論文 - 小林 万里
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ホエールウォッチング船の観察記録から見た北海道オホーツク海沿岸および根室海峡における鯨類の出現パターン
小林 駿, 前田 光彦, 大木 絵里香, 高野 延道, 生田 駿, 小林 万里
日本セトロジー研究 33 ( 0 ) 25 - 35 2023年11月
記述言語:日本語 出版者・発行元:日本セトロジー研究会
北海道のオホーツク海沿岸および根室海峡には一年を通して多様な鯨類が出現することが知られている.両海域では2006年からホエールウォッチング船が運航しており,鯨類の生態研究の重要なプラットフォームとなっている.本研究では,ホエールウォッチング船の観察記録をもとに,両海域の鯨類の季節的な出現パターンと経年変動を明らかにすることを目的とした.オホーツク海の網走沖と根室海峡の羅臼沖で運航するホエールウォッチング船の発見記録から,月ごとの出航日数,それぞれの種を発見した日数を集計した.発見が多かった種について発見率を求め,海域と鯨種ごとにその季節変動と経年変動を調べた.両海域とも,ミンククジラは春,イシイルカは夏,ツチクジラは秋に発見率が高くなった.カマイルカは7月に発見が多かったが,網走沖では9-10月にも発見があった.網走沖では羅臼沖と比較してミンククジラが観察される期間が長く,発見率も高かった.一方,羅臼沖では網走沖よりもイシイルカが観察される期間が長く,網走沖で発見が少ないシャチやマッコウクジラも高い確率で観察された.また近年,両海域ともミンククジラの発見率が低下しており,ナガスクジラの発見が増加している傾向がみられた.両種の個体数の変動に影響を及ぼしている要因は現在のところ不明だが,引き続きモニタリングを行い,両種の個体群動態の把握に努めることが重要である.
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ネズミイルカ(<i>Phocoena phocoena</i>)とイシイルカ(<i>Phocoenoides dalli</i>)の雌雄と成長段階における寛骨の形状比較
岡部 佑奈, 小林 万里, 新井 優一
哺乳類科学 63 ( 2 ) 167 - 178 2023年
記述言語:日本語 出版者・発行元:日本哺乳類学会
<p>鯨類は生息環境を水中へ移し適応したことにより,後肢と骨盤は退化した.そのため現在では寛骨と呼ばれる一対の遊離骨が存在する.ネズミイルカ科に属するネズミイルカ(<i>Phocoena phocoena</i>)とイシイルカ(<i>Phocoenoides dalli</i>)は同所的に生息し,単独もしくは少数で行動する一方,異なる繁殖生態を持つことが報告されている.本研究では,近縁種で同じ生息域や社会性を持ち,異なる繁殖生態をとる両種を対象に,繁殖生態が寛骨形態に及ぼす影響について考察し,繁殖様式との関連性を議論することとした.ネズミイルカ54個体,イシイルカ76個体の寛骨を使用し,実測値による線形回帰分析,セミランドマーク法による寛骨形状の正準判別分析を行った.線形回帰分析の結果,両種と雌雄において全ての計測部位で体長に対して相関を示し,オスでは全ての計測部位で種差が認められた.寛骨形状における正準判別分析の結果,両種において雌雄と成長段階で形状の差が見られた.ネズミイルカのオスの成熟個体は,オスの未成熟個体とメスと比較したとき,寛骨の中央部後方の幅がより広く,中央部がより厚いことが明らかとなった.一方,イシイルカのオスの成熟個体は,オスの未成熟個体およびメスと比べ,寛骨の尾側周辺の幅がより広く,中央部がより厚いことが明らかとなった.本研究にて,ネズミイルカはイシイルカよりも寛骨の長さや厚さがより大きく,成長段階における寛骨形状の変化は,両種のオスにおいて変化が顕著であった.これらの寛骨形状は,オス生殖器の成長に伴う坐骨海綿体筋の増加による変化と考えられ,繁殖生態の差異が寛骨の大きさや形状に反映していることが示唆された.</p>
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北海道北部およびオホーツク海沿岸におけるゴマフアザラシ(<i>Phoca largha</i>)の離乳直後の食性型の変化
高野 延道, 小林 万里
哺乳類科学 63 ( 2 ) 157 - 166 2023年
記述言語:日本語 出版者・発行元:日本哺乳類学会
<p>北海道沿岸に来遊する幼獣以降のゴマフアザラシ(<i>Phoca largha</i>)の食性については,主に水深の浅い沿岸域で魚類と頭足類を採餌する広食性であることが先行研究にて解明されてきた.しかし,離乳直後の個体については魚類餌生物に加えてオキアミ類(Euphausiidae spp.)を含む浮遊性小型甲殻類を餌生物として利用していることが明らかにされているにとどまる.そこで本研究では北海道沿岸における離乳直後の個体の食性変化を分析し,その様相と時期を具体的に把握することを目的とした.順序ロジスティック回帰分析の結果,オキアミ類のみを食性の中心としたオキアミ類専食型は3月,オキアミ類と魚類の両方を中心とした併用型は4月,魚類のみを中心とした魚類専食型は5月を中心に出現した.採餌経験と遊泳能力に乏しい離乳直後の個体が,海氷下で群れを形成するオキアミ類を重要な初期食物として積極的に利用していたものと考えられた.その後,海氷の消失に伴って魚類専食型に移行し,底層魚類を積極的に利用することが生存に有利な戦略であることが示唆された.</p>
