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小林 万里 (コバヤシ マリ) KOBAYASHI Mari 教授 |
学内職務経歴 【 表示 / 非表示 】
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東京農業大学 生物産業学部 アクアバイオ学科 講師
2006年04月 - 2010年03月
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東京農業大学 生物産業学部 アクアバイオ学科 准教授
2010年04月 - 2014年03月
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東京農業大学 生物産業学部 アクアバイオ学科 教授
2014年04月 - 2018年03月
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東京農業大学 生物産業学部 海洋水産学科 教授
2018年04月 - 現在
論文 【 表示 / 非表示 】
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ホエールウォッチング船の観察記録から見た北海道オホーツク海沿岸および根室海峡における鯨類の出現パターン
小林 駿, 前田 光彦, 大木 絵里香, 高野 延道, 生田 駿, 小林 万里
日本セトロジー研究 33 ( 0 ) 25 - 35 2023年11月
記述言語:日本語 出版者・発行元:日本セトロジー研究会
北海道のオホーツク海沿岸および根室海峡には一年を通して多様な鯨類が出現することが知られている.両海域では2006年からホエールウォッチング船が運航しており,鯨類の生態研究の重要なプラットフォームとなっている.本研究では,ホエールウォッチング船の観察記録をもとに,両海域の鯨類の季節的な出現パターンと経年変動を明らかにすることを目的とした.オホーツク海の網走沖と根室海峡の羅臼沖で運航するホエールウォッチング船の発見記録から,月ごとの出航日数,それぞれの種を発見した日数を集計した.発見が多かった種について発見率を求め,海域と鯨種ごとにその季節変動と経年変動を調べた.両海域とも,ミンククジラは春,イシイルカは夏,ツチクジラは秋に発見率が高くなった.カマイルカは7月に発見が多かったが,網走沖では9-10月にも発見があった.網走沖では羅臼沖と比較してミンククジラが観察される期間が長く,発見率も高かった.一方,羅臼沖では網走沖よりもイシイルカが観察される期間が長く,網走沖で発見が少ないシャチやマッコウクジラも高い確率で観察された.また近年,両海域ともミンククジラの発見率が低下しており,ナガスクジラの発見が増加している傾向がみられた.両種の個体数の変動に影響を及ぼしている要因は現在のところ不明だが,引き続きモニタリングを行い,両種の個体群動態の把握に努めることが重要である.
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ネズミイルカ(<i>Phocoena phocoena</i>)とイシイルカ(<i>Phocoenoides dalli</i>)の雌雄と成長段階における寛骨の形状比較
岡部 佑奈, 小林 万里, 新井 優一
哺乳類科学 63 ( 2 ) 167 - 178 2023年
記述言語:日本語 出版者・発行元:日本哺乳類学会
<p>鯨類は生息環境を水中へ移し適応したことにより,後肢と骨盤は退化した.そのため現在では寛骨と呼ばれる一対の遊離骨が存在する.ネズミイルカ科に属するネズミイルカ(<i>Phocoena phocoena</i>)とイシイルカ(<i>Phocoenoides dalli</i>)は同所的に生息し,単独もしくは少数で行動する一方,異なる繁殖生態を持つことが報告されている.本研究では,近縁種で同じ生息域や社会性を持ち,異なる繁殖生態をとる両種を対象に,繁殖生態が寛骨形態に及ぼす影響について考察し,繁殖様式との関連性を議論することとした.ネズミイルカ54個体,イシイルカ76個体の寛骨を使用し,実測値による線形回帰分析,セミランドマーク法による寛骨形状の正準判別分析を行った.線形回帰分析の結果,両種と雌雄において全ての計測部位で体長に対して相関を示し,オスでは全ての計測部位で種差が認められた.寛骨形状における正準判別分析の結果,両種において雌雄と成長段階で形状の差が見られた.ネズミイルカのオスの成熟個体は,オスの未成熟個体とメスと比較したとき,寛骨の中央部後方の幅がより広く,中央部がより厚いことが明らかとなった.一方,イシイルカのオスの成熟個体は,オスの未成熟個体およびメスと比べ,寛骨の尾側周辺の幅がより広く,中央部がより厚いことが明らかとなった.本研究にて,ネズミイルカはイシイルカよりも寛骨の長さや厚さがより大きく,成長段階における寛骨形状の変化は,両種のオスにおいて変化が顕著であった.これらの寛骨形状は,オス生殖器の成長に伴う坐骨海綿体筋の増加による変化と考えられ,繁殖生態の差異が寛骨の大きさや形状に反映していることが示唆された.</p>
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北海道北部およびオホーツク海沿岸におけるゴマフアザラシ(<i>Phoca largha</i>)の離乳直後の食性型の変化
高野 延道, 小林 万里
哺乳類科学 63 ( 2 ) 157 - 166 2023年
記述言語:日本語 出版者・発行元:日本哺乳類学会
