー源とならない人工甘味料の使用が注目されている。しかし、人工甘味料の摂食量を増加させても、体重が増加するという報告が昨今増えている。そこで、中・長期に渡り、人工甘味料を摂取したときの食欲・体重への影響を明らかにするため、マウスを用いて人工甘味料を継続的に投与したときの摂食量および体重を経時的に測定した。その結果、長期間人工甘味料を摂取する場合において、摂食量・体重の亢進は一時的なものであり、人工甘味料の摂取と肥満とは相関しないことが分かった。
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Evaluation of the 'liking' and 'wanting' properties of umami compound in rats
Uematsu A. Tsurugizawa T, Kitamura A, Ichikawa R, Iwatsuki K, Uneyama H, Torii K
Physiol Behav, Vol. 102 2011年03月
記述言語:英語 掲載種別:研究論文(学術雑誌)
摂食に関する報酬系は、神経学的および生理学的に少なくとも二つの性質(「liking」と「wanting」)に分かれる。しかしながら、嗜好性を示すうま味物質において、両者の神経科学的な性質の違いは分かっていない。そこで、MSGとショ糖の摂取を行動学的に比較し、両者の違いを解析した。その結果、MSGにもショ糖を摂取した際にも快楽反応や誘因特徴は観察されたが、MSG摂取の時はよりマイルドに現れる事が分かり、両者の違いは中枢神経系の興奮度の違いとして現れる事が分かった。
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発生期における味覚受容体の発現解析
岩槻健、市川玲子、畝山寿之、鳥居邦夫
日本味と匂学会誌 Vol. 17 2010年12月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:研究論文(学術雑誌)
マウス発生時期のいつから味細胞および味覚受容体が発現するかを調べた。マウス有郭乳頭を経時的にサンプリングし解析した結果、味覚受容に重要であると考えられているVNUT、PLCβ2および味覚受容体分子の発現を出生直後より確認した。同時に、味神経由来と思われる神経線維が味細胞周辺に発達することを確認した。これらのことより、味細胞は出生後間もなく成熟し、味覚受容機構が完成すると考えられる。
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Generation and characterization of T1R2-LacZ knock-in mouse
Iwatsuki K, Nomura M, Shibata A, Ichikawa R, Enciso PL, Wang L, Takayanagi R, Torii K, Uneyama H
Biochem Biophys Res Commun, Vol. 402 2010年11月
担当区分:筆頭著者 記述言語:英語 掲載種別:研究論文(学術雑誌)
甘味受容体であるT1R2は味細胞で発現する他、消化管など生体内の様々な組織で発現することが報告されているが、特異抗体が入手困難なことや、発現レベルが低いため新たなツールが求められている。今回、我々はT1R2-LacZノックインマウスを作製したのでここに報告する。同マウスはLacZ活性を調べることによりT1R2の発現が容易に推測できる他、ノックアウト動物としてT1R2分子の機能を解析できる有用なモデルであることが確認された。
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REEP2 enhances sweet receptor function by recruitment to lipid rafts
Ilegems E, Iwatsuki K, Kokrashvili Z, Benard O, Ninomiya Y, Margolskee RF
J Neurosci, Vol. 30 2010年10月
記述言語:英語 掲載種別:研究論文(学術雑誌)
味細胞の膜表面に味覚受容体をリクルートする分子を探索した結果、receptor expression enhancing protein (REEP) 2が候補となった。同分子は味覚受容体であるT1RおよびT2Rファミリーと結合し、味シグナルを増幅する事が明らかとなった他、細胞株において同分子の発現を抑制すると味覚受容体の感度が落ちる事を見出した。さらに、REEP2は甘味受容体の膜への発現を亢進させているのではなく、リピッドラフとを通じて味細胞の頂端側へ受容体をリクルートしている事が明らかとなった。
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味蕾におけるATP蓄積機構の同定
岩槻健、市川玲子、松本拓也、日浅未来、森山芳則、畝山寿之、鳥居邦夫
日本味と匂学会 Vol.16 2009年12月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:研究論文(学術雑誌)
これまでの研究により、ATPは味細胞からのシグナル伝達に関与する事、味細胞からATPが放出される事が明らかとなっている。しかしながら、ATPの蓄積機構についての研究はほとんどない。まず、ATP小胞の存在をATPと酸性小胞を染めるキナクリンにより調べたところ、味細胞選択的なキナクリン陽性細胞が観察された。また、最近になり発見された小胞型ATPトランスポーターVNUTの発現を軟口蓋にて調べた結果、味蕾に選択的に発現する事が分かった。以上、味細胞にはVNUTを介してATPを蓄積する機構が存在する事が示唆された。
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TasterマウスとNon-tasterマウスの簡便な判別方法の確立
市川玲子、岩槻健、畝山寿之、鳥居邦夫
日本味と匂学会 Vol.16 2009年12月
記述言語:日本語 掲載種別:研究論文(学術雑誌)
遺伝子工学の進歩により多くの遺伝子改変マウスが作出されているが、遺伝子改変マウスの樹立には129系統由来のES細胞が用いられており、甘味およびうま味の感受性が低く、C57BL/6系統に戻し交配を行う必要がある。この際に、効率よく遺伝子型を判別する方法が必要であるため、我々は簡便に目的のTasterマウスを判別する方法を2つ開発したので紹介した。
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Identification of the vesicular nucleotide transporter (VNUT) in taste cells
Iwatsuki K, Ichikawa R, Hiasa M, Moriyama Y, Torii K, Uneyama
Biochem Biophys Res Commun, Vol. 388 2009年10月
担当区分:筆頭著者 記述言語:英語 掲載種別:研究論文(学術雑誌)
近年ATPが味細胞から味神経への味覚情報の伝達に関与する神経伝達物質という事が明らかになった。ATPを細胞外に分泌する方法として分泌小胞のエキソサイトーシスが考えられるが、ATP濃縮のために必要なトランスポーターは見つかっていなかった。2007年に岡山大学の森山教授が新規核酸トランスポーターVNUTを発見したので、味細胞にもVNUTが発現するかを調べたところ、II型味細胞に選択的に発現する事が明らかとなった。I型、III型味細胞には発現していない事からうま味、甘味、苦味のシグナルにVNUTは関与していると推察された。