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OHISHI Kazue, KOBAYASHI Mari, MARUYAMA Tadashi
Journal of Veterinary Medical Science 84 ( 4 ) 543 - 547 2022年
記述言語:英語 出版者・発行元:JAPANESE SOCIETY OF VETERINARY SCIENCE
<p>The enzyme-linked immunosorbent assay (ELISA) was applied to detect antibodies against <i>Brucella abortus</i> in serum samples from four seal species at nine coastal locations of Hokkaido, Japan. These antibodies were detected in 27% (32/118) of Western Pacific harbor seals (<i>Phoca vitulina stejnegeri</i>) at Cape Erimo. The antibodies were observed in spotted seals (<i>P. largha</i>) in one out of six at Nemuro, in two out of three at Rebun Island, in one out of two at Bakkai, and in examined one at Soya. They were also found in respective examined one ribbon seal (<i>Histriophoca fasciata</i>) and one ringed seal (<i>Pusa hispida</i>) at Akkeshi. Harbor seals that tested positive were mostly yearlings (35%, 20/57) and juveniles (45%, 10/22), while only one pup (1/13) and one subadult (1/5) tested positive with low titers of the antibody; no antibodies were observed in adults (n=21). These results suggest that <i>Brucella</i> mainly infected harbor seals from the environment while weaning, and the bacteria were cleared during the early life stage of the seals. In spotted seals, however, antibodies were also detected in adults, suggesting that spotted seals could become infected with <i>Brucella</i> even as adults. It is also possible that a different, more persistent strain of <i>Brucella</i> may have infected the spotted seals.</p>
DOI: 10.1292/jvms.21-0532
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ゼニガタアザラシの写真及び個体情報デジタルデータベース:野生哺乳類の長期野外研究を支援する試み
藪田慎司,中田兼介,千嶋淳,藤井啓,石川慎也,刈屋達也,川島美生,小林万里,小林由美
哺乳類科学 2010年09月
記述言語:日本語 掲載種別:研究論文(学術雑誌)
哺乳類の生態や行動に関する野外調査には,しばしば複数の調査者の協力が必要となる.多くの哺乳類は寿命が長く行動範囲が広いからである.このようなチーム研究を維持するには,各メンバーのデータを集約保存し,メンバー全員で共有するシステムが必要である.本論文では,ゼニガタアザラシの個体識別調査を支援するために開発したシステムについて報告する.このシステムは2つのデータベースからなる.野外で撮影された写真を管理する写真データベースと,識別された個体についての情報や観察記録を管理する個体データベースである.システムはインターネット上に置かれ,メンバーは,どこからでも新しいデータを登録でき,また登録済みデータを研究のため利用することができる.近い将来,本システムは以下のような研究に貢献すると期待される.上陸場間の移動行動の研究,生活史パラメーター(齢別死亡率,出産間隔等)の推定,個体数の推定,社会構造の研究,等である.