<p>北海道沿岸に来遊する幼獣以降のゴマフアザラシ(<i>Phoca largha</i>)の食性については,主に水深の浅い沿岸域で魚類と頭足類を採餌する広食性であることが先行研究にて解明されてきた.しかし,離乳直後の個体については魚類餌生物に加えてオキアミ類(Euphausiidae spp.)を含む浮遊性小型甲殻類を餌生物として利用していることが明らかにされているにとどまる.そこで本研究では北海道沿岸における離乳直後の個体の食性変化を分析し,その様相と時期を具体的に把握することを目的とした.順序ロジスティック回帰分析の結果,オキアミ類のみを食性の中心としたオキアミ類専食型は3月,オキアミ類と魚類の両方を中心とした併用型は4月,魚類のみを中心とした魚類専食型は5月を中心に出現した.採餌経験と遊泳能力に乏しい離乳直後の個体が,海氷下で群れを形成するオキアミ類を重要な初期食物として積極的に利用していたものと考えられた.その後,海氷の消失に伴って魚類専食型に移行し,底層魚類を積極的に利用することが生存に有利な戦略であることが示唆された.</p>
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OHISHI Kazue, KOBAYASHI Mari, MARUYAMA Tadashi
Journal of Veterinary Medical Science 84 ( 4 ) 543 - 547 2022年
記述言語:英語 出版者・発行元:JAPANESE SOCIETY OF VETERINARY SCIENCE
<p>The enzyme-linked immunosorbent assay (ELISA) was applied to detect antibodies against <i>Brucella abortus</i> in serum samples from four seal species at nine coastal locations of Hokkaido, Japan. These antibodies were detected in 27% (32/118) of Western Pacific harbor seals (<i>Phoca vitulina stejnegeri</i>) at Cape Erimo. The antibodies were observed in spotted seals (<i>P. largha</i>) in one out of six at Nemuro, in two out of three at Rebun Island, in one out of two at Bakkai, and in examined one at Soya. They were also found in respective examined one ribbon seal (<i>Histriophoca fasciata</i>) and one ringed seal (<i>Pusa hispida</i>) at Akkeshi. Harbor seals that tested positive were mostly yearlings (35%, 20/57) and juveniles (45%, 10/22), while only one pup (1/13) and one subadult (1/5) tested positive with low titers of the antibody; no antibodies were observed in adults (n=21). These results suggest that <i>Brucella</i> mainly infected harbor seals from the environment while weaning, and the bacteria were cleared during the early life stage of the seals. In spotted seals, however, antibodies were also detected in adults, suggesting that spotted seals could become infected with <i>Brucella</i> even as adults. It is also possible that a different, more persistent strain of <i>Brucella</i> may have infected the spotted seals.</p>
DOI: 10.1292/jvms.21-0532
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ゼニガタアザラシの写真及び個体情報デジタルデータベース:野生哺乳類の長期野外研究を支援する試み
藪田慎司,中田兼介,千嶋淳,藤井啓,石川慎也,刈屋達也,川島美生,小林万里,小林由美
哺乳類科学 2010年09月
記述言語:日本語 掲載種別:研究論文(学術雑誌)
哺乳類の生態や行動に関する野外調査には,しばしば複数の調査者の協力が必要となる.多くの哺乳類は寿命が長く行動範囲が広いからである.このようなチーム研究を維持するには,各メンバーのデータを集約保存し,メンバー全員で共有するシステムが必要である.本論文では,ゼニガタアザラシの個体識別調査を支援するために開発したシステムについて報告する.このシステムは2つのデータベースからなる.野外で撮影された写真を管理する写真データベースと,識別された個体についての情報や観察記録を管理する個体データベースである.システムはインターネット上に置かれ,メンバーは,どこからでも新しいデータを登録でき,また登録済みデータを研究のため利用することができる.近い将来,本システムは以下のような研究に貢献すると期待される.上陸場間の移動行動の研究,生活史パラメーター(齢別死亡率,出産間隔等)の推定,個体数の推定,社会構造の研究,等である.
書籍等出版物 【 表示 / 非表示 】
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日本の鰭脚類 : 海に生きるアシカとアザラシ = Pinnipeds in Japan
服部 薫 , 米澤 隆弘 , 甲能 直樹, 内山 幸子 , 三谷 曜子, 小林 万里, 鈴木 一平, 水口 大輔 , 後藤 陽子, 清田 雅史, 羽山 伸一 , 山村 織生
東京大学出版会 2020年 ( ISBN:9784130602396 )
記述言語:日本語
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野生動物保護の事典
小林 万里、多数( 担当: 共著 , 範囲: 94-98)
朝倉書店 2010年02月
記述言語:日本語
鰭脚類・ラッコ生息地としての北海道の在り方についてまとめたもの
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北海道東部・千島列島②-北方四島はアザラシ類の宝庫~そこに忍び寄る危機~
小林 万里( 担当: 単著)
rctic Circle 北海道北方民族博物館友の会・季刊誌 2009年09月
記述言語:日本語
北方四島の自然生態系を紹介し、その中でも海の生態系の高次補食者であるアザラシ類に注目し、現況と課題をまとめたもの。
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The Wild Mammals of Japan
小林 万里、多数( 担当: 共著 , 範囲: 272-283)
SHOKADO 2009年
記述言語:英語
日本の全哺乳類について分布・生態などをまとめた百科事典(A4、544p)。
執筆担当個所:日本に来遊・生息するアザラシ類5種(pp272-283) -
世界遺産知床半島の海獣類~アザラシ類の実態~
小林 万里( 担当: 単著)
pp75-98.日本の哺乳類 第3巻水生哺乳類(加藤秀弘編者,大泰司紀之・三浦慎悟監修),東京大学出版会 2008年07月
記述言語:日本語
世界自然遺産に登録された知床半島
(1)知床世界自然遺産の特徴とその保全
(2)知床の生態系と生物多様性
日本におけるアザラシ類の位置づけと現況
(1)日本で確認されるアザラシ類とその分布
(2)日本におけるアザラシ類の現況
知床半島とアザラシ類
(1)アザラシと知床との関わり
(2)知床でのアザラシ類と人間との関わりの歴史
(3)ゴマフアザラシとクラカケアザラシの生態
(4)知床におけるアザラシ分布・食性・成長(過去の研究のレビューと最近の情報)
(5)ゴマフアザラシとクラカケアザラシにとっての流氷の役割
(6)夏の生息地としての近隣地域のゴマフアザラシの生息状況
(7)漁業とアザラシ類との関係
講演・口頭発表等 【 表示 / 非表示 】
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野付・風蓮湖におけるゴマフアザラシの季節変動 国際会議
中村 尚稔・小林 万里
日本哺乳類学会2010年大会 2010年09月
開催年月日: 2010年09月
記述言語:日本語 会議種別:口頭発表(一般)
北海道本土におけるゴマフアザラシの夏季の生息地は、野付・風蓮湖のみである。しかし、その野付・風蓮湖に夏季に生息するゴマフアザラシの生息数や季節変動のみならず、夏の行動圏、さらには、その北東に位置する北方四島や千島列島、さらにはサハリンからの南下個体との行き来などの関係は全く解明されていない。これらを最終的に解明するために、本研究では近年の夏季に野付・風蓮湖に生息するゴマフアザラシの季節変動を明らかにし、過去の個体数や変動パターンを比較し現況を把握した。
2008年および2009年の5月~10月に、週1回のペースで野付の個体数調査を行った。各年合計19回調査の結果、野付では2008年と2009年を比較すると、ほぼ同様の季節変動の特徴がみられ、夏季に観察個体数が最大になるピークがあり、その後秋口から減少し、再び冬に一過性の観察個体数の増加(聞き取りによる)が見られた。しかし、2008年より2009年の方が全ての特徴が早期に始まっている傾向が伺えた。このように2峰性が見られるのは、夏季の野付における生息個体が春から秋にこの場所を利用し、それらの個体が野付から退去すると、秋口から他の夏の生息地より南下してきた個体が、この野付を一時的に利用するためと考えられた。また、過去(青木 1992)には、近年とは異なり、秋に観察個体数の減少傾向は見られず、9月上旬からさらに個体数の増加が見られていた。