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知床半島羅臼町沿岸の休息場におけるトドEumetopias jubayusの越冬状況-2006-07年および2007-08年冬季
石名坂豪・坂部(倉澤)皆子・佐藤晴子・石井英二・小林万里・田澤道広
知床博物館研究報告 2009年12月
記述言語:日本語 掲載種別:研究論文(大学,研究機関等紀要)
知床・羅臼側へ来遊してくるトドの状況をまとめたもの
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根室海峡における海鳥調査報告2007-2008年
福田佳弘・小林万里
知床博物館研究報告 2009年12月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:研究論文(大学,研究機関等紀要)
知床・羅臼沖で年間を通して観察された海鳥の年周期・生息数をまとめたもの
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知床半島羅臼町沿岸の休息場におけるトドEumetopias jubayusの越冬状況-2006-07年および2007-08年冬季
石名坂豪・坂部(倉澤)皆子・佐藤晴子・石井英二・小林万里・田澤道広
知床博物館研究報告 2009年03月
記述言語:日本語 掲載種別:研究論文(大学,研究機関等紀要)
知床・羅臼側へ来遊してくるトドの状況をまとめたもの。
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根室海峡における海鳥調査報告2007-2008年
福田佳弘・小林万里
知床博物館研究報告 2009年03月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:研究論文(大学,研究機関等紀要)
知床・羅臼沖で年間を通して観察された海鳥の年周期・生息数をまとめたもの。
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Ecology changes of seals by variable environment and future problems between Japan and Russia
小林 万里
Proceedings of Japan-Russia cooperation symposium on the conservation of the ecosystem in Okhotsk 2009年
記述言語:英語 掲載種別:研究論文(国際会議プロシーディングス)
露を行き来するアザラシ類の最近の変化を紹介し、そのために今後日露でやるべき課題を提案した。オホーツク生態系保全日露協力シンポジウムプロシーディングス。外務省・環境省共催
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Genetic variation of harbor seals Phoca vitulina and spotted seals Phoca largha in Hokkaido, baced on mitochondrial Cytochrome b sequences
Nakagawa E., Kobayashi M., Suzuki M., and Tsubota T
Zoological Science 2009年
担当区分:責任著者 記述言語:英語 掲載種別:研究論文(学術雑誌)
北海道内におけるゼニガタアザラシとゴマフアザラシの遺伝子によるグループ分けと行ったところ、ゼニガタアザラシは襟裳とそれ以東に、ゴマフアザラシは道内では分類できないことがわかった。
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Growth variation in skull morphology of Kuril harbor seals (Phoca vitulina stejnegeri) and spotted seals (Phoca largha) in Hokkaido, Japan
Nakagawa E., Kobayashi M., Suzuki M., and Tsubota T
Japanese Journal of Veterinary Research 2009年
担当区分:責任著者 記述言語:英語 掲載種別:研究論文(大学,研究機関等紀要)
ゼニガタアザラシとゴマフアザラシの成長段階による形態変化をまとめた。
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Seasonal Change in Number And Movement Pattern of Spotted Seals (Phoca largha) Migrating Around the Sea of JAPAN
Kobayashi, M., Kouno, Y., Ito, M., Fujimoto, Y., and K. Kato
PICES Sci. Rep. 2009年
担当区分:筆頭著者 記述言語:英語 掲載種別:研究論文(国際会議プロシーディングス)
日本海のゴマフアザラシの生態の変化についてまとめたもの。PICESの学会のプロシーディングス
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根室半島・納沙布岬におけるサケ定置網によるアザラシ類の2002-2003年混獲数調査~1982-1983年調査と比較して~
小林万里・石名坂豪・角本千治・若田部久・小林由美・清水秋子
哺乳類科学 47(2):207-214 日本哺乳類学会 2007年12月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:研究論文(学術雑誌)
北海道東部から襟裳岬に至るゼニガタアザラシの1970年以来の個体数減少と納沙布岬周辺で混獲され大量死亡する個体の関係を知るために,1982年と1983年に納沙布岬周辺のサケ定置網におけるアザラシ類の混獲数調査が行われた(以下,80年調査).80年調査からちょうど20年後,海洋環境の変化や北海道東部のゼニガタアザラシの個体数が増加傾向にある中,アザラシ類の混獲数や特性の変化を知るために,過去と同じ要領で納沙布岬周辺のサケ定置網におけるアザラシ類の混獲数調査を2002年と2003年に実施した(以下,00年調査).その結果,80年調査と比較して,00年調査の結果では,歯舞漁協管内の15ヶ所の定置網におけるアザラシ類の混獲数は,ほぼ同数(80年調査272頭,00年調査261頭)で,また,アザラシ類がもっとも多く混獲される定置網の位置や混獲されたアザラシ類の種構成[最多がゼニガタアザラシ(Phoca vitulina stejnegeri)で,次いで多いのがゴマフアザラシ(Phoca largha)]に違いは見られなかった.しかし,全アザラシ類の混獲数に占めるゼニガタアザラシおよびゴマフアザラシの割合(80年調査ではゼニガタアザラシおよびゴマフアザラシの割合はそれぞれ77.6%,20.6%,00年調査では91.2%,7.7%)には有意な差が見られた.また,ゼニガタアザラシの混獲時期は,80年調査では9月中旬と11月中旬に混獲数が多くなる2山型を示したのに対し,00年調査では,定置漁業の開始直後の9月上旬に混獲数が多く,定置漁業が終わるにつれ減少する傾向が見られた.千島列島全域におけるゼニガタアザラシとゴマフアザラシの分布の中心は,択捉島以南の,特に歯舞群島・色丹域に集中して分布していると考えられているため,今後の保全管理を考える上には,歯舞・色丹グループと道東グループとの関係が重要と考える.