また、2009年の5月~10月に、週1回のペースで風蓮湖の個体数調査を行った。合計20回の調査の結果、風蓮湖内でアザラシ類の生息を確認出来なかった。そのため、風連湖内で操業している漁業者へアンケート調査を行い、風蓮湖の湖口周辺では、春・秋に数頭のアザラシを目撃するとの情報を得た。過去(青木 1992)には、春先には観察個体の確認は出来ず、初夏頃から秋口までに50頭ほど観察されていた。これらより、昔と比べ風蓮湖内に入って来る個体数は、現在減少していると考えられた。 -
礼文島に来遊するゴマフアザラシの個体数の季節変動および上陸場間の移動パターン 国際会議
渋谷未央・小林万里
日本哺乳類学会2010年大会 2010年09月
開催年月日: 2010年09月
記述言語:日本語 会議種別:口頭発表(一般)
氷上繁殖型のゴマフアザラシ (Phoca largha) は、流氷が来ない北海道の日本海側には繁殖活動に参加しない亜成獣個体が来遊し、礼文島のトド島のみに約数百頭が来遊していた。しかし、近年、成獣個体が日本海側の上陸場でも確認されるようになり、その分布域は南下・拡大し、来遊頭数も数千頭と加速度的に増加している。さらに、来遊時期の早期化、退去時期の遅延化がみられている。一方、以前から来遊していた礼文島ではゴマフアザラシが周年観察されるようになり、上陸場の数も増えている。さらに、トド島では新生児が確認され、陸上で繁殖している個体の存在が明らかになった (渋谷 2009) 。
本研究では、日本海側におけるゴマフアザラシの生態変化の先駆的な場所だと考えられる礼文島において、来遊頭数と利用している上陸場の関係と、上陸場間の移動パターンを明らかにすることを目的とした。そのために、礼文島本土に調査地点を4箇所、トド島に1箇所設け、2008年12月から約1年間、定期的に個体数調査を実施し、各上陸場の個体数の季節変動を明らかにした。さらに、学術捕獲調査も実施し、捕獲個体へのタグ・ワッペン装着による近隣の上陸場への移動の有無と、衛星発信機装着による捕獲個体の回遊経路の把握を試みた。その結果、礼文島内の調査地点ごとで個体数の季節変動に差異があることがわかり、礼文島に来遊するゴマフアザラシは季節ごとに移動して上陸場を変えていることが考えられた。一方、学術捕獲調査から、トド島で発信器を装着した個体は、ほぼトド島周辺に滞在し、浜中でタグ・ワッペンを装着した個体はその後、トド島で再捕獲された。また、抜海港で発信器を装着した個体がその後トド島周辺に移動したことが確認された (小林 未発表) 。以上を踏まえ、礼文島への来遊個体には、1. トド島周辺を主に利用する個体、2. トド島周辺と礼文島本土の上陸場を利用する個体、3. トド島と他の日本海側の上陸場を利用する個体の存在が明らかになった。 -
北海道近海のゴマフアザラシ(Phoca largha)の頭骨および犬歯の成長と形態 国際会議
青木大海・小林万里
日本哺乳類学会2010年大会 2010年09月
開催年月日: 2010年09月
記述言語:日本語 会議種別:口頭発表(一般)
ゴマフアザラシは、海洋の食物連鎖の高次捕食者であり、その生息個体数も多いことから生態系の重要な構成要素である。しかし、その回遊範囲が広域なために、生息状況が正確に把握できない。実際に、北海道の日本海側では、来遊個体数の激増・生息域の拡大・滞在期間の長期化などが起こっている。そのため、彼らの生息環境は大きく変化しており、個体数増加による餌資源や上陸場所の競争が起こっていると考えられる。餌環境の変化は、本種の頭骨や犬歯の成長に伴う形態・形状にも影響している可能性がある。
そこで、本研究では、近年北海道近海で採取し頭骨標本にした本種の歯を含む頭骨を用いて、それらの成長様式を把握することを目的とした。頭骨30ヶ所および犬歯8ヶ所の各部位をノギスを用いて計測を行った。それらの計測結果を用いて、まず、雌雄別に体長と頭蓋基底長および体長と犬歯長の関係を調べたところ、両者ともに雌雄差はなかった。そのため、雌雄を合わせて頭蓋基底長で成長段階別に分け、成長段階による頭蓋基底長および犬歯長の成長様式を調べたところ、頭蓋基底長では、すべての成長段階において正の関係ではあり、幼獣>>亜成獣≧成獣という関係が見られ、犬歯長では幼獣のみ正の関係で、亜成獣・成獣では犬歯長の成長はほぼないものと考えられた。さらに、すべての計測個所において、幼獣から亜成獣、成獣になるにつれ、雌のみ頭蓋で2ヶ所、犬歯では3ヶ所でサイズの減少がみられた。犬歯の各計測部位で雌雄間の分散分析を行った結果、亜成獣で有意差が多くみられた。亜成獣でみられた雌雄差は、雌は性成熟と同時に成長が止まるが、雄はわずかではあるが性成熟後も成長する傾向がみられた。本研究で頭蓋において雌雄間での差異が見られなかったことは、本種が一夫一妻性であるために性的二型がないためと考えられた。 -