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根室・納沙布岬の定置網で混獲されたアザラシは、20年前と何がどのように変わったか?
小林 万里
勇魚,47:14-21. 2007年12月
記述言語:日本語 掲載種別:研究論文(学術雑誌)
ゼニガタアザラシは北海道太平洋沿岸で周年観察される.戦後,毛皮や食肉の利用を目的として狩猟され,1970年以降,モユルリ島から襟裳岬までの沿岸のゼニガタアザラシの生息数は減少し続け,1980年代にはおよそ350頭にまで減少し,更に1983年には9つあった上陸場は7つに減少した(伊藤・宿野部,1986).この頃,環境省レッドデータブックで絶滅危惧IBに分類された.その後,代用品の普及により1990年以降は個体数を増やしていたが,1980年以降,主要な上陸場の数に増加は見られていない(齋藤・渡邊,2004).現在,北海道にはアザラシの上陸場となる場所は,特定の時期にだけ上陸がみられる上陸場も含めると14箇所存在しているが,全個体数の約70%が襟裳岬,厚岸・大黒島に集中している.
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海洋生態系の保全とそこに暮らすいきもの(海生哺乳類・海鳥類)
小林万里・笹森琴絵・福田佳弘
生物の科学遺伝,61(5):26-31. 2007年09月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:研究論文(学術雑誌)
2005年7月にユネスコの世界自然遺産に登録された知床には,海の高次捕食者である海生哺乳類や海鳥類が季節ごとに変化し,多様に生息している。これら海洋生態系の一員である海の高次捕食者をモニタリングすることは,単なる海生哺乳類や海鳥類の保全管理だけではなく海洋生態系の健全性の指標にもなり得る。そここでは,知床周辺海域におけるこれら動物相の分布やその特徴等をまとめ紹介し,指標とするための今後の課題について提言する。
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流氷期知床周辺海域における鯨類の出現状況を探る
笹森琴絵・小林万里
知床博物館研究報告 2007年03月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:研究論文(学術雑誌)
流氷期の鯨類についての調査報告
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オホーツク海における厳冬期(2月)のアザラシ類の流氷利用の特徴ー繁殖期(3-4月)と比較してー
小林万里・笹森琴絵・藤井啓・星野広志・双樹智道・窪田尊
知床博物館研究報告 2007年03月
担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:研究論文(学術雑誌)
アザラシ類のヘリセンサス
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Seroepidemiology of Toxoplasma gondii and Neospora caninum in seals around Hokkaido, Japan.
Fujii, Kakumoto, Kobayashi, Saito. Kariya, Watanabe, Xuan, Igarashi, and Suzuki.
Journal of Veterinary Medical Science, 69(4): 393-398. 2007年
記述言語:英語 掲載種別:研究論文(学術雑誌)
Seroepidemiology of Toxoplasma gondii and Neospora caninum in seals
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Serological survey of morbillivirus infection in Kuril harbor seals (Phoca vitulina stejnegeri) of Hokkaido Japan.
Fujii, Kakumoto, Saito, Kobayashi, M,, Kariya, Watanabe, Kai, Sakoda, Suzuki, and Kida
Journal of Veterinary Medical Science 2007年
記述言語:英語 掲載種別:研究論文(学術雑誌)
北海道のアザラシのモービルウイルスの抗体の保有状況を調べた論文