ゴマフアザラシとネズミイルカの呼吸器の形態比較 国際会議
新井優一・小林万里
日本哺乳類学会2010年大会 2010年09月
開催年月日: 2010年09月
記述言語:日本語 会議種別:口頭発表(一般)
ゴマフアザラシ(Phoca largha)とネズミイルカ(Phocoena phocoena)は、利用する水深などの生息環境や体の大きさなどが類似しているが、前者は生活の一部にて陸上を利用し、後者は完全に水中にて生活する。これら両者の一部における生息環境の違いや潜水行動の違いにより、呼吸器とその周辺部位においてどのような違いが生じているのかを知ることを最終目的とした。
そこで本研究では、水中における生活の中で重要な生理的活動に最も関連が強い呼吸器に着目して、呼吸器の各部位ごとの形態の比較を行い、それらの違いの意味を検証した。使用する個体数は、両者の体の大きさや混獲地域を可能な限り同じにした各2個体とし,解剖による特定の臓器,骨格の測定を行った。また,各臓器において重さと体積を測定した。
気管の形態では,ゴマフアザラシの気管は長く,硬かった。ネズミイルカの気管は短く,柔らかかった。また,ゴマフアザラシの気管はネズミイルカよりも弾力性が高かった。このことは,ゴマフアザラシが陸上でよく首を動かすためと考えられた。ネズミイルカの気管の形態は,海上に浮上して行うわずかな呼吸時間の気道抵抗を軽減しているためと考えられた。肺の形態は,ゴマフアザラシの肺は丸みを帯びていた。一方,ネズミイルカの肺は端に行くにつれて角になっており,全体的に細長かった。上記のことより,ゴマフアザラシでは円筒形の内部構造に合わせ隙間を埋めるように丸みを帯びていると考えられた。ネズミイルカは,頭頂部の鼻孔を水面に出すことで瞬時に呼吸を行うため,短い呼吸時間の中でできるだけ多い量の空気を取り込んで空気が巡りやすいように細長くなったのではないかと考えられた。骨の形態では,肋硬骨と肋軟骨の関節面にて,ゴマフアザラシでは一体化しており,一方ネズミイルカは柔らかく,前者よりも撓みやすくなっていた。これは,呼吸速度によって肋骨の撓み方に違いがあるためと考えられた。 -
北海道東部厚岸湾内の小定置網周辺におけるゼニガタアザラシの行動 国際会議
小林由美・小林万里・渡邊有希子・桜井泰憲
日本哺乳類学会2010年大会 2010年09月
開催年月日: 2010年09月
記述言語:日本語 会議種別:口頭発表(一般)
北海道東部厚岸湾内では,3-5月の刺し網・小定置網漁を中心としてゼニガタアザラシによる漁獲物の食害(漁業被害)が問題になっている.そこで本研究では,被害軽減策を検討するために,小定置網周辺においてバイオテレメトリー法によるゼニガタアザラシの行動追跡を行い,個体の出現記録と定置網の漁獲量や操業の有無,及び気象海象などの外部環境要因との関係を明らかにすることを目的とした.
2009年4月に,生体捕獲したゼニガタアザラシの成獣2頭について,超音波発信機(VEMCO社製,Canada,V16P-5H,平均発信間隔20秒)を接着剤(Loctite401)を用いて装着し,放獣した.設置型受信機(VEMCO社製,Canada,VR2W,受信範囲半径約300m)1個を小定置網に設置した.
No.1(メス)では,4月6日から4月22日までの17日間に1,368回,No.2(オス)では,4月6日から5月8日までの33日間に871回受信があった.出現確率(出現日/調査期間)は,調査期間全体ではNo.1が16.7%,No.2が41.5%,4月ではそれぞれ26.9%,52.0%,そして5月では0.0%,25.0%であり,両個体ともに定置網内で採食するために繰り返して定置網周辺に出現していると判断された.成獣メスは,出産・育児期になり上陸場周辺で過ごす時間が長くなったために,4月下旬から網場周辺に出現しなかったと推察された.両個体とも,潮の干満の差が大きい日の高潮時に漁場周辺に出現することが多かった.本種は一般的に,日中の干潮時に上陸場に上陸して休息し,潮が満ちて上陸場スペースが小さくなると降海して採食するため,これに一致した日周行動をとっていると推察された.毎日のアザラシの出現の有無及び滞在時間合計は,同定置網の総漁獲量とは関係がなかった.両個体ともに,調査期間を通して操業時間帯である午前4-7時は網場周辺に全く出現していなかったことから,漁船を避けていると推察された.なお,本研究は,環境省(H19-21年度)ゼニガタアザラシ共存構築モデル事業による.